WJ作品

□デスノ連載_こんな生活も悪くない
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【序章】

メロが命を落としてから10日経つ


その後私はキラを打ち負かし

世界には平穏と平和が訪れたけど

私の心には暗く暗雲が立ち込め

平穏・平和には縁遠い


それでも私は気丈に振る舞った

まるで平気な顔をして

キラと対峙する筈だった

筈だったが…

メロを想い少しだけ感情的になった


そしてその後


泣いて


泣いて


泣いて


大切なあの人を弔った

たった独りで―――



《序  章》


東京―――
私は自分の為に小さな家を買った。

ここはLが命を落とした土地―――
メロが命を落とした土地―――

だから留まりたくはなかった。
だから離れる事は出来なかった。

大切な人を護れなかった弱い自分を戒める為、この地から離れる訳にはいかなかった。

焼け跡に残っていたと云う身元不明の遺体…

私は確認する事さえ出来なかった。

盗み出そうとも考えたが、幾ら調べても何処に安置されているのか分からなかった。

メロ…あなたは今何処に居るのですか?
Lの傍に居ますか?

せめて躯だけでも取り返したかったのに…


小さな庭の片隅に小さな墓をふたつ作った。
ひとつはLの。
ひとつはあなた。

覚えてますか?
私達がまだ小さかった頃、院で飼ってた子猫が死んで、こうして二人でお墓を作りましたね。

後からこっそり子猫なんぞを部屋で飼っていたのがバレて、二人随分叱られましたね。

あの時と同じ程度の墓しか用意出来ない私を許して下さい。

ここにLの躯はないけど。
ここにあなたの躯はないけど。

きっとこころは共にあるのでしょうね。

待っていて下さい。
元々身体の丈夫な方ではない。
そんなに待たせずに私もそちらに行けると思いますよ。
そうしたら今度は喧嘩せずに仲良くやりましょう。
Lも見ていますしね。
きっと仲良くやりましょう…


レスター指揮官
「ニアはどうしてもこの地を離れたくない様だな。
Lを継ぐ者として事件を解決する気はないのだろうか?」

ハル
「どうかしらね。
でも私達、解雇の通知も出されてないわ。
落ち着くまではまだ何もしたくはないのでしょう」

ジェバンニ
「続けるかやめるかはその時のニアの気持ち次第って事か。
鬱ぎ込んであの家に隠りっぱなしにならなければいいが…」


あれ以来時々リドナーが気にして見舞いに来てくれる。
見舞いと云っても病気じゃないんだ。
気持ちは分かるが今はそっとしていて欲しい。

いつまでも鬱ぎ込んでいてはLにもメロにも笑われる。

いずれ仕事は始めるから、喪に服している間くらいは独りにさせて欲しい。


今日もいい天気だ。

こんな日はメロがあの独特の皮肉な笑みを浮かべて

『よう』

なんて…

『シケた面してんな』

なんて…片手を上げて逢いに来てくれる…そんな気さえする。

ほら、私の後ろから格子を開けて今にでも…

「よ…よう」

「?」


聞き覚えのない女性の声に驚いて振り向くと、そこにはフードを深々と被った小柄な女性。
いや、少女と云った方がいいのか。

顔は見えないがどうも向こうは私を知っているらしく、馴れ馴れしくも格子を開けて入って来た。


「シケた面してんな…
中入っていいか?」

「(口の悪い女の子だ)
もう入っているでしょう。
誰ですか?
リンダ?パッツィ?メリィルゥ?
院の子なんでしょう?」

「いや…中にってのは家の中にってこった。
誰にも見られたくない」


人の質問には答えない、態度は不躾だ…全くこの子は何を考えて…
でもこの口のきき方、何処かで…


「いいから中へ上げろよ!
誰にも見られたくないって云ってんだろ!!」

「分かりました…どうぞ」


素性が知れないとは云え相手は女だ。
例え凶器を持っていたとしても取り押さえる自信はある。
それより私は聞き覚えのある彼女の口のきき方に、どうしても確かめたい事があって入室を許可した。


「戸締まりよし、カーテンも雨戸も閉めました。
勿論この家で盗撮・盗聴の心配はありません。
さあ、誰なんです?名無しの権兵衛さん」

「………い、いいか、驚くなよ…?」

「勿体ぶらなくたって驚く時は驚くし、驚かない時は驚きません?」


そう云うと意を決した様に少女は恐る恐るフードを取り払う。
私の想像が正しければ…そこから下から現れるのは…


「金髪…顔の傷…
やはり…メロでしたか。
でも…あなた一体どうしたんです?その身体は…
それにあなたは死んだものとばかり思っていましたが」

「ちっ、相変わらず冷静な奴だな。
少しは驚けよ!」

「あなたが驚くなと云った」

「いちいち揚げ足とんなっ!!」


冷静さを装っているだけで、私の心臓は今にも止まってしまいそうだ。
確かに目の前に居るのは少女の姿をしているのに、何処もかしこもメロなのだ。
メロをそのまま女性にした様な…若しくは元々女性だったのを隠していたかの様な。

しかしあの死神のノートに関わったのだ、何が起きても不思議じゃない。


「兎に角説明して下さい。
あなたがこうなった経緯を」

「ニア…お前死神には逢ったか?」

「ええ、リュークと名乗る死神に逢いました」

「シドウじゃないのか…」

「シドウ?」


メロの話は概ねこうだった。
死神は数々の掟に従い人間と取引を行う事が出来る。
ノートの所有権を放棄する事により、ノートに関わる一切の記憶を消去する事。
残り寿命半分と引き替えに、顔を見ただけで名前と寿命が分かる死神の眼を与える事。
そして…
残り寿命1/3と引き替えに一度だけデスノートの効力から身を守る事。
ただしこの取引には相当なリスクが伴うらしい。


「兎に角身体に異変が起きるが、前例が殆どないから何が起こるか分からないって云われたんだ。
過去には赤ん坊になっちまった奴、老人になっちまった奴、人種が変わっちまった奴なんてのがいたらしいが…ま、まさか性別が変わるなんて…」

「死んだ方がましだった?」

「ああ、いっそな」

「馬鹿な事を云わないで下さい!!」


私が声を荒げたせいで、メロは少々驚いた様だった。
びくりと体を竦ませる。
そして私でも大きな声が出せるのかとばかりにまじまじと顔を見た。

だからはっきり云ってやった。
メロを失って私がどれだけ絶望したかを。

だからはっきり云ってやりましたとも。
例えどんな姿になっても生きていてくれた事にどれだけ感謝したかを。


「私は…あなたが存在していてくれないと冷静ではいられないんです。
あなたがいないとあなたの分まで感情的になってしまう」

「先に酔われると酔えないってヤツか?
云った筈だ、俺はお前の道具じゃない!」

「それじゃどうしてここへ来たんです?
死んだ事にしておけば、私に利用される事もなかったのに」

「そ…れは…
ほ、他に頼れる奴がいなかったから…」

「何故です?
あなたの力量なら0からのスタートでも後ろ盾になってくれる人間や組織なんて幾らでも見つけられるでしょう」

「そっ、そのつもりだったけど、この躰じゃそうはいかなかったんだよっ!!」

「………はい?」


それは…躰を要求されたと云う事か…?
何故だろう…今確かに私の中に怒りの感情が湧き出した。

メロを食い物にしようとした男達に対しての怒りの感情が…

まるでそれは…

その男達に嫉妬をしている様じゃないか…


「ニ…ア……?」

「あなたが私などに頼ろうと思うなど、相当な覚悟があったのだと思います。
分かりました…あなたを保護します。
信じて貰えないかも知れませんが、私には本当にあなたが必要なんです。
あなたが生きてさえいてくれるのなら何でもしましょう」

「必要…利用されてると思うと癪に障るがな、本当に頼る処がないんだ。
利用しているのはお互い様だと思って我慢してやるよ。
この躰も忌々しいが、わざわざ自分で命を絶つ様な真似もしないから安心しろ」


彼(彼女?)は私が自分の感情のコントロールの為に、自分の存在を必要だと思っているらしい。
実際メロは今も感情のコントロールに役立っている。
いっそ後を追おうかとすら思っていた私に安堵と、平穏と、冷静さと、そして幸福をもたらしてくれた。


でもそんな事じゃない…そんな事じゃないんだ。
生きてさえいてくれれば私など幸福でなくとも構わないんだ。
メロが幸せになってくれるのなら、私など平穏でなくとも…


ああ、そうか。

私はメロを愛していたのだ。

女性になったから急にと云うのではない。
元から彼を人として愛していたのだ。

自分よりも。


Lが死んだと聞かされた時も彼がいてくれたから堪えられた。
彼はずっと私の心の支えだった。

足りないものを補うかの様に存在する私の半身…私は彼なくしては生きられないのだ。


「全く…野郎共のあのねっとりとした視線…
背筋が寒くなるとはあの事だ。
その点お前は俺が男と知っているから邪な目線では見て来ない。
やっと息がつけるぜ」

「分かりませんよ?
私も男ですから」

「…………………」

「冗談です」


少し傷つきました。
メロのあの視線。

私には性欲なんてものが存在してないと思ってませんか?
あんな間の抜けた顔をしなくたって…

「で、俺はどの部屋を使っていいんだ?」

「どの…と云うほどの部屋数はありませんよ。
空いてる部屋はひとつしかありません。
ですが家具も何もないので、取り敢えず私の寝室で休んで下さい。
あなたのベッドを買うまで私はリビングのソファで休みます」

「随分優しいじゃないか。
院にいた頃は女相手でも容赦なかった癖に」

「あなただからですよ…」

「あ?何か云ったか?」

「いえ、何も?」


女性物の躰では一層気を遣う事が増えるだろうけど…
昔の様には接する事は出来ないけど…

こんな…
こんな生活も悪くない…
《続》



◆あとがき◆
シリーズ連載です(笑)
いやぁ〜、続いちゃうんですよ、これが。
しかもパラレル気味?パラレル気味?

早く女体化メロちゅを動かしたいです♪
と云ってもSSだし、口調はメロちゅのまんまだからあんまし女体女体してないかも…ソ

あ〜、でも早く続き書きたいなイ
2006/04/16
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