WJリクエスト

□カリスマ美容師
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総一郎
「どうした竜崎…今日は殊の他寝癖が酷いぞ?」


「…いつの間にか寝てしまって、寄りかかっていた壁と柱との境目で髪が直角に癖がついてしまいました…
すみません、そこの小さい扉の中にブラシと整髪料が入っているので直して貰えませんか?」


Lの頼みに総一郎は困り果ててしまった。何せ彼の手先は余り器用ではない。
ブラシであっちを梳きこっちを梳かししてみたがどうにも巧く纏まらない。


総一郎
「すまん竜崎、私にこの手の作業は向いてない様だ。
手先の器用なライトに任せても構わないだろうか?」


「えっ!?いいの父さん、竜崎の髪に触って…」


「う…月君、邪モード全開なんですけど…
でもこのままではみっともないし…仕方ない、お願いします」


総一郎もLも他人に髪をいじられるのは甚だ不本意だったが、確かにLの髪はみっともなく跳ねていた。風呂上がりの生乾きの状態で出来たこの寝癖…一度癖がついたら最後、Lの髪は一筋縄ではいかない頑強さを持っていた。



「まぁ僕にかかればこれ位…しかし見事な直角だな(汗)分度器持って来ようか?(笑)」

などと冗談を云い乍ら髪を梳き始めて30分…
右腕を痙攣させ、床に転がる月の姿が見られた。しかしLの髪は跳ねたまま…



「ごめん、ギブ…
ちょ…右腕ぱんぱんに張ってるんだけど!
一体どう云う寝癖なのさ!」

松田
「えー?月君、直せなかったの?
じゃあ僕の出番でしょ♪」

アイバー
「何を云ってるんだ、俺が巧みなのは言葉だけじゃない。
相手を騙す為に数々の技術を取得したんだ、当然美容師免許も持ってるぜ?」

ウエディ
「資格さえあればいいってものでもないわ。手先の器用さなら私に任せて頂戴」

模木
「月君の敗因はスタミナ不足ですよ。スタミナなら自分、自信あります」


珍しく無口な模木も参戦する。
皆Lの御髪に触れるとなると目の色が違う、我こそはと手に手にドライヤーや整髪料を握りLを取り囲んだ。



「皆さん…私の髪で遊んでいるでしょう?
何ですか、寄って集って!」

ウエディ
「何なのこの直角、全然伸びないわ」

松田
「余りブラシかけると摩擦で髪が痛んじゃいますよ、優しく優しく…」


皆仕事も忘れてLの髪と夢中で格闘している。
寝癖を直すと云うより姫の御髪の手触りを楽しんでいると云った方が的確な表現で、実際寝癖は一向に直らなかった。

アイバー
「くそっ、寝癖用のいいウォータープルーフの整髪料があるんだが日本じゃ手に入らないんだ」

松田
「でもホラ、直角から80度位にはなりましたよ?」

ウエディ
「ホントに分度器持って来てるんじゃないわよ…(呆)」


皆がLのハンパない癖っ毛に悪戦苦闘していると、いつも昼過ぎまで寝ているミサが珍しく早く起きてきた。そしてLの形状記憶合金並の寝癖に目を丸くする。

ミサ
「ちょっ、ナニそれぇ!どうやったら髪にそんな鋭利な癖がつくの(汗)
もう、ミサに任せて!後輩の髪セットしたりで慣れてるから。
はい、ブラシよこして」


云うなりアイバーの手からブラシをもぎ取ると、ミサは手慣れたブラシ捌きでLの髪を整え始めた。
整髪料も使わず水で髪をさくさく濡らし乍ら僅か15分程で見事にセットし終えた。

松田
「おぉっ、凄っ!バッチリすね、流石ミサミサ」

ミサ
「まぁ、当然ね…て、ちょっと待って…?」

ミサが一カ所まだ跳ねているところを見つけてちょっと摘んでみると『びよん!』と音でも出そうな勢いで折角整えた髪がまた全て元に戻ってしまった。

ミサ
「嘘っ!有り得ない!!」

松田
「あぁっ、また見事な直角にっっ!」

アイバー
「ふ…振り出しに戻る…?」


「その割には皆さん嬉しそうですね…
ひょっとして遊んでるんじゃないですか?私の髪でっ!」


Lの一喝にミサ以外の全員がしゅんとなる。
ミサは至って真面目に自分の技術を披露したいだけだが、後の連中はただただ姫の御髪に触れる名誉を味わいたいが為であるから何も云い返せない。


「もういいです…専属カリスマ美容師に頼みますから」


そう云って立ち上がるとLは徐にパソコン画面に向かって話し掛けた。
美容師を呼ぶにもワタリを通すとは流石は世界の三大探偵が一人(実は三人共同一人物だが)である…と思いきや。



「ワタリ…やはりお前でないと私の髪は御し切れないらしい。
30分後いつもの場所に行くから髪のセットを頼む」

ワタリ
『分かりました、ではお待ちしてます』


そんなやり取りをした後Lは何事もなかった様な顔で髪を鋭利に跳ねさせたまま捜査本部を出て行った。


松田
「ワタリって…美容師免許持ってたんスか?」

総一郎
「いや…聞いた事がないが…」

アイバー
「カリスマ美容師ってのは言葉のあやか喩えだろう?
でも俺だって…免許持ってるのに…本当にワタリにアレを直せるのか?」

一時間程してLがいつもの様にビシッと髪を決め、しかし颯爽とは云い難い猫背で戻って来た。
しっかり決まった髪を見て皆感嘆の溜息を漏らす。


総一郎
「ほう…ワタリの腕も大したものだ」

アイバー
「くっ…完敗だ…免許さえ持っていればいいと云うものではないって事か」


「そりゃあワタリは子供の頃からの付き合いですから私の髪質は知り尽くしています」


Lの言葉にふと嫉妬を覚える総一郎。ベッドの中で何度となく梳いて指に絡ませたこの髪の質までを熟知するに至らなかった自分が悔しい。
今更時を遡る事は叶わぬがLとの付き合いの長いワタリに嫉妬するなと云う方が無理な話である。
つい悔しさのあまりLの髪を入念にチェックしてしまった。

総一郎
「ん?竜崎、同じ所がまた跳ねている様だが…」


「え?まだ跳ねてます?」


慌てて髪に手を回すL。跳ねている箇所を見つけ、その束を掴んだ途端…

びよん!

総一郎
「げ(汗)」


「え?何ですか何ですか?」

総一郎
「元の…木阿弥?」


「えぇっ、またですかぁ!?」


Lの髪はものの見事に直角を再現して見せた。



「そんな…ワタリにやらせても駄目だなんて!」

総一郎
「これなら最初から風呂で洗い直した方が早かったんじゃないか?」


「総一郎さんもそう思います…?」

アイバー
「お、俺達の苦労は!?」


つまりは三時間もの時間を無駄に消耗しただけと云う事だ。
だが総一郎だけはワタリと対等な位置迄辿り着いた気になって少し機嫌を回復した。

総一郎
「仕方ない、一緒に風呂に入るか?
私が髪を洗ってやろう」


「本当ですか?(嬉)」


「結局父さんの一人勝ちかよ!」


文句を云う捜査員達を後目に総一郎は嬉々としてLを浴室に連れて行く。
一度癖が取れてしまえばこちらのもの、満足げな顔をして浴室から出て来るとせっせとLの髪を整え始めた。


総一郎
「よし、今度こそ綺麗になったぞ?」

「はい総一郎さん、何処を引っ張ってももう跳ねません(悦)」


散々捜査員達に髪を弄られたLだったが、最後は愛しい総一郎と共に風呂に入り、髪まで整えて貰ってご満悦な様子だ。
勿論総一郎もこの上ない満足感を噛み締めている。




しかし一見一人勝ちした様に見える総一郎だったが…
実はワタリが気を遣って態とLの髪が跳ねる様にセットしたと迄は気付いていなかった…

勝ったつもりでもまだまだワタリの域には達せていない無邪気な総一郎なのである。
《終》




◆あとがき◆

眞樹様のリクの捜査員達に髪を弄ばれるLは如何だったでしょうか。
今回も楽しく一気に書かせて頂きました。
Lの髪は一度癖がついたらちょっとやそっとじゃ直らないんじゃないだろうかと常日頃から思っていたので、眞樹様のリクはもって来いのシチュエーションでした。眞樹様、本当に有り難う!
こんなものでも少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
改めて眞樹様、リクエスト有り難う御座居ました。
2005/01/03

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