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□おもいでの場所で
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お昼時、ご飯を食べていると

私を見つめていたフレッドが、声を上げた。




「なあ。」


「なあに?」




「WWWは、今はどうなってるんだ…?」



「…今は、ジョージをロンが手伝っているみたい。」



「そうか。」



寂しそうな顔を見せる彼に、




「行ってみる?」



なんて明るく言えば、嬉しそうな顔。





「ああ。見てみたい」



「じゃあ、これ食べたら用意するね。」



「俺の姫は、相変わらず食いしん坊だな」



「……」




ははは、と笑いだすフレッドを睨むと笑うのをやめた。






―――――――――






「フレッドは他の人には見えないの?」


「ああ。そうみたいだな」




まるで水のなかを泳ぐように


忙しなく行き交う人の間を


ふざけて飛んで見せるフレッド。




「…フレッド!やめなって」




つい、大声を出せば周りの人々が、


私を変なものを見る目で通りすがる。





「どうやら本当に見えてないみたいだな」


「…あんたのせいで恥かいた」




小さく話せば、フレッドが豪快に笑いだす。




「さっきのは傑作だったぜ!」


「…もう、はやくいくよ!」




笑うフレッドを置き去りにして早足で歩いていると




「ごめんって!」



置いてきたはずのフレッドが

謝りながら私の周りをふよふよ、と浮いていて。





「ちょっと!やめてってば!!」




勢いよく振り向けば、そこにはフレッドではなく

彼の相棒、ジョージがいた。




「…ハナ、僕、何かしたかな」



「あ、ジョージ、えっと…」




奴は、わたわたと慌てる私を見て

ジョージの斜め上でニヤニヤしている。




「…ハナ、少し、元気になったんだな」


「え、ああ…うん!」




私の顔を覗き込んだジョージが、安心したように笑う。



「3年、ぶりだよな。」


「…ええ。 ロンとは、会っていたけれど」




優しい顔で微笑むその顔に、


あいつが重なるから、また泣いてしまうから


そんな理由で、ジョージを避けてきた。




そんなことを、知るわけがないフレッドが、

上で首を傾げる。





「ハナ、アンジェリーナもいるから入っていってよ」


「あ、うん!」



カラン、と音をたてて開けられたドアの向こうには


お客さんが沢山いて、


それを見たフレッドが目を輝かせた。




「アンジェリーナは2階だ。
ほら、上がって。僕は、ロンと店番さ」

「うん、ありがとう。」




ちらり、とフレッドの方を見れば、



「俺、下にいるから」




手を振って、お客さんの間をすり抜けながら

イタズラグッズを物色し始めた。






「アンジェリーナ。」



2階に上がってドアをノックすれば、

ドアが開いて、見えたのは懐かしい顔。




「ハナ!!
…もう、大丈夫、なの?」


「大丈夫ではないけど…ちょっとね、」


「そっか、良かったわ。
みんな…ずっと、心配してた」


「ごめんね。

そうそう、ロンから聞いたの。
結婚おめでとう。」




手をとって微笑めば、



「ありがとう、」


とアンジェリーナが照れながらも嬉しそうな顔をした。



それから、他愛ない話しで盛り上がり、

気づけば暗くなり始めていた。



「アンジェリーナ、ごめんね!
私、もう帰らなきゃ」


「そう。
じゃあ、今度は私が行くよ」


「ん、ありがとう!」




一緒に下に降りれば、

店閉めの準備をするロンとジョージがいて

その近くでは、フレッドが浮いていて



私の姿が見えた瞬間



「おかえり!ハナ」



なんて、嬉しそうにする。


大分待たせてしまったらしい彼に、ニコリと微笑めば




「…はやく帰ろう」



そんなセリフと共に、私にもたれ掛かる真似。




「ジョージ、ロン…アンジェリーナも。

色々、ありがとう。 また、来るね!」




こちらこそ、と笑って手を振る3人を背に

フレッドとWWWを出れば


少し、雪が降っていて。







「フレッド、」


なんだか、切なくなってそっと手を差し出せば

彼も私の手に、自分の手を重ねた。



実際には、繋ぐフリだけど…


いまの私には、それで充分。




お も い で の 場 所 で


(( 彼が落ち込んでいるのは、何故? ))



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