ワールドトリガー
□魅惑の日本メシ
1ページ/2ページ
「この世界に来て何が良かったって、まず食べ物だな」
「それな。
親父に連れられて近界中色々周ったけど、ここより食べ物の美味しいとこはなかったよ」
【魅惑の日本メシ】
「観光に来た外国人みたいなこと言うんだな。
ぼくも遠征の時は安全な国では近界食も食べたけど、別に不味いとは思わなかったが…」
「レーションばかりじゃ飽きるもんね。
オレは肉料理とか結構気に入ったやつがあったよ」
「ユズルはね、チキンのトマト煮みたいなやつばっか食べてたんですよ。
確かにあれ旨かったけど。
でもおれ近界の魚はちょっと苦手だったかも」
「オレも子供の頃からどうしても魚が苦手だったからな、虎太郎に限らずこちらの人間は向こうの魚など食えたものではないだろう。
玄界の魚は魚嫌いでも食べられるを通り越して、この世にはこんな旨いものが存在するのか!と言うレベルだった…ああ、あれは旨かった…!」
「アジの開きでそこまで感動出来るって、あんたも安上がりね。
でも生魚平気なのは意外だったわ」
「抵抗がなかった訳じゃない。
だがこの国に不味いものなどないと確信していたから、どんな味かと言う好奇心が勝った。
最初は不可思議な食感に戸惑ったが…」
「癖になるよな。
わさびがヤバい」
「そう、わさびが衝撃だった!
二重の意味で!」
「鼻痛くなるのにやめられないんだ、あれが」
「いや、こいつら生魚でも納豆でも何でも食うから助かるわ。
和食・洋食・中華、どれを出しても残さない」
「すみません、偏食児童で」
「うむ、クローニンはごはんに関しては苦労人であった」
「上手い…!
流石ヨータロー…+」
「(恋は盲目…)
なんで玉狛で一番若いヤツが一番ベタなオヤジギャグを放つかな」
「向こうじゃ基本平和な国ほどメシがウマかったけど、正直日本のはウマさが尋常じゃないよ。
初めてこっち来た時は日本どんだけ平和だよって思ったな」
「軍事国家の割にアフトクラトルの肉料理は結構定評があったのに、井の中の蛙とはこの事かと思い知らされた。
素材からしてそもそもレベルが違う」
「え、そうですか?
あのステーキみたいなやつ、めちゃめちゃソース旨かったですよ?」
「ああ、今回の遠征では歓迎を受けたんだっけ。
ぼくらが行った時は行ってすぐ戦闘になったからな、料理なんて食べてる暇はなかったよ。
ちょっと食べてみたかったな」
「一応おれ親父にメシの作り方も叩き込まれたから向こうの料理も作れるけど、こっちじゃ食材が手に入らないからなー」
「何!?
遊真は料理が出来るのか!?」
「そう言えば中学の時も遊真くん自分でお弁当作って持って来てたよね」
「あの頃はこっちの料理の作り方がよく分からんかったからかなりテキトーだったけど、玉狛の当番で少し習ったからカレーぐらいなら今でも作れるよ」
「み、玄界の料理まで作れるのか…!
くっ…ま、待っていてくれヨータロー、オレも修行して遊真ぐらいには作れるようになるから…!」
「お?
何ならおれが教えてやろうか?」
「いい気になるなよ、遊真…
自分は修に手料理を振る舞えると思って上から出ているがな、オレがすぐに追い越してやる…!」
(そこで何でぼくが出てくるんだ…)
(あ、ヒュースくんも修くんと遊真くんはラブいって思ってるんだ…)
「ほほう、お待ちしております」
(遊真くんも否定しないし…(ΦωΦ){ニヤリ)
「三雲先輩は空閑先輩の為に料理修行しないんですか?」
「ち、ちょっと待て、虎太郎!
どうして空閑限定なんだ!?」
((((((ええー、この人まだ自覚ないのおぉ?))))))
「なんだよ、おカネ持ちは男同士で一緒に暮らすのはヘンだって修が言うから、それは諦めたんだぞ?
せめておれの為に料理くらい作ってよ。
おれも修の為に作るからさ」
(えっ、えっ!?
遊真くんは修くんと一緒に暮らしたいの!?(ΦωΦ){ニヤリ)
(てゆうか修くんの手料理食べたいの!?
キラキラキラキラキラキラ…+)
「空閑まで何言い出すんだ!
大体お金持ちってなんだよ!?」
「だって修、とっきょしようりょうとか言うやつでおカネいっぱい貰ったんだろ?」
「入院費と卒業までの授業料払ったら幾らも残らなかったよ!
ボーダーのバイトも辞めて個人戦に時間回してるから、収入も激減したんだ。
今はとても部屋を借りるお金なんてないよ」
「だからそれは諦めたってば」
(そこで諦めんのかよ!!)
(今はって、一緒に住む事自体は抵抗ないんだ!?)
(空閑先輩も三雲先輩が【空閑先輩の為に】個人戦に出る時間を作ったんだって気付こうよ!!)
(((((((もう、見てるこっちが焦れったい!!)))))))
「???
遊真と修はそれだけ想い合っているのに、何故交際しないのだ?」
(((((((うわ、ハッキリ言っちゃった、コノヒトーーー!?)))))))
「「…男同士で交際???」」
「何言ってんの、ヒュース」
「何を言っているんだ、ヒュースは」
(((((((あ…駄目だ、こりゃ)))))))
「修の例の遠征艇使わないで向こうと行き来出来るシステム早く作ってよ。
物流ルートが確保出来れば、向こうの食材も輸入出来るようになるんだろ?」
「あー、あれおまえに逢う為に作ってたシステムだから、逢っちゃったらもうモチベーションだだ下がりって言うか…」
「何よ、おれの近界料理食べたくないの?」
「あー、少し上がってきたかも。
もうひと声」
「近界にも甘いものあるよ。
こっちのクッキーに似たやつ、おれ作れる」
「…よし、頑張りますか」
「やったね」
「ここまでいちゃついておきながらなんで無自覚なんだろう…」
「お子さまなのよ、要は」
「おれよりお子さまって、それヤバくない?」
「これからも焦れったい思いをさせられるんだろうなあ…」
進展しそうに見せかけて振り出しに戻る…それが修遊なのである。
《了》
はい、今回も次ページにおまけがあります。
2020/07/01 椰子間らくだ