リクエスト

□AD時代の伝説
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ロイエンタール
「これは…正直に閣下に全てお話しするより他あるまい」

オーベルシュタイン
「何故この様な場所へ二人で赴いたのかについて言及されたら何と答える」

ロイエンタール
「どの道結婚すれば卿はおれの姓を名乗る事になるのだぞ?
今更おれ達の関係を隠し立てしてどうする」

オーベルシュタイン
「そっ、それはそうなのだが…」


オーベルシュタインは…否、ロイエンタールの姿をしたオーベルシュタインは明らかに狼狽していた。

表情の変化がありありと見て取れる。

先日のプロポーズの時はほんの僅かに耳が紅くなった程度だったが、今は目に見えて顔が紅い。

それどころかロイエンタール(見た目はオーベルシュタイン)の表情を見るや、今度は泣き出しそうな顔になった。


オーベルシュタイン
「ロイエンタール…怒っているのか?
何故いつもの様に、私を安心させてくれぬのだ?
何故笑ってくれぬ」


ロイエンタール
(あの鉄面皮がこれほど感情を表に出すと云う事は、無表情はこの個体特有の性質だったのか…
と云う事は今のおれはどれだけ無表情なのだ?)

半泣きになった自分が自分に縋り付いて来る様を見て、漸く我に返るロイエンタール。

自分で自分を抱き締めると云うのは些か不気味だが、今は兎に角愛しい恋人を安心させるのが先決だ。

でもキスを求められたらどうしよう。

抱いて欲しいと懇願されたら、果たして自分相手に勃つだろうか。

遂に泣きじゃくり始めた自分を抱えて、オーベルシュタインの姿をしたロイエンタールは長い帰路についた。













ロイエンタール
「しかし頭では分かっていた筈なのにこうして目の当たりにすると、卿が如何に豊かな感情を有していたかを思い知らされるな」

オーベルシュタイン
「卿はいつもと逆で無表情で怖い…
私はいつもこんな顔をしていたのか」

ロイエンタール
「確かに卿はいつも怖かったな。
今も笑おうと努力はしているが、顔の筋肉に力が入らん」

オーベルシュタイン
「もし元に戻れたら、なるべく笑う様努めよう」

ロイエンタール
「無理に笑う必要はない。
卿が心から笑いたい時だけ笑ってくれ」


私はいつでも卿の前では心から笑いたいと思っている…それだけ云うとオーベルシュタインはロイエンタールの腕の中で寝息を立て始めた。

しかし寝顔を見るに寝心地は悪そうだ。

顔に表れないだけで、普段如何にオーベルシュタインが自分から安堵と心地よさを得ていたかを知り、ロイエンタールは一度でも恋人の愛を疑った自分を恥じた。


ロイエンタール
「精一杯応えてくれていたのにな…
おれが鈍いせいで今日は普段は云わぬ事まで云わせてしまった」


腕の中の恋人が自分の姿をしている事など最早気にならなかった。

例え生涯この姿のままでも、愛を貫き通す自信がある。

明日朝登庁したなら、まず真っ先にローエングラム公に二人の関係を打ち明けよう。

時間は掛かるかも知れないが、誰からも祝福される夫婦となれるよう努めよう。

恋人の髪を愛しげにその指で梳きながら、ロイエンタールは安堵の眠りに落ちた。

明日が二人の幸福の出発点だ…そう呟きながら。

ミッターマイヤー
「ロイエンタールがオーベルシュタインで、オーベルシュタインがロイエンタールだと!?
一体何がどうなっているのだ!!」

ビッテンフェルト
「ロイエンタールが事務仕事をやってオーベルシュタインが艦隊の指揮を執るなど、異常すぎて頭がパンクしそうだ!!」

ミュラー
「ちょっ、オーベルシュタイン上級大将!
ロイエンタール上級大将の姿でにこにこ笑いすぎです!」


最初の内こそパニックになったが、実は冷徹・冷酷と噂されたオーベルシュタインが肉体的問題で笑えなかった事が知れ渡ると、意外にも二人の恋が僚友に反感を与える事は少なかった。

やたらと愛想よく笑顔を振りまくオーベルシュタインに内心焼き餅を妬かぬでもなかったが、結果それが二人の恋への祝福に繋がるのだからよしとした。

しかし困った事が一つ…

これまでロイエンタールはオーベルシュタインほどではないにせよ、無表情でクールな佇まいを醸し出す男と云う事で通して来た。

しかしそれは単なるポーズで、そう見える様装っていただけと云う事がバレてしまった。


ミッターマイヤー
「オーベルシュタインのあの顔…あれは普段からしていないと出来ない表情だぞ?」

ビッテンフェルト
「あの男が他人の表情を借りてるとは云え、あんなに大笑いするとはなぁ…」

ワーレン
「大笑い?
それならいいが、おれは昨日追加書類の多さにパニクって、泣くわ怒るわ笑うしかなくなるわの百面相を見たぞ?
危うくおれの義手が意に反して、あの男の頭を撫で回すところだった」

ファーレンハイト
「オーベルシュタイン上級大将がああ云った顔を出来るベースはロイエンタール上級大将が作った訳だからな…家ではあんな百面相をしてたんだろう」

ロイエンタール
「ちっ、違う、おれは家でもクールだ!!
あんな顔はしていない!!
していないんだあぁ!!」

ミュラー
「云ってる事と表情が一致してませんよ…」


オーベルシュタインの表情を巡ってのロイエンタールいじりは、その後ローエングラム公がAD時代のよく似た事象を描いた映画を見つけ出し、再び神社の階段を転げ落ちる事で元の鞘に収まるまで続いたと云う。

《終》




◆あとがき◆

かなんしゃんの1300HITリクエストで、『神社の出て来るお話』如何でしたでしょうか。

海老の年代で神社と云ったらもう転校生しかないでしょう、おれがあいつであいつがおれで(笑)

そんなあいつも今や三谷幸喜夫人ですよ。

フラウ・ミッターニコウキーです(何だそりゃ)

そんな訳でかなんしゃん、些か長くなってしまいましたが、どうぞご笑納下さいませ。

2009/10/04

これを書いてた頃はまさか離婚するとは思いませんでした(笑)
2015/09/14

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