basara

□◇1.ER◇
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シカゴに大寒波が訪れ飛行機況してや車など移動手段を取る乗り物など動かない状態だった。

そんな最悪な事態にぎこちない運行で何とか1台の救急車が到着すると強引に扉が開かれ、緊急救命室にまだ若い青年が運ばれた。体や顔は傷だらけで血が溢れ出ていた。

「20代男性心肺停止。首に絞められた痕跡あり」

緊急隊員は説明を施しながらERに青年を運ぶ。その隣りには付き添うようにもう1人の銀髪頭の青年が立ちパニックを起こしつつも必死で状況を伝えようとしていた。

「何もかも逃げることしか出来なかった」

そう話す青年にスタッフドクターのアビーは頷きながら突き放した。

「心肺停止の重篤、すぐにICUに連れて行く。このまま心臓蘇生を続けて」

レジデントに伝えながら意識のない青年をICUに運び込むと青年の薄い襦袢の襟元を肌けさせレジデントは細い胸に手を置き心臓マッサージを行っていた。

「挿管を入れるから気道の確保を」

ナースのサムと連携しながらも心臓マッサージを行いチューブを口の中へ入れていくアビーをトラウマルームから青年は見守った。

「入った」

チューブが気道に入るとアビーは額の汗を拭い電気ショックを始めた。

機械に繋がれた青年の心臓は漸く脈を打ち始め皆が安堵のため息を零したがアビーは何か違和感を覚えた。

「首筋にくっきりと痣があるのは誰かに首を絞められたの?」

青年の首筋に手を触れると後輩のニーラも頷いた。

「詳細はわからない。もしかしたら他にも何かあるかもしれない」

「ブレナーならきっと手すきよ。彼に伝えて」

そう話すアビーは何処か姿を消すとニーラは仕方がなさそうに電話を取った。



「調べた結果、直腸に裂傷の痕が見つかった。恐らく彼は何者かに犯されたはずだ。それも何度も」

数時間経った後、ブレナーから報告を受けたニーラは信じられないといった表情を浮かべていた。

「もしかしたらあの青年なら何か知ってるかもしれない」

ニーラが目線で送るとブレナーは挙動不審な青年に目が止まった。意識のない青年と同じ服装で誰が見ても怪しいとわかる。

「俺が話してくる、患者の様子を見ていてくれ」

残されたニーラは複雑そうに容態が安定した青年の元へと向かった。



「今からする質問は君にとって残酷で君を傷付けることになるが、しなくてはならないことだ」

ブレナーの言葉に銀髪の青年は小刻みに頷いた。

「まずは自己紹介だ。俺はサイモン・ブレナー、ここのドクターを勤めてる」

「俺ぁ、長宗我部元親ってんだ…」

「変わった名だ…、もしかして君たちって…」

そう言いかけたブレナーに元親は目を瞑り気まずそうに顔を伏せた。

「はっきりと言えば記憶はない。気がついたらこの地にいたんだ」

「とういう事は君たちは何者かに拉致された?」

「俺たちだけじゃねぇ…、他にも居るはずだ」

「他にどれ程の被害者が?」

「そこまではわからねぇんだ!」

今にも過呼吸を起こしてしまいそうな元親にブレナーは止めた。そして優しく彼の肩に手を置き優しく声を掛ける。

「君の友人は何とか一命を取りとめた、が奇跡的にだ。次はどうなるかわからない。だから君たちの協力があれば次は無くなるかもしれないんだ」

ブレナーの言葉に同意するように元親は頷いてみせた。

「あいつの名は毛利元就だ、救ってやってくれて有難うな」

腕を組み落ち着こうとする元親は微笑んで見せた。

そんな彼に微笑みながらブレナーはニーラの元へと向かったが、その表情は冷酷そのものだった。
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