リクエスト

□アッテンボローの受難
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アッテンボロー
「あ、あれ?
今使ってたのに…何処行ったんだ?」

コーネフ
「どうしました?」

アッテンボロー
「いや、ペンが…おかしいな、床にも落ちてないな」

コーネフ
「ペンって…シャルロット・フィリス嬢のお土産のパンダのやつ?」

アッテンボロー
「おっかしいなー、昨日も支給されたばかりの替えのインクがなくなったし…どうなってるんだ?」


提督の受難は…ある日を境に突然始まった――


ヤン
「今日はペンがなくなったんだって?」

ポプラン
「そうなんすよー。
あれはおれもお揃いで貰ったやつだから、あれが目当てなら別におれのでもいい筈なのに」

ヤン
「それでアッテンボローは?」

ポプラン
「流石にちょっとヘコんでますね。
今日はもう帰りました」


いつもはこの時間意欲的に残業してる提督が、珍しく定時刻に上がった。

そう、提督の身の回りの物がなくなるのは、昨日今日始まった事ではない。

この二週間ばかり、毎日必ず一つや二つのなくし物を続けている。

それが盗難騒ぎを起こせる程の物じゃないから質が悪い。

たかだかペンやメモ帳、果ては使用済みの紙コップなんてものじゃ、なくなったからと云って所持品検査にまで持ち込めやしないからな。

実際本当に盗難なのか、単に提督のうっかりなのかも定かじゃないから調べると云ってもなー。

取り敢えず珍しくヘコんだあの人が心配だから、からかいがてら帰りに家にでも寄ってみるか。


アッテンボロー
「あーのな!
おれがそんな下らないイジメだか嫌がらせだかでヘコむと思うか?
おれがヘコんでるのは自分の物忘れの激しさにだよ!」

ポプラン
「提督は自分のせいだって思ってるんですか?」

アッテンボロー
「でなきゃ誰があんなもん欲しがるんだよ。
嫌がらせをされる様な恨みを買った覚えもないしな」

ポプラン
「分かってないなぁ…あんた自分の立場って考えた事あります?
その若さで分艦隊司令官なんて、十分やっかみの対象になりますよ」

アッテンボロー
「そうか?」


…自覚がないのも質が悪い。


しかし最も質が悪いのは、提督の物がなくなる時、いつも傍に信頼のおける人間がちゃんとついてるってとこだ。

コーネフや不良中年、リンツにブルームハルト、あの口やかましいムライのおっさんがいる時にまで…いや、寧ろ狙ってるのか?

犯人がわざわざ挑戦してみせてるとしか思えない。

幾らお前らが護っていても、いつでも提督の寝首を掻く事が出来るんだぞって事か?

でも最近になって犯人はおれとヤン提督とユリアンは苦手らしいと云う事が分かって来た。

この三人が傍にいる時は、提督の物はなくならない。

しかしおれとユリアンは兎も角、何でヤン提督?

あの人なんか一番カモにされそうなのに…そう思うのは、おれら親しい人間だけか?

まあ勿論犯人が親しい人間の訳はないがな。


アッテンボロー
「おい…何やってんだ?」

ポプラン
「何って勿論泊まりの準備」

アッテンボロー
「ふざけるな!
誰が泊まっていいって云った!」

ポプラン
「おあいにく様、こちとらヤン提督の命令なんでね。
今日から交代であんたのSPですよ。
明日はコーネフが来ますからね」

なくなる物は些細な物ばかりだが、流石にこうも続くと提督の身の安全を考慮するのは当然の話で。

てゆうかもう二週間、寧ろ動くまでが遅すぎだろう。

それと云うのもこの人が、自分のうっかりや気のせいだと、上への報告を怠ったせいだ。

デキる人なのに、こう云う危機管理がなってないんだよな。

まあおれが来たからには犯人の好きにはさせないけど。

それにしたって犯人は一体どうやって提督の物を盗んでいるんだろう。

不良中年は兎も角、あのコーネフがついていながらあっさり犯行を許すなんて…?

何だか…腑に落ちない。

これは一つ何か罠を仕掛けた方がいいかも知れんな。

些細な事件を大事にする様な罠を…


アッテンボロー
「って、何やってるんだセ」

ポプラン
「だって明日も早いから、もう寝ないと」

アッテンボロー
「だから何でおれのベッドに入って来るんだセ」

ポプラン
「嫌だなぁ、提督。
近くにいなきゃ護れないじゃないですか」

アッテンボロー
「近すぎだ!!
欲求不満なら女の部屋へ行けセ」


…つれないなぁ、提督。


ざわ…ざわ…

『えー…遂に?』

『流石にこうなると…大事だな』


明けて翌朝、遂に事件は大きく動き出した。

提督が長い時間かけて作った作戦指示ディスクがなくなったのだ。

昨日漸く入力し終えて、今日分艦隊の各艦にインストールする予定だったのに。

流石にヤン提督も重い腰を上げた。

これが敵の手に渡ればこっちの手の内は筒抜けだ。

要塞内に気まずい雰囲気を作りたくないなんぞと云ってはいられない。

即要塞全域に所持品検査の指令が下された。


アッテンボロー
「お、おい、ポプラン…」

ポプラン
「大丈夫ですよ、提督。
これぐらい大事にしないと犯人は捕まりませんって」

アッテンボロー
「だからって何も…」


そう、お察しの通りディスクを盗んだのはこのおれだ。

まあ盗んだと云うか提督から預かったと云うか。

おれの中で引っかかってるあの事を確認するまでは、おれ以外の奴にSPなんて任せらんねーからな。

おっ、早速一件報告があったか?

『たっ、大変です、ヤン司令官!
シェーンコップ准将の部屋から…大量のアッテンボロー提督の字で書かれたメモ書きが…!』

『こっ、こちらはブルームハルト副連隊長の部屋からアッテンボロー提督のマグカップとスプーンがっっホ』

『こっ、コーネフさん!
あんた何やってんですか!?
これアッテンボロー提督のペンとブラシじゃないですか!』


ほーら云った通りだ。

結局おれの踏んだ通り、犯人は身内だったって訳だ。

おかしいと思ったんだ、コーネフの野郎がついていながら盗難騒ぎなんて…って、待て!

む…ムライのおっさんまで!?


ヤン
「君達…どう云う事か説明してくれるかな?」

シェーンコップ
「あ、いや、つい…出来心で…」

コーネフ
「だって提督…最近急に可愛くなったんですもん…」

リンツ
「な、何かちょっと身の回りの物が欲しくて…」

ヤン
「だからってねぇ…盗むって云うのはどうなんだい?」

一同
「だっておれ達ポプランほど露骨に飢えてるとこ見せられないしっ!」

ポプラン
「誰が露骨に飢えてるだセ」


まあ薄々…提督に危害を加えるのが目的じゃないって気付いてはいたけど…SPがおれ以外に順番が回る前に解決してよかったよかった。


アッテンボロー
「しっかし何なんだよ、あいつらの言い分は!
急に可愛くって…失礼にも程があるだろセ」

ポプラン
「まあまあ、昔から云うじゃないですか。
恋する乙女は美しいって」

アッテンボロー
「はあ!?
誰が誰に恋だって!?」

ポプラン
「いい加減認めて下さいよー。
提督の物がなくなり出したのって、おれと初めてHした次の日からですよ?」

アッテンボロー
「あ…」


意地っ張りの恋人を持つのは苦労するけど、取り敢えず周りの目から見ても急に可愛くなった提督は、間違いなくおれに恋してるって事で。

本人は認めやしないだろうけど、事実は事実。

これからも…おれが護って差し上げますからね、提督イ

《終》



◆あとがき◆

りんりんしゃんの2700hitリクエスト、誰彼構わず迫られまくるアッテン話は如何でしたでしょうか。

あ、あれ、待てよ?

アッテン迫られてないな…物盗まれただけだ。

しかも帝国側誰も出てない。

ひえー、お待たせした上に、ちゃっかりポプの一人勝ちになっちゃっててごめんなさい。

こ、これに懲りずに是非またキリ番狙ってやってくんしゃい。

最後までお付き合い有り難う御座居ました(>_<)

2010/01/17


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