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□いるはずのない、彼
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フレッドが亡くなってから



もう4年も経とうとしている。





少しずつ、立ち直っていく周りを他所に



私はまだ、彼を、彼の面影を、ぬくもりを、


そのすべてを、忘れられないでいる。







「フレッド…あのね、


ジョージと、アンジェリーナが結婚したのよ。」




冷たい墓石に手を置いて、話しかける。



もちろん、彼からの返事なんてないけれど。







「フレッド…会いたいよ…


私、あなたがいないと…、」






涙で滲む視界に、黒い影がうつる。




それと同時に、愛しい人の懐かしい声。





「あれ? 俺、」




「……フレッド!」




近づいて、抱き締めようとするけれど


彼をすり抜けるだけで。





「…ハナ、その、久しぶりだな」



「っ、…っ、」




涙が邪魔をして、声を出せずにいる私を見て





「忘れた、とは言わせないぜ?」



なんて、彼がふざけて笑う。






「忘れるなんてっ、…そんな、む、りっ」



溢れる涙をそのままに、彼を見上げれば



困ったように笑った。





「鼻水なんて垂らして…

良い大人がみっともないぜ」



「っ、垂らしてない!」



「わかったわかった、

ほら、外は寒いから家に帰れよ。」



にこり、彼が4年前と変わらぬ笑顔を浮かべる。




「あの、フレッド。


どうして…戻ってきたの?」





私の問いかけに、彼は少し考えた後、


真剣な顔で答えだす。





「…そうだな。


誰かさんに、呼ばれた気がしてな。


会いたいって願ったら、


目の前にハナがいたんだ」





「そっ、か…。」



再度溢れだす涙を拭って、家までの道を歩き出した。




い る は ず の な い 、 彼


(( だけど私には、はっきりと見える。 ))



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