希望の光少女
□第一章
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――約3年後、4月10日月曜日
蘭と友達になってから約3年、先週の金曜日に帝丹小学校の入学式が行われた。
私と新一、新二に蘭に園子は全員同じクラス。
苗字の順番で席が並んでいたから、蘭以外の3人はちょっと離れていた。
蘭は運命の悪戯か通路を挟んでうちの左隣で、授業中飽きることはなさそうだ。
蘭はうちが通路を挟んでの隣の席であることに喜び、入学式の日の帰りはかなり騒いでいた。
久々にそれぞれの両親が勢揃いし、大人のテンションも高かった。
特に優希子さんはやばかったなぁ……。
そして入学式の日から3日が経ち、現在1-2の教室で自己紹介をしている。
小学生の自己紹介は元気が良くて、うちは精神年齢のことから場外れじゃないかと思う始末。
はっきり顔は見えないけどこの状況に新一は始めどこか顔が引きつっており、自己紹介が終わると机に顔をうつぶせた。
やっぱりこの状況がきついらしい。
餓鬼のクセにませてるなと思ううちは可笑しくない。
……っと、そうこう考えてるうちに自己紹介が蘭の番に回った。
蘭は席を立って言葉を発しようと口を開くけど、上手く言葉が出ないようだ。
「蘭、リラックスリラックス。うちが付いてるから(コソッ」
「(コクン」
うちが蘭にコソッと耳打ちすると蘭はそれに小さく頷き、深呼吸をする。
そして前を見て、ちゃんと自己紹介を始めた。
「毛利蘭です!皆と仲良くなりたいです!よろしくお願いします!」
そう言って蘭は自分の席に座り、うちも含めクラスの皆が拍手。
この自己紹介を好意的に捉えるか、悪意や敵意といった感情で捉えるかは人それぞれ。
まあ、純粋な心の持ち主であろう6歳児達には好意的だろうね。
保育園であったいじめは、今のところ起こることはないでしょう。
ガタッ
あ、次の子か。
考え事しているうちに次のこの自己紹介が始まろうとしていた。
「結城……、結城明日奈です。皆さん、よろしくお願いします」
「!?」
うちは蘭の次に自己紹介を始めた女の子の方を慌てて振り向いた。
その女の子は茶髪にお嬢様結びが特徴で、ちょっとだけの丸顔。
彼女から感じられる雰囲気は、うちのかつての従妹で親友の『結城明日奈』そのもの。
同姓同名、それだけとは思えない……。
まさか、彼女は……。
「………」
この時、うちは自分の世界に入り込んでいたせいで新一から向いて来る視線に気付かなかった。
――放課後
授業が本格的に始まるのは3日後で、それまで入学生は給食がない。
なので4時間授業となり、授業が始まるまでは係活動や給食当番など学校生活で必要なことを決める。
それも今日の分は終わり、4時間を学校で過ごし終わった。
そして新一たちと帰ろうとしていたのだが、。
「………鈴!!」
ピタッ
教室の扉に背を向け、ランドセルを背負い歩き出そうとしていたところにうちにかかった声。
その声の主はうちが今一番気になっている人の声で、かつて一番大切だった親友と同じ声。
うちはその声と出た言葉に足を止め、確信を持った。
うちのことをそうやって、愛称で呼ぶ同年代の子は新一たち以外、この世界でうちは知らない。
唯一いたとするならば、うち同様転生したと考えられるうちの大事な仲間――。
ゆっくり声がした方を振り向き、うちは彼女にあの時と同じ言葉を掛ける。
「『泣かないで……、明日奈』」
「っ!」
彼女――、明日奈はあの日のように泣いてはいなかったが、明らかに泣いていると思わせる声でうちに声を掛けていた。
だからうちは、彼女を安心させたくてあの時と全く同じ言葉を同じ微笑で返した。
それに明日奈は顔を顰め、手で顔を隠した。
静かなしゃっくりがうちら以外いない教室に響き、それにうちの心は重くなった。
「……皆、ごめん。先に帰ってて」
「……わぁった。帰るぞ」
新一たちの方を向いて言った言葉に、彼だけが答えた。
うちはそれに小さく「ありがとう」と言い、4人に背を向けた。
4人の足音はどんどん遠ざかっていき、とうとう小さなしゃっくり音だけが聞こえる程になった。
それまで何秒、何分かかったかはわからない。
でもうちには、何時間も掛かったように感じた。
コツン
コツン
コツン
うちは小さな、でもしっかりした足音を立て明日奈に近づく。
そして彼女の名前を再度呼び、静かに抱きしめた。
「明日奈……」
「っ………。鈴…!」
あれから明日奈は、二人の初めての子供が消えてしまった時のように声を上げて思いっきり泣いた。
それをにうちは更に心が重くなったが、今そのことを口にすることはできなかった。
だって、今彼女に「うちが辛くなる」なんて言えば明日奈は無理にでも涙を引っ込めるだろうから。
こんな時は、我慢せず泣いて欲しいうちにとってはそんなことして欲しくない。
それからかれこれ5分近く泣いた明日奈は、うちの胸から顔を上げ笑った。
その微笑みでうちはスーッと心が軽くなり、満面の笑みを浮かべて答えた。
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