WJ作品

□デスノ連載_ダブルブッキング
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【第一章】

引っ越しの日から明けて翌日、異常な生活を余儀無く選ばされた総一郎は、異常な朝を向かえる事と相成った。

目を覚ますと隣に例の青年が眠っていたのである。


総一郎
「ななななな、きっ、君は――――!!」



ダブルブッキング
〜第一章〜



青年は総一郎の腕にすがりつき、すやすやと気持ちよさそうに寝息をたてている。

総一郎は何が何だか訳が分からず暫し頭が真っ白になっていたが、やっとの思いで自らを我に返すと大声で青年を叩き起こした。


総一郎
「おっ、起きろ!!
ここで何をしている!!
一体どう云うつもりだ!!」


「ん…あふ…あと5分…」

総一郎
「あと5分じゃない!!
起きないか!!」


総一郎に怒鳴りつけられて、やっと起き出す青年・L。

しかし起きたと云っても寝ぼけ眼で、何故自分が怒鳴られているか分かっていない様だ。

ひとつ小さな欠伸を漏らすと、再び布団の中へと潜り込んだ。


総一郎
「こっ、こら、寝るな!!
どう云うつもりだ、全く!
起きろと云うのに…」


「うぅん…夕べ雷が怖くてよく眠れなかったんですから、もう少し寝かせて下さい…」


確かに夕べは夜中になってから急に夕立の様な酷い雨になった。

雷も鳴っていた様な気もするが、それではこの青年は雷怖さに自分の寝室に侵入したと云う事か?

たまたま自分の寝室だからよかった様なものの、家には年頃の娘もいるのに彼女にそんな事をされては堪ったものではない。

それにこの寝室には妻の幸子も眠っていた筈…

――やはり無理だ――

たった一日でこれでは、青年との共同生活などこの先続けられよう筈がない。

総一郎は再び乱暴に青年を起こすと、またもや業者を呼べと騒ぎ出した。


幸子
「あらあら、あなた。
どうしたんです、声を荒げて」

総一郎
「これが落ち着いていられるか!
この男は夕べ知らぬ間にこの部屋へ侵入したんだぞ!?
気付かなかったのか、幸子」

幸子
「雷が怖いと云って泣きながら部屋に来たから、私が入れてあげたんですよ?」


総一郎の憤りをよそに、妻はとんでもない事を云ってのけた。

見知らぬ男を平気で夫婦の寝室に入れるとは何事か…


総一郎
「さ、幸子!
こんな得体の知れない男を寝室に入れるなんて、何を考えて…」

幸子
「あら、得体が知れないだなんて可哀想ですよ。
もう我が家の息子みたいなものじゃありませんか。
まだ片付けなきゃいけない荷物も残ってるし、滅多に取れない連休なんですから、お兄ちゃんが起きたらすぐに降りて来て下さいね」

総一郎
「おに…って、彼はうちの長男か!!」


呆然とする総一郎を置いて、幸子はさっさと階下に降りて行ってしまった。

取り残された総一郎とL。

しかしその彼はご満悦の表情で、総一郎の腕に取り縋り眠っている。

しかし幸子が招き入れたにも関わらず、何故自分のベッドで眠っていたのか…

いや、決して妻のベッドで寝ていて欲しかった訳ではないのだが。

しかしすやすやと罪のない顔で眠るLを見る内に、段々憤りよりも諦めに似た感情が湧き起こる。

こんな天然が相手では、怒るのも馬鹿馬鹿しい…


総一郎
「いやいや、何を云っている。
こんな非常識な人間とこの先も共に生活など出来るものか!
全く…人の気も知らずにいい気なものだ」


「うぅん、あと3分…」

総一郎
「あと3分じゃない!!」


しかし怒鳴れど怒れど、青年が起きる気配は全くない。

よく見れば普段よっぽどゆっくり休む暇がないのか、濃く刻まれた目の下のくまが印象的だ。

だが不思議と不快な人相ではなく、寧ろ長い睫が愛らしいとさえ思えた。

実の息子はもう大きく、決してこの様に甘えてくれる事はもうないだろう。

その息子よりも遥かに大きなこの青年は、臆面もなくいい年の中年男に抱きつき甘えてくれる。

それはまるで失ったものを取り戻した様な、不思議な甘いノスタルジア。


総一郎
「あああ、私は何を考えているんだホ
こんな異常な事態を危うく受け入れるところだった!!
起きろ!
いい加減に起きろ!!」


その日総一郎はLを無理矢理叩き起こし、引っ越しの荷物を片付ける間も自分の目の届く監視下に置いた。

目を離せば夕べの様に何をしでかすか分かったものではない。


粧裕
「お兄ちゃぁん、新しく買って貰った本棚が高すぎて、一番上に届かないよぅ。
手伝ってぇ」


「こっちだって手伝って欲しいくらいなのに、無理云うなよ。
大体手の届かない処に本を入れて、どうやって取るつもりなのさ」


「あ、私手伝いますよ?」

総一郎
「だっ、駄目だ駄目だ!!
君はここにいたまえ!
母さん、粧裕を手伝ってやってくれ」


Lは純粋に夜神家の役に立ちたかっただけなのだが、総一郎にしてみれば得体の知れない男を娘と部屋に二人きりにするなどとんでもない。

例え小学生と云えど、昨今の若い男は幼女にどんないかがわしい感情を持つか分かったものではないのだ。


その後も総一郎はLの行動ひとつひとつに目を光らせ、安住とは程遠い一日を終えた。


総一郎
(疲れた…この男がこの家にいる限り、こんな生活が毎日続くのか。
殆ど日本にはいないと云ったのだから、明日にでもさっさと発てばいいものを)


総一郎の思いとは裏腹にLはのほほんと紅茶を口に運び、くつろぎ倒している。

今日明日旅立つ気配など当然微塵も見せていない。

それどころかLはその日も夜には当たり前の様に総一郎のベッドに潜り込み、何度追い出そうとしても無邪気な笑顔で腕に縋りついた。


総一郎
「いい加減にしなさい!
何故私にまとわりつくんだ」


「この家で私より体が大きいのは夜神さんしかいませんから」

総一郎
「自分より大きいと何故まとわりつくんだ!」


「いつも抱いて寝るぬいぐるみが、まだ空輸で届かないんですよ。
あれがないと誰かに犠牲になって貰わなきゃ眠れません」

総一郎
「私の知った事か!!」


結局最後は根負けして一緒に寝る羽目になるのに、総一郎はそんなやり取りを3日繰り返した。

業者の手違いで一度ドイツに送られた巨大うさぎのぬいぐるみは2日遅れで到着し、やっと総一郎はLから解放されたのだが、4日も寝所を共にすると今度はいないと落ち着かない。

初日に感じたあの甘いノスタルジア…どうやらあれは気のせいではなかったらしい。


総一郎
(馬鹿な…息子達の代わりと云うにはあの青年は大きすぎる。
私も焼きが回ったものだ)


そもそも自分にそんな考えを起こさせると云うのも、全てあの青年が悪い。

総一郎は益々意固地になって、L青年を否定した。

自分でもそれがただの言いがかりである事は、十分分かっているのだが…













粧裕
「あれぇ、Lお兄ちゃんどうしたの!?
今日いつもよりもっと顔色悪い」


「もっとって…ソ
確かに夕べは何故か全然眠れなかったんですが」


「昨日は寝る前にチョコ食べなかったのにね?
コーヒーも飲んでなかったし、他に何かカフェインの入ってそうなもの口に入れたっけ?」


「そんな筈はないんですけど…」

総一郎
(まさかもう私と一緒じゃなきゃ眠れないなどと云い出さないだろうな…)


冗談じゃない。

頭ではそう思っていても、心の何処かではそうであって欲しいと思う…そんな自分の気持ちに未だ気付かぬ総一郎であった。

《続》




◆あとがき◆

嫌よ嫌よも好きの内…~

パパったらもう素直じゃないんだからイ

認めちゃいなさい、もうえるるが気になってしょうがないと!!(ドリ〜夢)

全身から醸し出すえるるの愛くるしさに、身も心もメロメロになっちゃいなさ〜い(≧ω≦)

ああ、早くパパLらびゅらびゅにならないかな(悦)

でもまだまだパピィは意地っ張りです(笑)

2007/05/23
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