WJリクエスト
□うちのママが云う事には
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『母さんね、お父さんの強引なところが好きになって結婚したのよ。
お前も男の子なら好きな子が出来たら猛然とアタックしなきゃダメよ』
とは捜査本部一番の若手警察官・松田の母の言葉である。
今まさにLに入れあげている松田はこの母の言葉を思い出し、今までの腑甲斐ない自分を反省した。
松田
「よしっ、恋に遠慮は無用!
今は局長にぞっこんかも知れないけど僕だって男だ、いいとこ見せればきっと竜崎だって…!」
松田は決意も新たに捜査本部の扉を開いた。
L
「あ、松井さん。
お早う御座居ます、今日は随分早いですね」
松田
「ええ、やる気って云うんですか?
偽キラから何かヒントが得られるかもって思ったら俄然燃えちゃって…」
相沢
「ほー、そりゃいい心構えだな」
松田
「!!
あいざ…相原さん!?」
朝早く来てLと二人きりになればそれだけチャンスも増える、そう踏んで定時より一時間も早く来たのに先輩の相沢は一枚上手だった。
松田
(あ、相沢さん一体何時に来てるんだろ…よ、よし、明日はもう一時間早く…)
総一郎
「お早う、今朝はまた随分早く揃ったな」
松田は唖然とした。
恋のライバル・夜神総一郎が愛しいLの寝室から出て来たのでは当然だろう。
松田
「き、局長…また泊まったんですか?」
総一郎
「ん?ああ、夕べは帰るつもりだったんだが竜崎がどうしてもと云うんでな」
泊まったと云うだけでも凹むのに総一郎が追い打ちをかける様な事を云う。
松田
(ま、負けるもんか…今日の俺様はちょっと違うって事を見せつけてやるぜ…)
ショックのあまりキャラが変わっている事に自分では気付いていない。
松田
(姑息な手より正々堂々仕事で差をつけてやる!
僕が一番若いんだ、その分頭だって柔軟なん…)
月
「お早ー、今日の一講目休講になったから来ちゃったよ」
L
「あ、月君、助かります」
もっと若くてもっと柔軟な頭の持ち主が来てしまった…
これで状況は松田に圧倒的に不利になった。
松田
(まずい…まずいぞ。局長は僕より経験と勘に優れてるし、相沢さんには行動力では到底敵わない。月君に至っては若さもルックスも頭のよさも比べる事自体間違ってる。ぼ、僕がこの三人より優れてるモノって何だよ!?)
総一郎
「松井、手が止まってるぞ」
いいところを見せるどころか叱られてしまった…
松田
(え〜い、こうなったらあれこれ考えてても仕方がない!ストレートに正面からアタックだ!!)
松田は立ち上がった。
松田
「りゅ…」
相沢
「竜崎すんまそん、PC画面英語でメッセージ出てるんスよ。
何て書いてあるんスかね?」
ガタッ
松田はそのまま座り直してしまった。
松田
(あーもー、タイミング悪いな…よし、今度こそ)
ガタッ
松田
「りゅうざ」
月
「あ゛ーーっ!!
折角偽キラの動向を日を追って表にしてたのにフ、フリーズぅ!?」
ガタッ
相沢
「松井…お前さっきから何立ったり座ったりしてるんだ?」
松田
「いえ…なんでもないです…」
運命の女神は悉く松田の邪魔をした…
しかしここでめげる今日の松田ではない。
レポート用紙を一枚剥がすと熱烈なラブレターを書き始めた。
松田
(よし…完璧だ!僕だって伊達に高校時代文芸部に名前を貸してた訳じゃない)
あくまで部員水増しの為、名を貸していただけである。
松田
「竜崎、これ…読んで下さい」
松田はトイレに行く振りをして手紙をLに手渡した。
しかしトイレから戻ってみると…
松田
「て…添削されてる…」
誤字脱字重複文、それに言葉の使い方が間違っていると赤ペンで真っ赤になるほど直されて返って来た。
更に…
『松井さんなら恋愛小説より推理物書いた方が向いてるんじゃないですか?』
投稿作品だと思われてる…
一瞬挫けそうになったが父の強引さに惚れた母の言葉が脳裏に浮かぶ。
強引…こうなったら最後の手段とばかりにいきり立つ。
竜崎の唇を奪ってしまうつもりだ。
松田
「竜崎っ好きだーーーーっっ!!」
がばっ
L
「!?」
ずだーーーん!
松田の体は宙を舞い、そして床に落ちた。
松田
「?????」
総一郎
「何をとち狂ってるんだ、お前は!」
どうやら総一郎に投げ飛ばされた様である。
刑事たるもの柔道は必修科目だが、つい先日心臓発作で倒れたばかりのやつれた上司に近付かれた事さえ気付かず投げ飛ばされるとは…
もはや松田のプライドはズタズタだった。
松田
「母さん…人気キャラだと思ってたのに、実は一番地味なキャラだったみたいです僕…
父さんみたいに強引にはなれませんでした…」
窓際で黄昏れる松田に以前の自信は伺えなくなっていた。
《終》
◆あとがき◆
リクエストの《頑張る松田に降り懸かる邪魔者達》如何でしたでしょうか。
ご希望通りのものが書けているといいんですが。
まだら様、リクエスト有り難う御座居ました。