おはなし

□涙
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街角の店先を通り過ぎたとき、
耳に入った邦楽に千庭は足を止めた。
軽快なメロディーに弾む歌声。
数年前に発売された曲だ。
特に気に入ったという訳じゃない。
あまりこの手の音楽は好きではない。
だが、その千庭が足を止めたのは
聴覚が捉えたその歌詞だった。


思うまま泣いて笑う君は〜


そのフレーズにひとつの顔が
浮かんできたからだ。
怒るを足せば、まさしく彼のこと。
金髪・サングラス・柄シャツと
派手な外見とは裏腹に素朴で純粋な彼。
忍者のくせに、表情豊かで
すぐに顔に出てしまう。
最初はただの大馬鹿だと思っていた。
今は、その純粋さ故の素直さが
愛しく感じる自分がいる。
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