ワールドトリガー

□おとなだもの
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「外に置いてあるアンティークなスクーターはなんだ?
昨日まではなかったと思うが」

「(スクーターなんて言葉を覚えた上に、あれがアンティークだって分かるんだ…)
ああ、昨夜エネドラが持って来た。
どうしてもローマの休日ごっこがしたいんだってさ」

「エネドラ…?
うっかりオレが張り合ってしまったばっかりに、再起不能になったんじゃなかったのか?」

「いや、なんか誤解だったらしいよ?
今は寺島さんとラブラブなんだと」

「何!?
そ、それではオレの唯一のアドバンテージがなくなってしまうではないか…」

「…なんで?」

「だ…だってヨータローはまだ未成年だから…成人するまでとは言わないまでも、この国で男子の結婚が認められている18歳より前に関係を持ったら、オレは犯罪者になってしまう…
しかしあちらはふたりとも成人しているのだからつまりその…」

(相変わらず真面目なヤツ…)





【おとなだもの】





「あ?
オレが雷蔵とどこまでいってるかだと?」

「いや、そこまであからさまに聞いてないけど。
大体ついこないだまでフラれたっつって、この世の終わりみたいな顔してたじゃん。
なんでいきなりそんなに急進展があったのさ」

「あ、あー…いや…
そりゃオレの口からは説明しにくいな」

「なんだい、空閑くん。
三雲くんとうまく進展してないのかい」

「えっ、いや、誰もそんな事は…」

「隠さない隠さない。
どうせ分かってないのは三雲くんだけだよ。
で?
オレらの馴れ初めだっけ?」

「だって一回フラれたものをそんなにすぐ覆せるもんなの?
エネドラがどうやって巻き返したのかは興味あるよ」

「テメェは絶対あのメガネにゃフラれねぇから、巻き返し例なんざ必要ねぇだろ」

「あー、はいはい、どうしても他人には知られたくないハズカシイ巻き返しの仕方だったのね、分かった」

「誰もんなこた言ってねぇだろ!」

「まあオレが勝手にからかわれてるもんだと思って、最初相手にしなかったんだよね。
だってコイツ性格の悪さは顔に出てるけど、黙ってりゃ美形枠だろ?」

「…オイ」

「引き換えオレはやればデキる子だけど、容姿は冴えないおデブ」

「そこに自画自賛入れるんだ…」

「告られたってそりゃあ最初は馬鹿にしてるだろって思うよな?」

「まあエネドラの性格考えたらね」

「オイ!」

「でもあの落ち込みっぷりを見せられたら、こりゃあまさか本気かって思うようになって」

「ふむ」

「試しに押し倒したらあっさり」

「え、エネドラの方がネコちゃんなのか!?」

「ネコちゃんって言うな!!///」

「本人は逆のつもりだったらしいけど、エネドラが今使ってるトリオン体はオレが作ったモデルなんでね。
オレが自分の体力で押し負けるスペックでなんて作る訳ないでしょ、そりゃ(笑)」

「…て事はこのモデル作った時点で既に…?」

「…え?」

「え、だってよ…そう言う事じゃないのか、雷蔵…?」

「え、いや、オレは単におまえが初めてここ来た時みたいに暴れても、取り押さえられるようにって…」

「………………………ですよねー!」

「(あ、今ちょっと傷ついた)
いいじゃん、今好き合ってるなら。
贅沢だよ。
おれなんか多分一生このまんまだよ」

「いやいやいや、三雲くんがいくら鈍いって言ったって、なんぼなんでも一生気づかないとかそりゃないだろ」

「あるよ。
気づいたら尚更だよ。
アイツ真面目だもんな。
どーせおれの将来とか立場とか人の目とか気にしちゃって、ぼくがそうするべきだと思ったからだーーーかなんか言っちゃって絶対受け入れないね。
おれがアイツを好きでも、アイツがおれを好きでもそう言うの関係ないんだよ。
ヨノナカのジョーシキに則って生きなきゃいけない真面目な優等生ですからあー!」

「ゆ、遊真、おい…」

「…だから言わないんだ、おれは。
アイツのこと困らせるだけだから。
ホントにみんなの言う通りアイツがおれのこと好きだったとしても、その事にアイツが気づかなきゃ傷つく事もないんだ」

『待て、ユーマ。
ユーマはオサムを見くびり過ぎではないのか?』

「レプリカ…?」

『ユーマがそれほどまでに慕っているものを、オサムはそれを簡単に無視出来るような人間なのか?
ユーマを傷つけても平気で常識を選ぶような男をユーマは好いているのか?
もう少し信じてやるべきだ、オサムのことを…そして自分のことを』

「い、今までいい顔しなかった癖に…なんだよ、突然」

『どうやら私は今まで自分の立場を弁えていなかったようだ。
ユーマのお目付役、それ以上でもそれ以下でもない。
父親を気取ったところで私がユーゴになれる筈もない。
ユーマはオサムとどうなりたいのか。
それを決めるのは私ではない…ユーマ自身だ』

「そ…そんなの…好きだからずっと傍にいたいに決まってるだろ。
隠さないで好きだって言いたいし、オサムにも好きになって欲しいに決まってる…!」

『ならばそう言うといい。
オサムを信じて』

「…エネドラ、寺島さん、すまん。
おれちょっと行ってオサムにコクってくるわ」

「え、あれ?
ちょ、おい…なんかオレら当て馬にされてね?」

「いや、悪い!
ヒュースがエネドラに先越されたんじゃないかって心配してたからつい話聞きに来ちゃったけど、出来ればヒュースにはナイショにしててやってよ。
ふたりがとっくにやっちゃってる事」

「やっちゃってる言うな!///」

「オサムー、待ってろよー!
絶対逃がさないからなー!」

「あっ、おい…なんだよ、チクショウ!」

「怒るな怒るな、悩める青年の背中押してやれたんだから」

「雷蔵は腹立たないのかよ?
当て馬だぞ、当て馬!」

「おとなだもの」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「すぐムキになって。
可愛いなあ、エネドラは」

「ごっ、誤魔化されねぇぞ!///
おっ、オレはなあ!」

「はいはい、じゃあ傷ついたエネドラを慰めるとしますか」

「ーーーーーーーーーーーーー!!///」





遊真はヒュースには黙っていろと言っておきながら、ヒュースの前で「あっ、エネドラに男同士のやり方聞いてくるんだった!」と言って自分でバラしてしまったのであった。
ヒュースが暫く再起不能になったのは言うまでもないーーー
《了》





実は遊真はレプリカがいい顔しないのもオサムにコクれないネックになっていました。
2020/07/07 椰子間らくだ


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