月曜日にはスミレの花を
□第2話
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「ん――」
窓から差し込む陽光が、妙に眩しく感じる。
「……そろそろ、起きなくちゃ」
起きようともぞもぞと動くリネットの目に留まったのは、昨晩女が残していった黒い薔薇。
とてもおぞましい物の様に感じるのだが、どうしても捨てられなかった。
(ハウルに渡して、か――)
ハウルの名は、若い娘なら一度は聞いたことがある。
なんでも、ハウルは若い少女の心臓を奪う、という噂があるのだ。
(ハウルの城なら、一度だけ見た事があるけれど――)
「おーい、リネット、早く降りてきておくれ」
「あ、ごめんなさい! すぐに行くわ――!」
思わず考え込んでしまったリネットの意識が、リリアンの声で引き戻される。
(――この事はまた後で考えよう)
リネットは立ち上がった。