希望の光少女

□序章
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人々は、自分が住んでいる世界を3次元と呼び、アニメや小説など架空の世界を2次元と呼ぶ。

だがこの地球、宇宙を含む全世界は無数に存在することを知らない。

それは、『ソードアート・オンライン』という世界で生きていた少女もそうだった。


その少女は『英雄の右腕』と称され、デスゲームからプレイヤーを解放した立役者の一人。

仮想世界を中心に巻き起こる事件を英雄と共に解決していき、後にその少女仮想世界において『希望の光』となった。

この少女がいれば仮想世界は安全だ、そういう意味を込めて。


だがその少女も普通の人間、寿命がある。

少女は少女ではなくなり、動けないからだとなったのだ。

そして当時の仲間数名に見送られ、先に逝った仲間を追おうとしていた。










「鈴……」

「泣かないで……、明日奈」

「でも……!」


2032年5月4日、埼玉県所沢総合病院のとある一室に、一人の女性がベッドに横たわっていた。

そして、ナースや医師を除いて5人の女性と1人の男性が集まっていた。


黒髪で眼鏡が特徴である一人の女性は、下を向き目に涙をうっすら浮かべ、両の拳を強く握っていた。

黒にほど近いような濃い茶髪に両前髪をピンで留めている一人の女性は、涙を我慢し横たわっている女性の右手を握っていた。

茶髪でツインテールが特徴な一人の小柄な女性は、女性の右手を握っている手の上に自分の手を重ね、必死に泣かないようしていた。

黒髪で自身の右側の髪をピンで留めている一人の女性は、自身の拳で涙を拭っては声を上げないよう我慢していた。

薄い茶髪でお嬢様結びが特徴である一人の女性は、女性の左手を握っては涙をこらえ必死に笑顔を浮かべようとしていた。

黒髪で中性的な容姿をしている一人の男性は、そんな女性の隣に座り右肩を抱いていた。


「うちは……、先にクラインと…エギルの元に、逝くね……。皆は……、ゆっくり来るんだよ……?流行り病……何かに、掛からないで……」

「ぅ………」

「シリカ……」


横たわっている女性の言葉にツインテールの女性はとうとう涙を零してしまい、隣にいる濃い茶髪の女性が心配そうな瞳で彼女を見る。

横たわっている女性も、必死に右手を動かそうとするがびくともしない。


(はは……。もう……、動かないや……。ユウキも…、こんな感じ……だったのかな……?)


横たわっている女性の瞼は、どんどん閉じられかけていた。

それに気付いたお嬢様結びの女性が、必死に彼女に呼びかける。


「鈴……!」

「……ふふ…。貴女に……、涙は……似合わない」


その言葉をかけられた女性は目を見開き、笑顔を浮かべ指先で涙を拭きとる。

それに彼女はうっすら笑みを浮かべ、全員に最期の言葉を掛けるのだった。


「詩乃……。貴女は……、自身のトラウマを…自分の力で解決…できた……、強い…子、だよ……。だから……その…強さを、輝きに変えて……。貴女なら…、絶対に…大丈夫よ」

「……ええ…、本当にありがとうね…」


「里香……。SAO…時代……、アスナのことを…うちの代わりに、気に…かけてくれて……、ありがとう……。うちにとって……、貴女は……大事な……親友、よ……」

「そんなの、こっちのセリフよ……!馬鹿鈴!」


「珪子……。貴女は…うちにとって……、妹のような…存在だった、わ……。だから……お姉ちゃん、のように……慕ってくれるのが…、嬉しかった。……ありがとう」

「……こちらこそ、だよ。お姉ちゃん」


「直葉……。アスナ救出の際は……、本当に…ありがとう……。あの時から…貴方は……、うちらの……大事な仲間よ……。どうか…その剣で……、皆を…助けてあげて……」

「……勿論です。鈴さんの代わりに、しっかり守りますから……」


「明日奈……」

「…なあに……、鈴」

「貴方が従妹で……、本当に良かった……。貴女がいたから……、毎日キラキラしていた……。大好きだよ……。和人と…これからも……幸せでいななきゃ……、許さないから……」

「うん…うん……!」


「和人……」

「………」

「貴方とのコンビ……、最高だった……。『右腕』って呼ばれるの……、中々良かった……。アスナには…悪いと思ってた、けど……楽しかった……。明日奈を……よろしくね」

「……わかってる」


この時既に、彼女力尽きかけていた。

瞼がこれ以上ないほどに置く、目を開けていられなかった。

それでも彼女は最後の力を振り絞り、正真正銘最期の言葉を遺す。

先に逝った二人の仲間と、両親と合流する前に。


「皆……、大好き……」


最期に笑顔を浮かべそう言った彼女は、瞼を閉じていった。

それと同時に、ベッド付近にある機械からピーっという残酷な音が無慈悲に鳴った。

ベッド周囲にいる仲間たちは目を見開いたり、口に手を当てたり、涙を流したりと様々な反応を取った。

だが全員、悲しみが心に溢れかえっていた。

それほど、たった今この場から消え去った灯の持ち主が大事で、大好きであったのだ。



(……ありがとう、バイバイ…)





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