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□さよならの後に
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大好きな子がいた。
少し、甘えた声で「フレッド、」
って呼ばれるのが好きだった。
優しく笑う笑顔に、何度も癒された。
…それなのに、目移りしてしまった。
大好きなはずのハナよりも、彼女の友人の
アンジェリーナを目で追うことが多くなった。
でも、別れようなんて思ったことは、一度もなかった。
だから、
「フレッド…バイバイしよっか、」
泣きそうな顔をして、
無理に微笑んだハナに、本当に驚いた。
泣かないように、と
唇を噛み締めていた彼女に、胸が傷んだ。
だけど…バカな俺は、あっさりと彼女を手離した。
ハナが、俺のなかで
どんなに大きな存在だったかなんて
知りもしないで……。
「…………」
寒い右手
見通しのよくなった右隣に、ため息をつく。
俺を呼ぶ 優しい声、休日のデート
可愛い笑顔で、走って駆けてきて
目が合えば、手を振ってくれて
その全てが無いだけで、
まるで心に穴が開いている様で。
さ よ な ら の 後 に
( 気づかなかった。
俺の大半が、ハナで埋まっていたこと。
知らなかった。
ハナがいたから、今まで笑っていられたこと )
(( 今更気づいたって…もう、遅い ))
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