とある神官さま!!

□時の神
1ページ/2ページ

「優斗の小宇宙が…消えたか。」

静まり返る教皇の間に響いた
セージの声にアルバフィカの表情が歪んだ。

「申し訳ございません、教皇様。
 私が優斗を見失ったばかりに。」

「いや、何もお前だけの責ではあるまい。
 聞けば様子がおかしかったそうだな。」

アルバフィカがより深く詫びようとするのを
セージは先んじて制した。
最後に優斗と共にいた彼が責任を
感じているのは承知する所ではあるが
そもそも別れた時の見失い方が不自然だ。
光速を見切る最強を誇る黄金聖闘士が
戦士でもない優斗に振り切られるとは
到底考えられない事である。
それにも関わらず、優斗の姿も小宇宙も
アルバフィカが目を離した一瞬のうちに
かき消えてしまったのだ。

あり得ない事が起こったのだ。

「何者かの力が働いたか…。」

厄介な事になったかもしれない。
ふうっとセージは嘆息した。
こうしている間にも優斗は
死に近づいているかもしれないのに
行方すら掴めぬ歯痒さに
セージは袂の中で強く拳を握り締めた。

顔色の悪いアルバフィカに休養を命じると
己の宮に下がらせて思考を巡らせる。

昔、何かの文献で読んだ事がある。
東洋の国で時折起こる行方不明事件。
逢魔が時と呼ばれる夕暮れに起こるそれは
『神隠し』として民草に恐れられてきた。

「神…まさかとは思うが。」

任務が終わった筈のアルバフィカが
聖域と目と鼻の先のロドリオ村から一向に
帰還せず、共にいた優斗の小宇宙が消えた。
驚いたセージがシオンに命じてロドリオ村に
様子を見に行かせたのだ。

シオンは今現在、帰還したアルバフィカに
代わって優斗の捜索を引き継いでいるが
この捜索であの娘は見つからないだろう。
早々に次の手を打つには、あの男の力が
どうしても必要になる。


「『消えなくちゃ』、か…。」


何をどうして、その結論に至ったのか。
実娘にも等しい神官が最後に言い残した言葉は
あまりにも哀しい響きを持っていた。


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ