Short

□彼は、知らない
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春の昼下がり。


ぽかぽかと暖かい日差しの下

ジョージの隣で、お気に入りの本を読む。






「ハナ…」



「ん?」



「いや…」





顔を下げると、優しい声に再度呼ばれる。






「あのさ、」



「なあに、ジョージ?」



「…… いや、何でもないよ」




今日のジョージは少し変だ。


何かを言いかけては、言葉を濁す。

朝からずっと、これの繰り返しなのだ。




その様子に違和感を覚えた私は、読んでいた本を静かに閉じる。





「えっと…ジョージ、何かあったの?」



「……いや、」



目を伏せるジョージの頬をそっと包み込む。



「…ジョージ?
何かあったのなら隠さないで?」



そう言えば、観念したように視線を合わせる。



「フレッドがさ…キミを…」


「…私を?」



口ごもるジョージにその先を促すと、静かに話し出す。



「…ハナのこと、気になるって…」


落ち込む彼に思わず笑ってしまうと、不機嫌そうなお返事。


「…ちょっと。なんで笑うんだ」


「だってジョージ、可愛いんだもの」


「…可愛い?」


「ええ。嫉妬してくれたのよね?」


「…しないわけ、ないだろ」


顔を背けて小さく呟いた彼に我慢できず
その胸に、飛び込む。


「わっ…!」


「…心配しなくても私がときめくのも、
惹かれるのも…ジョージだけだよ」



そっと顔を上げると、嬉しそうにはにかむジョージの顔が目に映る。



「僕も…ハナ意外に興味なんてない」


「それは嬉しい」



ニコリ、笑って見せれば彼もまた優しく笑う。



「…ジョージ」


「ん?」


「…好きよ」


「僕も…好きだよ、ハナ」


そっと落とされたキスに目を閉じる。



「ハナ…誰にも、渡さないから…」


「ん、ジョージ…私の台詞よ」



クスリ、楽しそうに笑う彼につられて笑う
穏やかな時間が、二人を包んだ。



 


彼 は 、 知 ら な い 。

(( すべて彼女によって、仕組まれたことだと ))



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