WJ作品

□ラルΩグラド
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【グラドの憂鬱】

それは何気ないミオの一言から始まった。


ミオ
「ねぇ、ラル。
今まで襲って来たカゲ達はみんな人間の言葉を話していたけど、どうしてグラドやクルクルは宿主としか会話しようとしないの?
心の中で話してるんだもの、ちゃんと人間の言葉は理解しているんでしょう?」



グラドの憂鬱



ラル
「あー、そう云や人間食ったカゲを食ったんだから、グラドにだって人間の言葉を喋る声帯がちゃんと出来てる筈だよなー。
グラド、何でミオ先生達とは話さないんだ?」

グラド
『…………』


正直グラドは少々憂鬱だった。

いつか来るとは思っていたが、この日が予想より早く来た事に戸惑いも覚えている。

彼はドラゴン、本来ならカゲと呼ばれ人間とは相容れない存在。

ラル以外の人間とは馴れ合いたくないのだ。


ラル
「おいグラド、何で黙ってるんだよ」

グラド
『お前以外の人間と馴れ合って、俺がお前の大事な大事な女に情が湧いても構わないのか?』

ラル
「な、何だと!?
だっ、駄目だ駄目だ!!」

ミオ
「?」


グラドとの会話が聞こえないミオには、勿論そんな話になっているとは思わないし、グラドの真の思惑も分からない。

だからグラドの迷惑をよそに、平気で更なる困惑を誘う要求をして来た。


ミオ
「ねぇグラド、フルサイズの時が本来の大きさで、今は便宜上体を小さくしてるんでしょう?
それよりもっと小さくはなれないの?
例えば…そう、人間くらいのサイズとか、ヌイくらいのサイズとか」

ラル
「どうなんだ?グラド」

グラド
『…………』


またもや黙り込むグラド。

普段ラルの小さな体に収まっているのだ、当然実態化のサイズなど、上限以内なら自由自在である。

しかしそれをこの女教師の前で認めたら、またどんな無理難題をふっかけられるか…

そしてグラドは更にもうひとつ、ラルにも内緒にしている秘密がある。

秘密と云ってもラルの事だ、それに気付くのも時間の問題、いや、もう既に気付いているかも知れない。

勿論誰にも云わないでくれと云えば、ラルはその通りにするだろう。

だが彼は素直で正直すぎる…話題がそちらに振られれば、顔に出てミオに問い詰められるのは目に見えている。


だから…だから人間の姿になれる事は、最後の最後まで黙っていたい。


グラド
(やれやれ、ラルの命とは云え、セカンド(人間を食ったカゲ)なぞ食うんじゃなかったな)


つまり絶大の信頼を寄せているラルの命なら兎も角、人間達の生き死になどどうでもいいグラドにとって、ミオやその他の人間に命じられるなどまさしく冗談ではない話なのである。


アイア
「クルクルセカンド食べる。
クルクルみんなとお喋り出来る!
アイアセカンド探す。
クルクルそれ食べる」

クルクル
「……(´・ω・`)」

グラド
(クルクルも気の毒に…ソ
カゲは宿主以外の人間との会話など、求めていないと云うのに)


カゲ達には目的がある。

闇女王を倒し、闇世界を元に戻す事。

そして故郷である闇世界に戻り、人間とは関わらない正常な生活を送る事。

元の世界に戻る為には、人間などに情が湧いては都合が悪いのだ。


グラド
(ラルの事は信頼しているが、それも闇女王を倒す為に利用しているに過ぎない。
本来カゲは実態を持つ世界の生き物になど、僅かばかりも興味などないのだから)


グラドはそれが自分の本音だと、思い込みたかったのかも知れない。

いずれ来る別れがつらくならない様に。


グラド
『クルクル…
お前も早く闇世界に戻りたいだろう?』

クルクル
『………………………』


クルクルは何も云わない。

ただ愛しそうにアイアにすり寄るだけ。

グラドは微かに笑い、溜息をひとつついた。


グラド
(俺達はひょっとしたら…もう後戻り出来ない世界に、足を踏み入れてしまったのかも知れないな…)


人間の事などどうでもいい。

滅びようと繁栄しようと知った事ではない。

しかしラルとラルの大切な人達だけは護ってやりたい、悲しむ顔は見たくない…そう思うのもまた事実。

そして闇女王さえ倒せば、闇世界にはいつでも帰れると云う事も。


グラド
(そうだな、カゲは不老なのだ…何も焦る事などない)

ラル
「おっ、城かな」

ミオ
「ふーっ」

ラル
「あれ?違う。
すっげーでっかい花だ」

アイア
「キレイキレイ」

ミオ
「えっ、あれ花!?」

グラド
『ラル、あれは花じゃない。
薔薇鎖獣と云うカゲだ』

ラル
「カゲ!?」


人間に情が湧かない様、焦って闇世界を取り返す事もない。

別れを惜しんで、歩みを遅める必要もない。

人間は短命なのだ、限られた時間を共に過ごすのも悪くないだろう。

人間の姿も手に入れたのだ、平和になったら普通の人間同士の子供の様に、ラルと遊んでやる事も出来る。


ラル
「よし、ストラ姫救出作戦開始!!
グラドフルサイズ」


だから今はラルのペースで旅を続けよう。

焦りも不安も必要ない。

彼の云う通りにしていれば、全てがうまくいく。

憂鬱はもう感じない。

面倒事も厄介も、この小さな少年との未来を思えば苦にならないのだから。

《終》




◆あとがき◆

おやおやおや〜?

珍しく何かシリアスっぽいですよ?

変だな、最初ギャグになる予定だったのに???

ひた隠しに隠してたお喋り機能(笑)にサイズフリー、人間の姿になったり出来る事をリズとカフカにバラされて、色々面倒事を押しつけられてヘロヘロって話になる筈だったのに(笑)

まあ、それは次に書きます(^_^;)ゞ

今回は設定披露ね(笑)

2007/02/06
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