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□月が綺麗ですね。
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最近、僕が想いを寄せる相手、


ハナの様子が変だ。





夜、談話室の窓から外を見上げて




「ジョージ、月が綺麗だよ」



「ねぇ 見て… 星が、綺麗。」





なんて台詞を言うのが、最近ずっと続いている。





「なぁ、フレッド。 何の意味があるんだ?」




事の経緯を話し、相談を持ちかければ


相棒が盛大に笑いだす。




「はは、あいつお前にそんなこと言うのか!」



「?何のことだよ」




意味がわからない僕を見て、


相棒は楽しそうに言ってのける。





「月が綺麗とか、星が綺麗ってのはだなぁ


日本では、何かの意味があるらしいぞ」




「何の意味だ?」




「それは…自分で調べてくれよ、相棒」



ケラケラと笑うフレッドが、談話室へ向かう。







「あ、フレッドにジョージ!」




「お、ジョージ。 噂の姫の登場だ」




「噂…?」




キョトン、と目を点にして僕らを見つめるハナに



「なんでもないよ」



と曖昧に笑って見せて一緒に談話室へと歩きだす。





「ジョージ、あのね!」



ニコニコと語り出すハナに頷いていると


フレッドが振り返ってニヤニヤしながら僕らを見つめる。





「フレッド、何だよその顔」




「いやぁ。なーんもないぜ?


俺はアンジェリーナの所に行くから


二人は図書室にでも行ったらどうだ?」



「何で図書室なの?」




ハナが不思議そうに僕らを交互に見る。




「ジョージが調べものがあるらしいぜ」




「ふぅん?何を調べるの?」





「何って、最近キミがよく口にする


" 月が綺麗" とか、 " 星が綺麗 " ってやつの意味だよ」





「……っ!!」


「………あーあ。」




相棒が頭を抱え、


ハナは 目を見開き

すぐに走って談話室へ行ってしまった。






「ジョージ…お前なぁ、」




「え、何で逃げたんだ?」




ハナが何故 逃げたのか、本気でわからない僕を見て


フレッドがため息をついた。




「相棒、とりあえず図書室に行って調べてこいよ」


「ああ。」




短く返事を返して、図書室へ歩きだす。





―――――――





「にほん…日本語…これか。」




ようやく見つけた日本語の英訳本を


ペラペラとめくっていく。




「月…これか…?」




"" 月が綺麗だね→ あなたが好きです

星が綺麗だね → あなたはこの想いを知らないでしょう ""




「……………えっ!!」




その意味を理解すると共に


僕は本をバタン、と音をたてて閉じた。







マダムが僕を睨むのも気にも止めず




夢中でハナの元へ駆け出す。






「…っ、ハナ!!」



「じ、ジョージ」




暖炉の前で縮こまっているハナを、


抱き締め、此方を向かせる。







「ハナ…僕も、月が綺麗だと思うんだ。」





「っ、ジョージ…!」






首もとに抱き付くハナからほのかに香る


シャンプーの香りに心地よくなっていると




「ジョージ、やっと気づいてくれた。」




なんて少し拗ね気味の彼女が口を開く。






「遅くなってごめん。


ハナの事…ずっと、好きなんだ」





その言葉とともに 僕は、


愛しい彼女にそっと口付けた。






月 が 綺 麗 で す ね 。


(( その真意は、I Love You. ))


( 月が綺麗とか、そんな遠回しな言い方
僕には全然わからなかった )

( それが、狙いでもあったのよ。 )




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