とある神官さま!!

□牡牛座・続
1ページ/1ページ

結局、孤児達が暮らす家では落ち着いて
話が出来ないからと、ハスガードが
優斗を村の酒場に誘い出してくれた。

話足りない子供達からちらほら抗議の声が
上がったが、本気でハスガードに文句を言う
子供はひとりとしていなかった。
それというのも、彼が物申すよりも先に
セリンサが

「こーら!アルデバラン様と優斗を
 困らせるんじゃないよ!」

と軽い調子で窘めただけで静かになったのだ。
その光景から、如何にハスガードと子供達が
絶大な信頼と愛情をお互いに向けているかを
優斗は感じ取っていた。






「アルデバランは凄い人だね!」

「…何だ、突然。」

酒場から戻る道すがら、隣を歩く優斗の
口から飛び出して来た突然の賞賛に
牡牛座の黄金聖闘士は面食らった。
立場上、凄いと強いと言われ続けてきたが
この神官にそう褒められるような姿を
見せた記憶がないのだ。

「ん?…ほら、あの子達。
 ほんとにアルデバランの事が大好きで
 尊敬してるの、伝わってきたから。
 それだけ、あなたが子供達ひとりひとりと
 真剣に向き合ってきたからでしょ。」

「ああ、そんな事か。」

続けて出て来た言葉がたわいないもので
ハスガードは少々脱力した。

「そんな事、じゃないよ。
 誰かとあんな風に、想いが繋がる事
 そうそうあるものじゃないもの。
 童虎なんてテンマにいいように
 振り回されてるしね!」
 
「む、そ、そうか。」

素直に褒められる事に弱いハスガードは
照れている事を隠したくて
言葉少なに視線を隣から前に戻す。

そんな偉丈夫の視界に、ある姿が目に入る。
黒いコートにパンドラボックスを背負う後姿。
遠方の任務で聖域を離れる黄金聖闘士がする
旅装束のそれは間違いなく同僚のものである。
その流れる髪が、誰なのかさえ教えてくれた。

その姿を認めてから、ハスガードはチラリと
隣の人物に視線を戻してみた。
すると、見上げていた優斗と真っ向から
視線がぶつかって、ハスガードはたじろいだ。
もちろん、表情には出さなかったものの
心にちょっとした不安がよぎった。


「(…この娘があやつと仲睦まじい様を見て
 心なしか元気を無くす奴らはいるが。)」


己がその仲間入りをしてしまわないだろうか。

色恋どころか、女神アテナと地上の為に
闘うと名前まで捨てた己が、今日初めて
まともに喋った女子に心揺さぶられるのか。

「(あいつらがこだわる訳よな。)」

諦めにも似た苦笑を漏らすと
ハスガードは彼女に、少し前を歩く
黄金聖闘士の存在を教えてやった。



Taurus 2

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ