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□きみが好き
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物心ついた時からずっと一緒にいた、
幼馴染のセドリックが好きだった。


これからもずっと彼の傍にいるんだろう、そう思っていた。




でも、彼には他に好きな人がいたらしい。

昨日、腕を組んで歩いているのを見てしまった。




夜中の談話室でぼーっとストーブを眺めていると、最近よく聞く声が聞こえる。




「…ハナ? 何してんだ?」



「んー、何もしてないよ」



「しりとりでもするか?」



「……そんな気分じゃない」




「へぇ、珍しいこともあるんだな」



静かに隣のイスに腰を下ろしたフレッドが私の頬を軽く摘む。



「フレッド痛い。それに今失礼な事言ったわね」



「ん? だっていつもは乗ってくるだろ」




「…人がしりとり好きみたいに言わないで」



「じゃ、夜の散歩でも行く?」



「……いいけど」



私の文句をスルーして笑顔で手を差し出すフレッド。



「はい、もう俺から離れるの禁止」




「…え?」




意味のわからない彼の言葉に聞き返すも


そのままスルーされ、早足に歩き出す。





「フレッド、もう少しゆっくり歩いてよ」





「ハナ、お前歩くの遅いんだぜ
誰かに見つかったらどうするんだ?」





「…悪かったわね、遅くて」




そんな言い合いをしていると、
気づけば禁じられた森についていた。




「ま、座れよ」



スっと下に自分のローブを敷いてくれる優しいフレッド。


こういう所も、人気の1つなんだろうなんてふと考える。




「ん…ありがと」




隣に腰掛けると、月を見上げる彼が小さく呟いた。




「……俺に、すれば?」




「え…?」





どういう意味、言いかける前にフレッドが恥ずかしそうに、後ろ髪をぐしゃぐしゃに撫でながら私を見た。




「ハナ、俺はお前が好きだ」




「…っ…うそ、」




「バーカ…嘘な訳ないだろ
返事は、ちゃんと考えてから聞かせろよ」





そのまま月を見上げる彼の頬が紅く染まるのを、月明かりが照らしていた。





き み が 好 き



(まだ、言わないつもりだったのに…)


(こんなのずるい、意識しない訳ないじゃない)




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