WJ作品

□リボーン
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【ライバルの見解】

獄寺
「10代目〜!待って下さいよ、そんな先に帰っちゃうなんて水くさいな〜」

ツナ
「あ、ごめん…なんか忙しそうだったから声かけづらくて(そうやって大衆の面前で大声で10代目って呼ばれるのが恥ずかしいから一緒に帰りたくないんだよ)」


ツナの思惑など知らず相変わらず罪のない笑顔でまとわりついてくる獄寺。
ツナがもう何度目かも分からない『10代目はやめてくれ』宣言をまるで聞いていない彼は嬉しそうにツナの鞄を持とうとしたり雨上がりの水たまりからツナを庇おうとしたりした。
そんな二人のやり取りを少し離れた処から眺めている二人組の男達がいる。


ディーノ
「ははっ相変わらずだな、火の玉ボーイ。
ツナの奴にべったりだ」

山本
「アイツ学校でもあのまんまなんだぜ?
やばいよなぁ…ありゃ尊敬とか憧れの念とか越えちゃってるよ、既に」

ディーノ
「あぁ、恋しちゃってるな、アレは」

山本
「恋!?」


目を丸くする山本に『そりゃそうだろう』と念を押してみせるディーノ。
確かに獄寺の振る舞いはさながら姫をお守りするナイト気取りだ。
それでもいまひとつ納得していない風の山本にディーノが付け加え説明する。


ディーノ
「日本じゃ馴染みが深くないかも知れんがあっち(イタリア)じゃゲイはそう珍しくないからな。
隼人はあっちの育ちだろう?
尤も本人も自分がツナをそう云う対象で見ている事には気付いてないみたいだがな」

山本
「それじゃますますヤバいじゃん、アイツ」

ディーノ
(おやおや、この坊やも自分の気持ちに気付いてないみたいだな…て事は俺断然有利じゃん?)


ディーノは初めてツナを見た時、この情けない弟分があまりに昔の自分に似ているので随分と気になっていた。
信頼する師匠がついていると分かっていても何かと理由をつけてはイタリアへ帰ろうとせず、ツナの傍でその成長を見守りたいと日本に居座っている内に彼の不思議な人望や魅力に取り付かれてしまったのだ。


ディーノ
(隼人も未だにツナに怖がられてるからまぁ敵じゃねぇな。
ハルとか云う小娘はボケすぎで話にもならねぇし、笹川ってボウズも随分とツナに熱を上げてる様子だが、アイツも自分の気持ちに気付いてねぇ。
むしろ厄介なのは妹の方か…アイツはツナの方がご執心だからな)


頭の中でライバル達の関係図を描きながら、目は隙なく前を歩くツナを見つめている。


ツナ
「もうっ、だから獄寺君!
その10代目って云うのやめてよ!!
恥ずかしいんだってば!!」

獄寺
「えぇっ!?
はず…?
だって10代目!」

ツナ
「あ、また!
もういいよ!獄寺君何べん云っても云う事聞いてくれないんだから!」

獄寺
「あっ、ちょっ、じゅうだ…沢田さんっっ!
待って下さいよ〜!!」

ディーノ
「ははっ、隼人の奴フラれたな」

山本
「うわ〜、必死んなって追ってら。
こりゃアンタの云う通りかもな」


山本は山本で自分の気持ちに気付いてないながらも、ツナが獄寺を避ける様を見て我知らず安堵する。
自身ツナの右腕を気取っているので、なりふり構わずツナにまとわりつく獄寺に内心嫉妬を覚えている事には流石の山本も気が付いている。
出来る事なら自分もあれ位おおっぴらにツナを追いかけたい。
しかししつこくして嫌われるのは嫌だ。
かと云って自分が接触を躊躇しているうちにツナの右腕の座を獄寺に出し抜かれたら…
山本の葛藤をよそに走ってツナを追っていた獄寺が彼に追いつき抱きつく様な格好で彼を捕まえる。


獄寺
「へへっ、じゅうだ…沢田さん、つーかまーえた♪」

ツナ
「わわっ!苦しい苦しい!
分かったよ、もう逃げないからはーなーしーてー(焦)」


嫌がって逃げている様に見せながらもディーノと山本の目にはツナの表情が口ほど嫌がっている様には見えなかった。
事実それまで【ダメツナ】と呼ばれ親しい友人のいなかったツナにとって、この様にじゃれ合える友達が出来た事は間違いなく喜ばしい事だったのである。


ディーノ
「やべぇな…ツナ、アレ嬉しそうじゃん」

山本
「だな…こりゃうかうかしてると右腕の座を獄寺に持っていかれるぞ」


笑いながら冗談めかせて話しているこの二人も内心当然穏やかではない。
自分の気持ちに気付いていない山本は兎も角、ディーノの焦りは相当なものだった。


ディーノ
「おい隼人、お前いい加減にしろよな。
ツナが迷惑してるじゃねぇか。
部下の癖してボスを困らせてどうする」

獄寺
「なにおう!?
てめぇへっぽこの癖しやがって何偉そうに講釈たれてやがる!!」


獄寺に嫉妬するディーノに元々ディーノが気に食わない獄寺。
二人はまさに一触即発状態で緊迫した空気が流れた。


ツナ
「や、やめてよ獄寺君!
どうしてそんなにディーノさんに突っかかるのさ。
ディーノさんいい人じゃないか」

獄寺
「が〜んΣ( ̄□ ̄;)
じゅ、10代目…こんな奴のどこがそんなにいいんスか…(泣)」

ディーノ
「聞いたか隼人、どうやらツナにとってはこの俺の方が信用が上だった様だな(悦)」

ツナ
「もうっ、ディーノさんまでなんでそうやって獄寺君を挑発する様な事云うのさ!
そう云うディーノさんはオレ嫌いだよ!?」

ディーノ
「が〜んΣ( ̄□ ̄;)」


どうやらこの勝負、軍配はどちらにも上がらず喧嘩両成敗と云う事らしい。
いや、口を挟まなかった山本が一歩リードか…
しかしディーノは見栄を張って大人の余裕を見せつけようと、必死で虚勢を張っている。
その横で苦笑いをする山本を通り越してツナの視線は落ち込みまくっている獄寺に注がれている様だ。


ツナ
「あ、や、ごめ…そ、そんな凹まないでよ。
喧嘩さえしなきゃオレだって困んないから…笑ってないで山本もなんかフォロー入れてよぉ」


よかれと思って中立を決め込んでいた山本は友達をフォローしない冷めた奴扱いされてショックを受けた。
ツナはある筈のない母性本能が疼くのか、力はあっても今一つ情けない獄寺が放っておけない様だ。


ディーノ
(な…なんだ?
この展開って…激しくヤバくないか!?
ツナはアイツの事怖がってたんじゃないのか!?)

リボーン
「怖がってるぞ」

ディーノ
「うわっ!?
び、吃驚した!!
い、いつの間に…」


神出鬼没のリボーンが足音もたてず後ろに忍び寄っていた事に驚き二〜三歩飛びすさる。
そんなディーノにいつもの不適な笑みでニッと笑って見せると、リボーンは読心術でも心得てるのかと問いただしたくなる程ディーノの心の内を見透かした発言をしてのけた。


リボーン
「お前、自分だけがツナに惚れてる事に気付いてるからって有利だと思ったら大間違いだぞ。
なんせ獄寺はツナの初めての舎弟だからな。
まぁ本人は初めて出来た友達だと思ってるみたいだがな。
喧嘩っ早いのが怖いだけでなにげに大事な友達だと思ってるみたいだぞ」

ディーノ
「なっ…で、でもあくまで【友達】だろう!?
ツナはオレに憧れてんだ、やっぱ有利じゃねーか」


必死で反論するディーノにリボーンの『お前いつイタリアに帰るつもりだ』の一言は痛烈な一撃だった。
そう、いつまでもファミリーを放ったらかして一部の部下とだけ日本に居座っている訳にもいかない。
果たして日本を離れる前にツナと既成事実を作っていけるかどうか…


獄寺
「………無理しなくていいです、じゅ…沢田さん…オレ、ホントは気付いてたッス…そんなん認めたくないから気付かない振りして目ェ反らしてたけど…沢田さんが部下として頼りにしてるのは山本ッス…先輩として頼りにしてるのはディーノッス…オレなんか沢田さんの事怖がらせて困らせて…沢田さんの…傍にいる資格ないッス…」

ツナ
「えぇ!?
ちょっ、獄寺君何云ってんの!?
そりゃ確かに怖いなって思う時はあるけど…友達だろ?
そんな傍にいる資格ないとか云われても…」

獄寺
「その気がないなら…これ以上期待持たせんで下さい!」

ツナ
「あっ、獄寺君!?」


いつもは調子がよくて優しい言葉のひとつもかけてやればケロリとしてしまう獄寺が、今回は周りと比べられた事によほど傷ついたのか走ってその場を立ち去ってしまった。


リボーン
「おいツナ、折角ゲットした部下をあのままにしちまっていいのか?」

ツナ
「え?リ、リボーン!?
お前いつの間に…って、なんだよ部下って!
獄寺君は大事な友達だよ!!
云われなくても追いかけるさ!!」

山本
「お、おい、ツナ?」

ツナ
「山本とディーノさんはここにいて!
二人ともついて来たって話をややこしくさせるだけだから!!」

山本&ディーノ
「え、えぇっ!?Σ( ̄□ ̄;)(ガーン)」


怖がっていた筈の獄寺を大事な友達宣言されたあげく、足手まとい呼ばわりの上に置き去りにされた二人はへなへなとその場に力なくへたりこんだ。
足が遅いながらも必死で追いつこうと獄寺を追うツナを見て、リボーンがまたもや不適な笑みを浮かべる。


リボーン
「お前の足じゃ獄寺には追い付けねーぞ。
部下の気持ちをしっかり自分にむけさせてこそ立派なボスだ、死ぬ気で追って来い」

ズガーン!

リボーン
「そら両足に追加弾だ、これで獄寺より速く走れるぞ」

ズガーン!
ズガーン!!

ツナ
「うおぉぉぉ!!
死ぬ気で獄寺を追う!!」


文字通り死ぬ気で追いかけたツナはあっと云う間に獄寺に追い付いた。
なおも逃げようとする獄寺に痛烈なパンチをお見舞いする。


ツナ
「てめーーーっ、オレの右腕になるって云ったのは調子のいい出任せか!?
男が一度口にした事を簡単に覆すんじゃねー!!」

獄寺
「じゅ、10代目…オレなんかが傍にいてもいいんスか?(じぃ〜〜〜ん)」

ツナ
「てめーはオレのもん(部下)だ!!
勝手に暴走すんじゃねーーー!!」

獄寺
「オ…オレのもん!?(ずきゅ〜〜〜ん+)
じゅっ、10代目!!
オレが間違ってましたぁっ!!
この先何があっても決して10代目のお傍を離れません!!」

しゅうぅぅ…(死ぬ気タイム時間切れ)

ツナ
「なっ、ちょっ、ご、獄寺君!?
え?何があっても!?」


ツナの不安をよそに獄寺はうるうるとした目で、まるで眩しいものでも見る様にツナを見つめ続けるのであった。




山本
「よォ、ツナ…あれから…大変らしい…な?」

ツナ
「大変も何も…オレの傍を離れないとか云っちゃってビアンキのいない日は必ず泊まってくんだもん…」


それはどちらがいてもまさに究極の選択だった。
リボーンが変なちょっかいさえ出さなければ弟の方が数千倍ましと云えようが、そんな日などまず有り得ない。
こうしてツナは日に日に窶れていった。


獄寺
「ちょっ、10代目、大丈夫ッスか?
なんか顔真っ青ッスよ?」

ツナ
「誰のせいだと思ってるんだよ!」

獄寺
「えぇっ、オレ!?
Σ( ̄□ ̄;)(ガーン)」


力量が足りず右腕として相応しくないと云われたのだと勘違いした獄寺は、死に物狂いで精進するから見捨てないでくれとツナの腕にすがりつく。
それがまた公道のど真ん中、大きな声でオーバーアクションだから堪らない。
恥ずかしさのあまり逃げ出そうとするツナを獄寺は半泣きで追って来る。


ツナ
(あ〜あ、獄寺君って怖いし傍迷惑だけど…なんでか憎めないんだよなぁ)

獄寺
「10代目〜、逃げないで下さいよ〜!
オレまたなんか悪い事しましたか〜?(泣)」

ツナ
「してないっ、してないから泣きながら追わないで〜!」


その想いこそが恋の始まりだと、勿論両者共にまだまだ気付かぬままである。
《終》
2005/01/19
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