リクエスト

□夢のてんてん対決
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それは一通の心無い招待状から始まった…


アッテンボロー
「提督…これは帝国の罠でしょうか」

ヤン
「(ぷ…ぷぷ…)
い、いやあ、純粋な親睦だろう?
折角ご招待されてるんだ、ゆっくり遊んで来るといい」

アッテンボロー
「何云ってるんですか、おれだけじゃなくイレギュラーズの主だった面子が軒並み呼ばれてるんですよ」

ヤン
「え…?」



【夢のてんてん対決】



『全国三千万のビッテンフェルト&アッテンボローファンの皆様、ようこそお集まり下さいました!
今宵夢のてんてん対決を実況させて頂きますのは、ワタクシ銀河帝国皇帝ことラインハルト・フォン・ローエングラム。
解説は我が姉アンネローゼ・フォン・グリューネワルト。
そして審判は公平性を保つ為に、フェザーンよりケッセルリンク氏をお招きしております』


そう、心無い招待状の送り主はラインハルト。

姉の『今上流階級の人達の関心事は、帝国のビッテンフェルト提督と同盟のアッテンボロー提督の夢のてんてん対決なんですって』と云う一言から発展したのである。

ユリアン
「皇帝自ら司会って…やる気漲ってるあたりが怖いですね」

ヤン
「あのカイザーが敬愛する姉君が発案者なんだ、よもや不正は働かないと思うけど…」

ポプラン
「帝国に思いのほか提督ファンのご婦人が多いのは面白くありませんね(むすっ)」


面白くないのは自分のファンじゃないからか、それともアッテンボローがまんざらでもなさそうな様子が気に入らないのか。

現在帝国に残る貴族階級はリップシュタットの会戦時に現皇帝に味方したほんの一握り…の筈なのだが、意外やブラウンシュヴァイクには味方したくないなぁと云う日和見主義が想像を超えた人数帝国領内に潜んでいた事が発覚した。

皆ほとぼりが冷めるまで己の領地に引っ込んでいたが、激動の末すっかり忘れられた為、自分の処遇の決定も求めるついでに面白そうな祭りを見学に集まったと云ったところだろう。

見れば彼らの懐を狙って、いつの間にかフェザーンのブックメーカーまでもが凌ぎを削っている。

彼らは忘れられていた為、私財や領地を没収されてはいないのだ。


ミュラー
「す、すみませんね、ヤン提督…カイザーの思い付きに付き合わせてしまう事になって」

ヤン
「なに、私達は楽しんでいますよ、こんな機会はめったにないですからね。
見て下さい、アッテンボロー本人なんて、早速ブックメーカーから掛札を買って来て…」

ミュラー
「へぇ、アッテンボロー提督はなかなか自信家なんですね、意外だなぁ」

アッテンボロー
「いや、ビッテンフェルト提督が勝つ方に」

ミュラー
「いや、ちょっと待ったぁ!?」

ポプラン
「おれはいい線行くと思いますよ?
だから引き分けに10帝国マルク」

ミュラー
「いい線いって引き分け!?
しかもたった10帝国マルク!?」

アッテンボロー&ポプラン
「だってお小遣いの上限が決められてるから、これしか換金出来なかったんだもん」

ミュラー
「修学旅行か!!」


対決内容は未だ知らされていないが、ビッテンフェルトの体格を見てプライドよりも堅い賭けで確実に小遣いを増やす方向に走ったらしい。

シェーンコップ
「たかが名前が多少似ているだけで対決させられるとはな、帝国も存外暇人が多い様だ。
夢の対戦カードと云うなら他にもあるだろうに」

ロイエンタール
「おれの顔を見ながら云うと云う事は…女たらし対決か?」

シェーンコップ
「ちょっ、そこは男前対決って云っとこうよ!」

ロイエンタール
「名前が似てるだけで対決なら、ロッテンマイヤーさんもよばないと」

ミッターマイヤー
「ミッターマイヤーさんならここにいるが?」

オーベルシュタイン
「それならハイジも呼ばないと。
おい、ファーレンハイト大将」

ファーレンハイト
「おれはアーダルベルトであってアーデルハイドではない」


手に手にフェザーン商人の屋台で買ったイカ焼き・たこ焼き・ラムネに焼きそばを持った帝国軍人幹部の嬉しそうな顔を見て、フェザーン侵攻は実はこれが目当てだったのではと訝しまずにいられないヤン。

帝国では口に出来ない珍しい料理の数々が目当てで、同盟侵攻はそのついでか…と捉えたヤン自身が持ちきれない程の屋台料理に埋もれていた。


ヤン
「それでアッテンボロー、対決方法はどうなったんだ?
(もぐもぐ)
選手はもう知らされてもおかしくないだろうに。
(むしゃむしゃ)」

アッテンボロー
「それがまだなんですよね。
(やしやし)
向こうのビッテンフェルト提督も知らないって云うし。
(もきゅもきゅ)
あっ、これ旨っ」

ビッテンフェルト
「流石はマインカイザー、ここぞと云う時の見せ場をよくご存知だ(もごもご)
こう云う事は引っ張った方が盛り上がるからな(むぐむぐ)
ぐぉら、オーベルシュタイン!
それはおれが買ったりんご飴だぞ!?」

オーベルシュタイン
「勝ちたければほどほどにしておけ…(もっちゃもっちゃ)」


ノーザンシーロード地方の名物『もちもちポテト』を頬張りながら、冷徹に振る舞われてもなぁ…と思いつつ、ふとアッテンボローは屋台料理を食べる手を止める。

勝ちたければほどほどに…そうだ、自分はこれから隣で黙々とライティングストーン名物明石焼きを咀嚼しているこの体の大きな男と対決をせねばならなかったのだ。

何も考えずにただただフェザーンの物珍しい食べ物に心奪われ、危うく満腹になるところだったが、これからバトって下さい云われたらどうしよう?

食べてすぐに激しい運動なぞさせられた日にゃ、横っ腹イタイイターイ現象は避けられない!

何よりこの冷徹な義眼の持ち主は、かつて帝国の総参謀長を務めた男。

もしや既に対決方法を聞き知っていて、ビッテンフェルト提督に釘を刺しに来たのでは…


アッテンボロー
(でも対決相手であるおれの前で云ったら台無しだよなぁ。
あの男がそんなポカをやらかす訳はないし、考え過ぎか…?)


第一公平性を云々する為にわざわざジャッジメントはフェザーンの人間にやらせるのだ、この体格差でバトルなどとこれ以上ない不公平をあのプライドの高い銀河帝国皇帝が強いる筈がない。

しかし皇帝にその気がなくとも、あの義眼の男が裏で何を画策しているか…

転ばぬ先の杖と云う言葉もある。

たかが祭りと云えど自分のせいで同盟に無様な敗北をもたらす訳にはいかないのだ、ここは慎重に振る舞おう。


オーベルシュタイン
「ビッテンフェルト…何度も云う様だが、本気で勝つ気があるのならあまり飲食は…(もちもち)」

ビッテンフェルト
「うるさいっ、卿の指図は受けんっ!
あーっ、この御手洗団子と云うやつは旨いなぁっ!」

アッテンボロー
(だから自分がヒルズマウント名物・吉備団子を食べながらそんな忠告したって…)


帝国の軍務尚書はもちもちした食感が好きなのかしらと思いつつ、腹八分目で抑えたアッテンボローは対決方法の発表を待った。


オーベルシュタイン
「そろそろカイザーから対決方法の発表が行われる時間だな。
(もっちりもっちり)」

アッテンボロー
(あ…今度はビリーブステイツ名物・もちもちおやき…)

ビッテンフェルト
「ふはははは!
どんな勝負の方法だろうと、おれは負ける気がせん!
(がりぼり)」

ポプラン
「雷おこし貪りながらかっこつけられてもねぇ…?
提督、勝算は?」

アッテンボロー
「対決方法が分からなければ、戦術の組み立てようもないさ。
しっ、カイザーが出て来た…」

余興として技を見せていたフェザーンのチアリーダー達が左右に割れて、その間の花道とも云える通りを皇帝が厳かに歩みステージへと立つ。

その手には対決方法が書かれていると思われるカードの入った封筒。

伊東四朗ならば『にん』と云って封を開けるところだ。


ラインハルト
「発表します」


ダラララララララララララ…
パッパラパ―――――――ッ


アッテンボロー
(何もドラムロールにファンファーレ付きで発表しなくても)

ラインハルト
「対決方法はてんてん対決にちなんで、点天の餃子早食い対決ー!」


わあぁっ!!


アッテンボロー
「はぁっ?」

ポプラン
「今度はノースニューアース名物っすか…」

ヤン
「てゆうか早食い対決でどうして帝国の貴族はこんなに盛り上がれるの…」


皇帝に媚びを売っている訳ではない…心底興奮している帝国貴族達の演技なしの姿がそこにはあった。


アッテンボロー
「はぁ…腹八分でやめといてよかった」

ポプラン
「ビッテンフェルト提督はあれ以上食えるんでしょうかねー」


これは後から聞いた話だが…

やはりオーベルシュタインは先に対決方法を知っていたらしい。

尚且つビッテンフェルトが絶対自分の言を聞き入れない事も。


『ああ云っておけばムキになって余計に食べると思ってな。
いや、実に愉快であった。
あの男が赤くなったり青くなったり…ぷぷっ。
今頃医務室で胃薬と格闘しているだろう、あの男は粉薬が飲めんのだ(くくくっ)』


やはりあの男だけは敵に回したくない。

奴が後方勤務で本当によかった。


ポプラン
「何でもねぇ、提督。
ロイエンタール提督が買おうとしたスカイドラゴンリバーの天然鮎…最後の一匹を僅差でかっさらったのがあの猪突猛進提督だったらしくて。
ささやかな嫌がらせって本人は云ってましたけど、あれってささやかですかね?」

アッテンボロー
「お前はおれがどんな目に遭っても、そんな嫌がらせを実行に移すなよ?」


好いた男の為ならそこまでやるか…

アッテンボローはその時見たオーベルシュタインの無邪気な笑みが生涯忘れられないだろうと後に己の手記に残したと云う。
《終》




◆あとがき◆

りんりんしゃんの4500HITリクエスト、てんてんの絡みは如何だったでしょうか?

あれ?

てんてんの絡みだった筈なのに、本人同士は殆ど絡んでないゾ?

す、すみません…

またしてもオベ子出張りまくりだし…

こ、こんなお話でよければご笑納下さいね。

リクエスト有り難う御座居ました。

2010/06/13


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