ワールドトリガー

□ボーダー映画研究部へようこそA
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「オッス!
オラ、エネドラ。
おめぇにぴったりの映画を分析すっぞ」

「…なんだこのおいたわしい事になってるイキモノは」

「たはー、そんなに褒められたら照れっぞ、ヒュース」

「…褒めてない」

「エネドラは遂にアニメまで観るようになったのか…」





【ボーダー映画研究部へようこそA】





ヒュースの親善大使の仕事の一環として、一般市民向けにアフトクラトルの文化を披露してはと言う提案があり、その打ち合わせで本部に来た折の出来事である。

ヒュースがこちらの文化をあまりよく知らないので比較が難しいと言うと、それならいっそボーダー自体で文化祭を開催し、アフトクラトル共々広く一般にボーダーの活動内容も知って貰おうと言う企画になった。

両国のトリオン技術の差異についての展示、ボーダー隊員が利用している食堂を開放してのアフトクラトルの食文化の紹介、両国のトリオン体の違いと換装後のデモンストレーション等々。

更には学校の文化祭よろしく各隊の出し物や出店、果ては部やサークルの活動内容も紹介しようと相成って…そしてまさかのヒュースとエネドラの再会である。

エネドラが部活顧問として活動している事はおろか、人型のトリオン体まで与えられている事など知る由もないヒュースにしてみれば、想像だにしていなかった再会に身構える暇も与えられなかった。

テンション上がりまくりのエネドラのなりきり芸をまともに食らってしまったのだから、前述のおいたわしいイキモノ呼ばわりが口をついてもこれはヒュースを責められない。





「そうは言うがテメェも大概おいたわしい事になってるじゃねぇか、ヒュース。
なんだ、そのゴーグル帽子チビは。
それ手離すと死ぬのか?」

(あ、素に戻った)

「そうだ、オレは彼を手離すと呼吸が出来なくなって死ぬ」

(え、臆面もなく何言ってるのコノヒト?)

「そうか、オレの映画と同じだな」

(納得した!?)





不毛な会話が一通り終わったので本題に入ろう。

文化祭で上映するボーダーの活動紹介映像をエネドラが撮る事になったので、その内5分枠をアフトクラトルの紹介に充てようと言う話だ。

ヒュースを本部まで車で送り迎えをするだけの予定だった修も、その場に居合わせたばっかりにトリガーの仕組みの講義映像を撮られる羽目になった。

陽太郎もヒュースがしっかり抱いて離さない為、アフトクラトルの民族衣装モデル枠で登場する事をちゃっかり承諾している。





「そう言やあの元白髪チビはどうした?
今日は来てないのか?」

「空閑なら今日は教習所だけど…何か用があったのか?」

「どうせなら近界民枠でヒュースとフュージョン、ハッ!やらせようぜ。
こいつら雑魚でも合体すりゃあオレと対等に渡り合えるかも知れねぇからな!」

「それだと名前がヒューマになるからトリガーでの戦いより野球の方が強くなりそうだな」

「…大リーグボール養成ギブス(ぼそっ)」

(あ、巨人の星も観たんだ、エネドラ。
てゆうか年を誤魔化していないか、陽太郎)





お前もな、修。





「確かアイツのもうひとつの名前はクガだったな。
ヒューガだ、ヒューガ」

「じゃあ野球じゃなくてサッカーだ」

「…タイガーショット(ぼそっ)」

(キャプテン翼も観たのか…
てゆうかやっぱり年を誤魔化してるだろう、陽太郎)





修にはその科白、そっくりそのままお返ししよう。





「合体した後のトリオン体モデルはオレに任せろ。
半分黒髪、半分茶髪で…」

「あしゅら男爵みたいだな」

「…Dr.ヘル(ぼそっ)」

(マジンガーZまで観てるのか…
てゆうかこのくだりいつまで続けるんだ?)

「全戦全勝ヨータローの勝ち(くすっ)」

(あ…最後ヒュースが美味しいとこ持ってった)

「そんなアナタにぴったりな映画はコレ!
最後ヒロインが美味しいとこ全部持ってくハムナプトラ!」

「「「前振り長っ!!」」」





ちなみに修にはスティング、遊真にはアバターを勧めている。





「そんな訳で撮影は来週から始めるからな。
あ、おい、メガネ!
お前の講義風景は大学の方に撮りに行くから、撮影許可取っといてくれ。
それとヒュース、そのチビの衣装用意しとけよ。
出来れば女物もな」

「チビじゃない…168cmあるからかざまさんより10cmも大きい!」

「そうだ、ヨータローはまだ15歳だからこれからまだまだ伸びる!」

(ヒュースがムキになっている…
結局最終的に美味しいところを掻っ攫っていったのはエネドラだったか)

「エネドラなんかっ!
エネドラなんかカレシもいない癖に!」

「ぐはぁっ!!」




ばたり…

返事がない。

ただの屍のようだ。





(カレシ欲しいのかーーー!?)





エネドラが再起不能になった為、撮影は映画好きの荒船と那須にオファーがかかった。

しかし荒船の撮った映像はアフトクラトルの民族衣装紹介シーンでさえ無駄にアクティブな動きをつけられ、あまつさえ料理の紹介にはワイヤーアクションまでが入った。

那須の撮った映像はと言えばランク戦ログに叙情詩的なナレーションがつけられ、修の講義シーンなどセピアカラーに加工された挙句にBGMに仰げば尊しまで流されてしまったのであった。

忍田司令より無言の笑顔でボツを食らった事は言うまでもないーーー
《了》





ちなみにエネドラは先週寺島にフラれたばかりです。
2020/06/29 椰子間らくだ


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