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□ひたすらに
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キリ番301、ナナ様からのリクエスト。

**************






「…好きですっ」

「…ごめんね、気持ちは嬉しいよ」





好きな人に、呆気なくフラれた私は

誰もいないふくろう小屋で、夕陽を見下ろす。



「……っ、…」


ポロリ、涙が流れた時、勢いよく

ふくろう小屋の扉が開いた。



「やっぱり、ここにいた…」

「…セドリック、」


走ってきたらしく、少し汗をかいている彼は
同じ寮の友人、セドリック・ディゴリーだ。



彼は呼吸を落ち着けると、私の前に立ち
強く、ただ強く私を抱き締めた。



「何、苦しい…セド」

「良いから…泣きたい時は、泣くのが一番良い」


私の言葉を遮って、彼が私の頭を撫でる。


「…っ……、」

それと同時に流れる涙は、暫く止まらなかった。




―――――



涙も引いて大分落ち着いた頃、セドリックが口を開く。



「ハナ…」

「ん、何?」

「…忘れなよ」

「…そのうち、ね」


…彼の言う通り、
簡単に忘れられるならどんなに楽か。

曖昧に微笑んだ私を見た彼が真剣な顔をする。



「簡単、だと思うけど。」

「…え?」

「だってキミは…これから僕の傍で、
僕だけを見ていれば良いんだから」

「セド…リック、」

「ハナ。
キミはもっと、周りを見た方がいい」


そう呟いた彼の頬が、
月明かりに照らされて赤く染まっていた。


いつの間にか彼の手は背中へと回されていて

その手に力が入った刹那、彼の胸板に引き寄せられた。


" 意外と、男っぽいんだ "
なんて考えながら、目を閉じた。



ひたすらに

(( キミを想ってる奴がここにいるって…
いい加減、気付いてくれ。))


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