リクエスト

□大人になるまで待って
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フェルナー
「しょっ、小官がついていながら申し訳ありません!」

オーベルシュタイン
「びっくりしてからだがちっちゃくなっちゃった」

ミッターマイヤー
「耳がでっかくなっちゃったんじゃないんだ」

ミュラー
「ツッコミどころはそこなんですか…」


事の起こりは数時間前、夕べと云うか今朝と云うか…そんな時間に事件は勃発した。

多忙を極める軍務省よりやっとの帰宅を果たそうと、オーベルシュタインがオフィスを出たのは日付もすっかり変わった午前3時半頃。

時間が時間なので危険だとフェルナーが護衛を買ってくれたはよかったが、この副官に誘われるがまま遅過ぎる夕食をそこらの店で済まそうとしたのがまずかった。

ローエングラム公がフェザーンを拠点に同盟へと乗り込み、マリーンドルフ嬢の機転で魔術師ヤンを下し凱旋した直後である。

地球教の徒がローエングラム公を皇帝即位前に亡き者にしようとそこここで蜷局を巻いているのだから、野望達成の為に邪魔になる重鎮の排除は必須条件。

護衛がフェルナー1人程度では戦闘力を持たぬオーベルシュタインが、飛んで火に入る夏の虫以外の何者であろうか。

不逞の輩
「食らえ、帝国の狗め!
大主教猊下万歳!」

フェルナー
「閣下、危ない!」

オーベルシュタイン
「!?」














ラインハルト
「…で、体が小さくなったと申すか」

オーベルシュタイン
「でもねぇ、パウルおしごとできるよ」

フェルナー
「はあ…幼くなったのは容姿と話し方だけの様で…」

オーベルシュタイン
「あのどくガスもったいなかったねぇ、フェルナーのおじちゃん。
パウルしななかったからテロのおじちゃんたちはしっぱいさくだってゆってたけど、あれがりょうさんできればイゼルローンもむけつかいじょうできたのに」

ロイエンタール
「た、確かに頭脳は元の軍務尚書のままの様だな」


目の障害の事でひねくれる前の年齢まで戻ったのか、にこにこと愛想よく笑い人懐っこく話し掛けて来るオーベルシュタインは寧ろ以前より遥かに扱いやすかった。

このまま執務を執らせて問題はなかろうと云う事にはなったが、新たに別の問題が発生した。

何せ恐ろしい上官が愛くるしく変貌を遂げたのである。


ヴェストファル
「軍務尚書閣下ー、昨日はごめんなちゃいねー。
小官がちゃんとついていればこんな事にはならなかったのにねー」

グスマン
「軍務尚書閣下、飴食べまちゅかー?
チョコレートもありまちゅよー」

シュルツ
「可愛いお洋服でちゅねー。
明日はこれ着て下ちゃいねー。
だから軍服作らなくていいでちゅねー」

ロイエンタール
「もうすぐ子供用の椅子が来まちゅからねー。
それまでおじちゃんのお膝の上でお仕事ちまちょうねー」


…軍務省の面々はこの幼く愛くるしい上官にデレデレになっていた。

所謂ギャップ萌と云うものだろうか。

見ればいつの間にやらロイエンタールまでが面子に紛れ込んでいる。

あのオーベルシュタイン嫌いで有名なロイエンタールが、である。

この男は先日恋人と別れたばかりであったのだが、これまで女を切らした事のなかった彼が新たな恋人も作らず推定二歳半の男児に夢中になったと云う噂は、瞬く間に帝国内は愚かフェザーン中、果ては同盟までも広まった。

ミッターマイヤー
「おい…ロイエンタール、いい加減にしたらどうだ。
卿が今巷でどう噂されているか知っているのか?」

ロイエンタール
「帝国1の色男が女に冷たいのは実は御稚児趣味があったからだとか、子供欲しさに数々の女をたらし込んだが期せずして手に入ったからもう遊ぶ必要がなくなったとか」

ミッターマイヤー
「帝国1の色男とか自分で云うな!」

ミュラー
「ツッコミどころはそこなんですか…」

ビッテンフェルト
「解せぬのは卿が何より嫌っていたその男を、独り占めなんかしてズル…いや、赤ん坊になったと云うだけで何故そこまで慈しめるかと云う事だ」

ロイエンタール
「見た目がこれで中身が元のままならからかうのが礼儀だが、中身まで子供なら可愛がるのが道理と云うものだ」

ミッターマイヤー
「た、確かにギャップ萌堪らんハアハアなのは認めるが…」

ミュラー
「認めるんだ…」


実はミッターマイヤーが親友に小言を云うのも、彼が子供用の椅子が届いてもやれサイズが合わないの座り心地が悪いのと理由をつけて軍務尚書を独り占めするものだから、軍務省の面々にブーイングを食らっての事だと云うのは周知の事実。


フェルナー
「軍務尚書閣下ー、たまにはこっちのおじちゃんのお膝でお仕事ちまちょうよー」

オーベルシュタイン
「ロイエンタールのおにいちゃんがやきもちやくからめー!
おじちゃんたちおとななんだからがまんしなさい」

シュルツ
「どうして小官らはおじちゃんで、ロイエンタール元帥閣下だけおにいちゃんなんですか…」


帝国軍人をメロメロにさせた幼児は、やはりフェザーン商人や地球教、同盟の政治家や軍人達も等しく骨抜きにしていた。

オーベルシュタインが愛くるしい子供でいる限り、何の犠牲も払わず世は平和でいられるのだ。

自分は世を統べる器ではない、そう思っていたのに皮肉なものだ。


オーベルシュタイン
「私は今まで私心を捨ててローエングラム公を頂点に導く為に尽力して来た。
なれば現状が…私のこの容姿が利用出来る事も分かっている。
しかし…」

ロイエンタール
「どうした、子供の振りは流石に疲れたか。
その姿だからこそ不仲の振りもせず、大っぴらに人前でもいちゃいちゃ出来るのに」

オーベルシュタイン
「それがまずい。
こんな小さな体をその気にさせてどうするのだ…」

ラインハルトを媒体に、帝国・同盟・フェザーンを手中に治めたも同然のオーベルシュタイン。

しかしそれは幼児の姿の己あってこそである。

体が小さくなっても性欲は健在。

そこだけは捨てる事の難しい私心である事に悩む、体は子供でも一部は大人な軍務尚書であった。

《終》




◆あとがき◆

びぃしゃんの6100HITリクエストで、オーベルシュタインを甘やかしまくる軍務省の面々とそれに便乗するロイエンタールなお話は如何でしたでしょうか。

結局ロイ男の美味しいとこどり独り占め状態なんですが(笑)

何とかあまりお待たせせずに上げる事が出来ました。

こんなお話でよければご笑納下さいませ。

2010/10/24


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