とある神官さま!!

□決着
1ページ/1ページ

異次元に残ったふたりの影が漂う。
このような空間では全くなす術がない
優斗をアスミタがフォローしていた。

「…………シオン…。」

「君は信じると決めたのだろう。」

ひとり光に包まれて杳馬の元に戻ったシオンの
身を案じる優斗にアスミタが短く言い放つ。

「状況が多少変わった程度で
 自分が決めた事を揺らがせるな。
 君の悪い癖だな。」

「うっ…!!」

ずばりとアスミタの正鵠を射る言葉に
優斗はぐうの音も出なかった。
そんな神官の様子に乙女座の聖闘士は
やれやれと言わんばかりに首を振った。

「問題なかろう。
 シオンは牡羊座継承時にあのカイロスの
 分身と時の牢獄を撃破しているのだから。」
















「んはははははは!!!!なんだよシオン様♪
 やあっぱここで死ぬってか!」

「いいや、カイロス!!
 最早貴様の好き勝手にはさせん!!」

杳馬の機嫌は一転、急上昇していた。
単身舞い戻ってきたシオンの姿を認めて
杳馬は腹が捩れる勢いで笑い転げた。
そう、消滅する寸前で異次元に命からがら
逃げた人間風情が戻ってきたところで
結末は変わらないのだから。

彼にしてみれば、悪足掻きにもならない
シオンのその行動はちゃんちゃらおかしい、
無駄以外の何物にも見えなかった。

そんな時の神を他所に、シオンは徐々に
己の小宇宙を高め燃やし続けていた。
そんなシオンの表情を見据えた杳馬の
表情が一瞬固まった。

「ちっ!!てめえ、ムカつくサイズに
 縮みやがってよぉ!!!!」

笑い顔一転、心底忌々しそうな表情を浮かべた
杳馬が舌打ちをしてシオンを見下ろした。

奇しくも、先のリワインドワールドによって
時間を戻されたシオンの肉体は
牡羊座の聖衣継承試験、即ち彼らが最初に
激突した5年前当時とほぼ同じに
なっていたのだった。

「カイロス!!貴様が勝手にやった事だぞ!
 不愉快なのは私の方だ!!!」

当然、そんな杳馬の理不尽な態度に
さしものシオンも苛立ちを吐き捨てた。

「貴様の掌の上では踊らされんぞ!!
 先の分身同様、打ち砕いてくれる!!」

「今度こそミンチにしてやるよ!!!
 このくそがきゃあーーーー!!!!!」

スターダストレボリューションと
リアルマーベラスが同時に放たれると
この上なく激しくぶつかり合った。





















その瞬間は不意に訪れた。

「!!!!!
 アスミタ、見て!!!」

先に異変に気付いたのはアスミタだったが
反応して声を上げたのは優斗だった。

「身体が、元に戻ってく!」

心なしか大きくなった手を翳して眺める。

周りが異次元空間で、普段とは全く異なる
環境ゆえになんだか感覚が曖昧にさえ
感じるが、服の余りも元に戻っている。
アスミタを見れば、彼もぶかぶかに
なってしまっていた乙女座の黄金聖衣も
綺麗な金糸もすっかりいつも通りだ。
それを見て、なんだかほっとしてしまう。
この現象が意味する所はひとつだ。
カイロスの技の効力が失われたのだ。


シオンが勝ったのだ。

あの理不尽に人を弄ぶ神に。


「シオンが戻るな。」

アスミタの声に優斗も集中して気配を探った。
近いようにも感じるのに遠いようにも感じる。
いつもの万全の状態ではないものの、
揺らがない所を見ると重傷ではなさそうで
優斗は安堵の息を漏らした。
そんなシオンの小宇宙を手繰りながら
彼が姿を現わすのをそわそわと待つ。
そんな彼女はさながら仔犬のようだと
アスミタは密かに思ったのだった。







牡羊座の帰還まで後少し。









Settlement

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ