月曜日にはスミレの花を
□第5話
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「あの……ジェンキンスさんじゃないんですか?」
「ああ、それは偽名」
男、もといハウルは何でもない事のように言ってのける。
リネットは嬉しそうに目を輝かせた。
「まさか、こんなにすぐに会えるなんて……」
「……疑わないんだね。まあ、本当なんだけど」
ハウルは少し驚いたように言った。
しかし、リネットはすっかり信じている様子である。嬉しそうな表情のまま、鞄の黒い薔薇を取り出す。
「これ、女の人がハウルさんに渡してくれって……」
「ふうん、黒い薔薇ねえ……花言葉は貴方は私のもの――か」
ハウルは呟くと、黒い薔薇を受け取った。
「――!」
その瞬間、薔薇ははらはらと黒い花弁を散らしてしまう。
「彼女も、随分悪趣味だね」
「あの、彼女って……?」
「荒地の魔女だよ」
「荒れ地の魔女……!?」
荒れ地の魔女といえば、知らない人はいない――誰もが恐れる魔女だ。
(私、そんな人に会っていたなんて……)
リネットはある種の感動のようなものを覚えていた。