basara
□◇1.歪んだ愛情◇
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真夜中のシカゴ、しかも雪が降り積もり真っ只中の冬にも関わらずカツカツと歩くヒールの音が響いた。
いつものように真っピンクなヒールを見た男達はすぐに道を開ける。
「チーフ、こんな夜更けにすみませんね」白髪頭の男がいそいそと女の元へと向かってくる。
「お気遣いありがとう、プロベンザ警部補。わざわざ声を掛けてくれるということは何かやらかしたのね」
「実はまだフリンの奴が来てないんですけど、まぁ気にしないでください」
「そう言われると益々気になるわよ」
サングラスを取りながらプロベンザを睨む女性ブレンダ・ジョーンズは自慢のブロンドヘアーを見せつけるように耳に掛けた。
「おや、ロス市警の方々が何のご用ですかね?」
シカゴの警察官達が群がる中、プロベンザが上手いこと説明している間ブレンダは横たわる死体を見つめた。
大寒波が襲うシカゴの真夜中で横たわるこの死体は薄い襦袢1枚でしかも上半身は強引に破られた跡があった。
生気を感じられない瞳は微かに開かれていた。そして細い首筋には絞められた跡が青紫に残っており、ブレンダは目を細める。
そして体の彼方此方に残る痣の跡を辿っていくと、強引に開かれた太腿に目が入り胸が痛んだ。
「被害者は毛利元就、20歳です。こんばんはチーフ」
「タオ警部補、何故彼の周りにポラロイド写真が散らばっているのかしら」
息絶えている青年の周りにはばら撒かれたように無数の写真が散らばっており、ブレンダは1枚拾い上げる。
「どうやら写真に撮られた時はまだ生きていたみたいね」
写真から元就の表情が読み取れるとタオは頷いた。
「死因は背後からナイフで刺されたことによる失血死かと思われますが、恐らくナイフは肺にまで達していたかと」
「肺に穴が開いたとなればもってどれ位かしら」
「恐らく10分から15分、苦しんで死んだのではないでしょうか。犯された形跡もあるのでもしかしたらもっと短縮されているかもしれませんが」
「その間に写真を、恐らく犯人は犯罪に慣れているわ」
「その事でチーフに話があるんですが、あそこに座っている男が何か知っていると聞いています」
遅れて来たフリンがそう告げるとブレンダは作り笑いで迎い入れた。
「そう、なら貴方が調書してちょうだい」