月曜日にはスミレの花を

第1話
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「すみません、アッティア花店から来ました、リネットです。お花のお届けに来ました」
人通りの多い昼間、一人の少女――リネットは意気揚々とドアをノックした。
そのドアの上には、「偉大なる魔法使いジェンキンス」と大きく書かれている。

「――待たれよ」
そう声がしたかと思うと、小柄な老人がドアを開ける。
「リネット、いつもすまんのう」
「いいえ、こちらこそいつもご贔屓にして下さって……ありがとうございます」
「アッティアの花は綺麗じゃからの、お師しょ……ワシも気に入っておるのじゃ」
リネットは嬉しそうに微笑んだ。

――この家は、毎週月曜日に、リネットの母親の経営しているアッティア花店の花を届けさせている。
あまり繁盛しているとは言えないアッティア花店にとって、こういった客はとても珍しかった。

「代金じゃ」
「ありがとうございます。また来週も、届けに来ますね」
「待っておる」
リネットはぺこりと頭を下げ、ドアが閉まるのを見送ると、嬉しそうに歩き出した。

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