とある神官さま!!

□嘘は美味しく裁かれる
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ぱらり

ぱらり

ただ紙を繰る音が静謐な空間に響く。
高い位置から差し込む陽の光のお陰で
室内は柔らかな光に包まれているから
用意したランプの灯も今は消してしまった。

ぱらり

ぱらり

尚も続く紙の音に混じって硬質な音が近付く。
重量のある金属が石床を叩く音。
それに合わせて鳴る金属音。

どうやら、ここの主のお帰りらしい。
コンコンコンとご丁寧に3回打ち鳴らされた
扉から覗かせた顔は予想通りだった。

「優斗」

「お帰りなさい、デジェル。」

この聖域一を誇る書庫の持ち主は、
神官の状態を見て些か呆れた表情を浮かべた。

優斗の周りには、本が幾重にも積み重なり、
しかも、その本の塔もひとつではない。

要は、本の山に埋もれているのだ。

優斗は本の塔の隙間からデジェルを確認したが
デジェルからは優斗の姿は見えない。
尤も小宇宙で彼女がそこにいるのは
見なくても分かるので問題はないのだが
その本の量に唖然としてしまった。

「優斗、どうしたんだ。その本の量。」

「ごめんなさい、デジェル!!
 文献選ぶのに中身を確認してから
 絞ろうかなと思ってたら…。」

でも、どれも良い内容で、
どんどん増えちゃう。

ひょいっと肩を竦めて笑う優斗に
いよいよデジェルは嘆息してしまった。

「こんなに一度に読めないだろう。
 いつでも来て良いと言ったと思うが。」

「あはは………。
 探している内につい夢中になるのよね。」

「まったく。
 ………まさかとは思うが、その調子で
 私が出掛けた後もずっとここに
 引き篭もっていたのではないだろうな?」

「!!………それは、ない、よ?」

テヘペロ。
何故かそんな擬音語が聞こえて来そうな
そんな笑顔で首を傾げて笑う優斗に
デジェルは無言で圧を掛けた。


そんなバレバレの嘘、信じられるか


「優斗、君が書庫の文献を貸して欲しいと
 私に頼んだのはいつの話だったか?」

「一昨日の、朝です。」

「君の直近の休日は?」

「………………………。」

「優斗」

「うっ…一昨日から今日の3日間デス。」

「その間、書庫から出たのは?」

「………殆ど、出てたよ?」

ここに来てもまだ苦しい嘘を通そうとする
彼女の目の下が真っ黒になっているのは
この淡い光の中でも十分分かるのに。
そもそも、この部屋の出入りなど
女官たちに尋ねれば分かる事なのだ。

何故そんなバレる嘘を通そうとするのか。
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