リクエスト

□愛だろ、愛
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新帝国歴338年。

今日は初代ローエングラム王朝重鎮の同窓会である。

こんな年代に有り得ない…とあなた方はお思いだろう。

しかし我らはこの時代に、測った様に揃って生まれ変わりを果たしていたのである。

前世(むかし)の記憶もそのままに――



【同窓会】



ビッテンフェルト
「久し振りだな、ミュラー。
どうだ、そっちは何か変わった事はあったか?」

ミュラー
「いいえ、今のところ何も。
わざわざ初代の頃の重鎮が揃って生まれ変わって来た訳ですから、何かしらこの時代で我々が為さねばならぬ事があるのは間違いない筈なんですがね。
今はその兆しさえ見あたりませんよ」


そうだ、我々には何か使命がある筈だ。

でなければ初代の頃(むかし)の記憶を持ったまま、それも今軍人として活躍出来る年齢にタイミングよく生まれて来た説明がつかない。

とは云えこの数百年の間に帝国・同盟・フェザーンの混血は進み、それらを分ける基準もなくなった。

軍備は今だ布かれているが、とても国を二分する様な戦争が起こり得るとは思えない。

ミュラー
「まさか旧同盟の他にも、ゴールデンバウム時代に外宇宙へ逃走した勢力があった…と?」

ミッターマイヤー
「ない話ではあるまい。
同盟の存在にすら気付いたのは何代も後の話だ。
未だ気付かず放置している勢力があったとしても不思議はない。
我々が今この時代に再度集結した事には意味がある」

ビッテンフェルト
「だがなぁ…そうするとアイツらにも…意味があるのか?」


提督の指指した先にはアイゼナッハ、エミール、フロイライン・マリーンドルフの生まれ変わりがいた。

流石にあの3人は今この時代に生まれ変わっても役に立つとは思えない。

彼らはそう…生まれ変わりに失敗したのだ。

彼らは性別を間違えた。


アイゼナッハ
「てゆうかてゆうかヤバくね?
それ超マジヤバくね?
アタシ無理マジパネェ逃げっぷり超ダッシュ?」

エミール
「ヘコい事云ってんじゃねぇよ、ヘタレ馬鹿女が。
同盟・フェザーン以外の第三勢力?
アタシがツブシてやんよ、上等だ」

ヒルダ
「どうして君らはそう仲悪いかなぁ。
博愛主義でいかなきゃ博愛主義で。
このぼくの様にね。
今夜どう?
お兄さんと仲良くキモチイイ事しない?」


嗚呼…何と云う事だ…

彼らは生前の見る影もない。

我々生まれ変わり組は容姿も性格もほぼ初代の頃(あのころ)を正確に再現されているが、失敗組は容姿は僅かに面影を偲べる程度に留め、性格に至ってはほぼ正反対。

寡黙だったアイゼナッハは兎に角よく喋るガングロギャルに、真面目でひたむきだったエミールはガラの悪いヤンキー娘に、貞淑だったフロイライン・マリーンドルフはロイエンタール提督も呆れるたらしっぷり。

本当に彼らにはこの時代に生まれ変わった意味があるのか?


ビッテンフェルト
「奴らはまだいい…耐え難いのはオーベルシュタインの変貌ぶりだ!
まだ来てないのがもっけの救いだ!
いや、まだとは云わん、来なくていい!」

ミッターマイヤー
「それは無理だ…昨日ロイエンタールから連れて行くと連絡があった。
あの2人は同じ惑星に生まれ、尚且つ幼なじみだ。
ロイエンタールめ…あれ程オーベルシュタインを毛嫌いしていた癖に、女なら何でもいいのか?」

ミュラー
「軍務尚書にまで手をつけるなんて…本当に女性なら何でもいいんですかねぇ…」

実のところ…あの軍務尚書の変貌ぶりが一番の驚きのタネだ。

性別が逆だと性格も逆と云うのは先の3人で説明済みだが、生前の面影を残すあの容姿であの性格は正直云ってキツい。

寧ろ心臓に悪い。

幾ら幼なじみに生まれたからって、ロイエンタール提督は何故彼(彼女?)の面倒をわざわざみるのか。

嫌っていたのなら放っておけばいいだろう。

連れて来なくていい。

女性だからか!?

女性だからなのか!?

何と云うかこう、生まれ変わった軍務尚書オーベルシュタイン閣下は余りにユルかったのだ。

正反対でアレなのだから、生前の固さを物語って余りあるユルさなのである。

彼(彼女?)とは過去数度顔を合わせたが、我々は未だそのギャップについていけていない。

そう、例うるならば紅茶王子に出て来るオレンジ・ペコーの容姿(おでこが非常に生前の軍務尚書らしい)にテガミバチのアリア・リンクばりの運動神経のなさ、極めつけはフェアチャイルドのYOUを彷彿とさせるユルい喋り!

あれだけユルくてドジっ娘ならば放っておけないのは分かるけど!

だからってロイエンタール提督!


ロイエンタール
「久しいな、諸兄ら。
変わりない様で何よりだ」

オーベルシュタイン
「ちぃーす」

ミッターマイヤー
「わあ、また大きくなったなぁ(棒読み)」

ミュラー
「あは…あはは…順調ですねー(棒読み)」

ビッテンフェルト
「男の子だったら美男、女の子だったら美女に生まれるかなー?(棒読み)」


だからって結婚までするこたないじゃないですか、ロイエンタール提督うぅぅ!!


ミッターマイヤー
「以前の卿は独身貴族を生涯通す男だと思っていたんだがな…」

ビッテンフェルト
「一度の過ちの出来ちゃった婚じゃないと云うのがまた驚きだ…」

ミュラー
「親御さんの都合で軍務尚書閣下が引っ越すと聞いて求婚したんでしたっけ…」

ロイエンタール
「うむ、今のおれはオーベルシュタインなしでは生きてゆけぬのだ」


だからそう云う事をさらっとおぉ!!

軍務尚書、アンタ一体どんな手を使ったんだ!

催眠術か!?

それとも怪しげな魔術か!?魔術なのか!?

ヤン・ウェンリーの処にでも修行に行ったのか!?

でなきゃそんなに体の相性がいいのか!?そうなのか!?

ラインハルト
「まあよいではないか、此度は障害なく結婚出来たのだし」

キルヒアイス
「前回みたく結婚反対されたからってヤケ起こして反乱企てたりしないで下さいねー?」

ミュラー
「!?」


今…聞いてはいけない事を聞いた様な…?


ロイエンタール
「身ごもった妻を置いて先立つ様な真似をする訳なかろう。
キルヒアイス、卿も人が悪いな」

ミッターマイヤー
「反乱の真相を聞いた時は、思わずグレそうになってしまったぞ。
2人の関係を黙っているとは…人が悪いのは卿の方だ」

ビッテンフェルト
「卿が一番反対しそうだから云うに云えなかったのだろう。
おれは今でも反対したいがな」

ロイエンタール
「なっ、何っ!?
駄目だぞ、横恋慕は!!
オーベルシュタインはおれのものだ!!」

ミッターマイヤー&ビッテンフェルト&ラインハルト&キルヒアイス
「誰も取らん!!」

オーベルシュタイン
「うっわ、すっごい気っ持ちいー。
お天気いいとそれだけで気分いいし、甘いものも食べたいしなー。
そうそう、こないだテレビでやってた映画よかったなー。
何だっけなー。
恋と青春の旅立ち!」

ロイエンタール
「…愛だろ、愛」


前世からの因縁もその頃からの仲だった事も度肝を抜く反乱の真相も、それら全てが霞むくらい…嗚呼、軍務尚書閣下。

あなたやっぱり昔から変わってませんよ、その空気を読まないマイペースっぷり!


オーベルシュタイン
「あ、今かかってるこの有線!
はぁー…いーのよねー…インパルスの…至上の恋…(うっとり)」

ロイエンタール&ミッターマイヤー&ビッテンフェルト&ラインハルト&キルヒアイス
「愛だろ、愛!」


産まれて来る子はどちらの性格を受け継ぐんだろう。

願わくばロイエンタール提督の女癖の悪さと、軍務尚書のマイペースさを合わせ持った男の子だけは産まれん事を祈る。

《終》




◆あとがき◆

大変長らくお待たせ致しました。

月夜しゃんの5500HITリクエスト、オベ子妊娠!どうする、ロイエンタール!?なお話如何でしたでしょうか。

って、どうするもこうするも、普通に結婚して子宝に恵まれただけなんですけども(笑)

前にブログでちょっとネタ振った生まれ変わりに失敗したオベ子の話を、月夜しゃんが膨らましてくれました。

何かリクエスト条件満たせてない気もしますけど、そこはそれ、椰子間のお家芸と云う事で(てへっ)

ちなみにオベ子の空気読まない科白の元ネタは、スカパラのアルバムGrand Prixをご参照下さいイ

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

大変長い事お待たせしてすみませんでしたー。

2010/10/10


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