リクエスト

□イゼルローン茶会事件
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ラインハルト
「オーベルシュタイン、何をしている」

オーベルシュタイン
「は、実は最近ふと思い出した事がありまして」


そう云ってオーベルシュタインは端末に大きなモニターを繋ぎ、しきりとパスワードの様なものを打ち込んでいる。

どうもイゼルローン要塞に残して来た、自分個人の端末にアクセスしようとしている様だ。


オーベルシュタイン
「閣下もご存知でありましょうが、私がイゼルローン要塞を任地としていた頃の要塞司令官と駐留艦隊司令官は大変な不仲でしてな。
当時の上官であったゼークト大将に命じられて、要塞司令官の動向を探る為に、要塞要所に監視カメラを…」

ラインハルト
「仕掛けていたのを今になって思い出したと」

オーベルシュタイン
「御意」


しかし今頃そんなものは同盟の駐留軍に発見され、撤去されているであろうと云うラインハルトの言葉に、オーベルシュタインは『ナイン』と短く答えた。

軍の機密に関わる情報が飛び交う様な場所のカメラは流石に全て発見されてしまった様だが、軍人よりも寧ろ一般市民の利用率の高い緑化地帯に仕掛けられたものだけが未だ生きているとの事だ。

その一箇所だけ発見されていないカメラからの映像記録を受信出来そうである旨を伝え聞くと、ラインハルトも興味を突き動かされた。

いずれ己が統治する事になるであろう人々の暮らし向きを知っておく必要もあるだろうと、映像を呼び出す旨オーベルシュタインに命じる。

果たしてモニターに映し出された映像とは…


ラインハルト
「メルカッツが映っているではないか」

オーベルシュタイン
「隣にいるのは副官のシュナイダーの様ですな。
貴族共が樹立した正統政府とやらに軍務尚書として招き入れられたと聞きましたが、ささやかながらその送別会を開いている様です」


となると周りにいるのは私服姿ながら軍人と云う事になる。

映し出された人々の会話の中にも『提督』『閣下』などの言葉が出ている事から、軍の中でもかなりの要人である事は疑い得ない。

思いもかけず重要な映像を手に入れた事から、イゼルローン攻略のヒントを得られるかも知れないと踏んだラインハルトは、ミッターマイヤー・ロイエンタールの両提督も召集した。

4人は各々食い入る様に画面を見詰める。


キャゼルヌ
『物資が少なくてね、こんな屋外でのお茶会になってしまって申し訳ないが、今のイゼルローンではこれが精一杯だ』

メルカッツ
『とんでもない。
私の為にわざわざこの様な席を設けて頂いただけでも、感謝に堪えない事です』

ロイエンタール
「ほう、イゼルローンでは物資に困窮しているのか」

ミッターマイヤー
「要塞内にはプラントもあるだろう。
それを回し切れていないとすると、要塞よりも寧ろ政府の方がかなり圧迫された状態と云う事か」

ラインハルト
「まて、ヤン・ウェンリーが何か話すぞ」

ヤン
『戦時中の非常食と云えば芋ですよ(笑)
今あちらでアッテンボローが火を起こして焼いていたと思いますが、そろそろ焼けるんじゃないですか?』


見れば確かに水辺で誰かが火を起こしている様に見える。

遠くて姿はよく見えないが、あれが逃げの演技が巧いと定評のあるアッテンボローか。

提督と呼ばれる人物が屋外で芋を焼く…帝国では考えられない事だ。

それ程までにイゼルローン…いや、同盟では物資・人材ともに窮しているのか。

オーベルシュタイン
「以前の焦土作戦で些かやりすぎましたかな。
用意されている食料も、各人が各家庭から持ち寄ったものの様です」


その作戦を打ち立てたのはお前だろうと鼻白みながらも、一同は更に食い入る様に画面に見入った。


ポプラン
『提督、これなんかそろそろ焼けたんじゃないんですかね』

アッテンボロー
『そうだな、もういいんじゃないか?』

ポプラン
『じゃあこいつはおれが戴き〜っと!』

アッテンボロー
『あっ、こら!
待て!
返せ!』

ミッターマイヤー
「( ̄口 ̄;)
軍の要職につきながら、たかが芋一つを奪い合う…
だ、駄目だ、おれには涙なしではこの映像を見る事が出来ん」

ロイエンタール
「ファーレンハイトが見たら、家に帰ると泣き出すんじゃないか?」

ラインハルト
「私も幼い頃は貧しい暮らしを余儀無くされたが…同盟の貧困がこれ程とは」

オーベルシュタイン
「それではイゼルローン攻略の鍵は、プラントへの集中砲火で要塞放棄を狙うと云う事ですかな」

ラインハルト&ミッターマイヤー&ロイエンタール
「あんた鬼や!!」

アッテンボロー
『おい待て、ポプラン!
お前何をしてるんだ!?』

ポプラン
『中にタバスコ仕込んでるんすよ。
一個だけ激辛が混ざってるバクダン芋ー!
さあ、誰に当たるかお楽しみ♪』

アッテンボロー
『よ、よせ!
おれに当たったらどうする!
おれは辛いもんが苦手なんだー!』

ポプラン
『だから面白いんじゃないですか。
大丈夫ですよ、提督。
提督に当たったらおれが介抱して差し上げますから』

アッテンボロー
『( ̄口 ̄;)
おれに当てる気満々だ――――――――――!
こんのっ、いい加減にしろっ!』

ポプラン
『ぎゃっ!
コーネフ、助けろ!
提督が殴る―!』

コーネフ
『…当たり前だ』

帝国一同
「………………………」

オーベルシュタイン
「彼らは貴重な物資を消費して遊んでいる様ですが」

ラインハルト
「…同盟は我々が想像している程困窮していないのかも知れんν」


こうしてイゼルローン要塞プラント破壊作戦は未然に防がれた。

その事にポプランとアッテンボローが貢献している事は誰も知らない。

《終》


◆あとがき◆

ぎゃーっ、同盟サイドのお話だった筈なのに、殆ど帝国色に染まってしまった――――――――!

も、森沢しゃん、ごめんなさい。

アッテンもあんまりイジれてないです(;_;)

ホントにアッテン辛いもの苦手なのかなー(笑)

こ、こんなものでよければご笑納下さい…ホ

2009/07/04


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