とある神官さま!!

□変革
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「優斗、優斗!!」

力強い声に呼ばれて目を開ける。
目の前には心配そうな表情を浮かべた、
普段よりも年若いシオンが覗き込んでいた。

「…シオン?」

てっきり、あのまま若返り過ぎて
3人とも消滅してしまったのかと思ったが
例の技の影響でやや幼くなってしまったものの
まだしっかりと存在していた。
アスミタもまた優斗の後ろにいた。

「スターライトエクスティンクションで
 異次元にテレポートしたのだ。
 ここならあやつの技の影響は受けん。」

異次元という言葉に優斗はキョロっと
周囲を見渡してみれば、確かに
異次元としか言いようが無い光景があった。
足場という足場が無い中、自分がどうして
そこに立っているのか分からない空間。
それをアスミタが支えてくれているのだ。

「私はあの悪魔とケリをつけてくる。
 そうすれば、この技も時の牢獄も崩せる」

シオンがまっすぐ見つめてくる。

「やつを倒すまで、すまないがここで
 待っていてくれないか。
 すぐに迎えにくるから…。」

申し訳無さそうな微笑むシオンに
優斗は胸が締め付けられるような痛みを
感じて思わず彼の手を聖衣ごと掴んだ。

これは、自分が招いた事態なのに
優斗は自分の手で終わらせられない。
こうして、力あるものに頼るしかない無力さ。
シオンの手を掴んだものの、優斗は
唇を噛み締めて俯くしか出来なかった。

そんな彼女の心の内を見透かすように
シオンは優斗の頭を撫でた。

「そもそもの奴の狙いは私だ。
 例え他の誰であれ、こうなっていただろう。
 優斗が気にする事ではない。」

「でも…。」

あんな巨大な奴にひとりで行くなんて。
不安で仕方がないのだ。

「聖闘士が向かう所はいつだって
 死地なのだ、優斗よ。
 それはどんな任務でも変わらん。」

「アスミタ…。」

「大丈夫だ。アスミタよ、暫しの間頼む。」

自分の手に掛けられた優斗の手をシオンは
逆の手でそっと上から重ねて握り締めた。
その柔らかな感覚に優斗はハッとした。

「…そうね。信じるって決めたもの。
 気を付けてね、シオン。」

微かに微笑みを浮かべて待ってる、と告げる
優斗にシオンが安堵したように頷く。

「ああ、ありがとう。…行ってくる。」

キイィイイィーーーーンとシオンの身体が
光に包まれて消えていった。






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