ワールドトリガー

□慰安旅行〜観光編〜
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【慰安旅行〜観光編〜】





慰安旅行2日目の朝、昨夜修と遊真を肴に深夜まで散々飲み続けたにも関わらず、玉狛の面々は極めて元気はつらつオロナミンCだった。

彼らの肝臓は一体どのような構造なのか。






「あの人達のパワーって何処から湧いて出るんだよ…
一滴も呑んでない小南先輩やヒュースや陽太郎の方が疲れてるってどう言う事だ」

「そりゃ呑んでる奴の面倒見るのは呑んでない組だからな」

「あ…今日は空閑記憶あるんだ…?」

「昨夜は一杯飲みきってないもんよ。
それどころじゃなかったぜ、まったく…
オサムこそ大丈夫なのか?
いつもの倍迅さんに呑まされてたけど」

「途中から記憶ない…流石にこんなの初めてだよ」





それはそうだろう。

迅は最後の望みが潰えたのだから。

修が気になっていた事自体は自分でも認めていたが、それでも女の子のお尻の方が好きだと自負していたのに、此度の失恋で自覚していた以上に自分が修を想っていた事に気付いて相当ショックを受けたようだ。

どうせ自棄になるなら自分が呑んでくれればいいものを、あの男は自棄になるほど他人に呑ませたがる厄介な性癖なのである。




「なんかおまえの事を遊真って呼ぶ練習を強要された記憶は薄ぼんやりとはあるんだけど…」

「ああ、しおりちゃんとチカが鬼コーチと化してたな。
チカも珍しく昨夜はすげぇ呑んでた」

「あの千佳が…?」





酒に強い筈の修も流石に今日は食傷気味である。

しかし支部長を差し置いて千佳が一番元気なところを見ると、玉狛のアルコール最強クイーンは実は千佳なのではと言う疑惑まで湧いてくる。

実際には彼女のガソリンはアルコールではなく、修と遊真のラブなのだが。





「うん、修くんと遊真くんのラブがあれば一升瓶3本は堅いよ」

「うわっ、吃驚した!
こんなところで狙撃手スキル使うなよ。
ホント最近おまえ、東さん並みの気配の消し方だな」

「今日は修くん、遊真くんの事空閑って呼んだら一回につき一杯一気ね」

「ちょっ、千佳!」





すーっとやって来てすーっと消える。

これではいつ何処で見られているか分からない。

二晩連続でしこたま呑まされては堪ったものではないので、流石の修も観念せざるを得なかった。





「じゃ、じゃあ…今日は遊真って呼ぶからな」

「お、おう…」

「た、滝がきれいだな、遊真」

「そ、そうだな、オサム」

「と、鳥が鳴いてるな、遊真」

「そ、そうだな、オサム」

すーっ
「はい、いちいち吃らない」

「うわぁ、千佳!
だからそれヤメロ!!」

すーっ
「しおちゃん、一応修くん遊真って呼べてたよ」

「いちいち報告するな!!」

「レプリカ先生、撮れた?」

『解像度高めにしておいた』

「記録するな!!」





復帰してからの千佳は東さんに次ぐ隠密スキルと評されていたようだが、できればあのスキルはデバガメなどではなくチーム戦本番で発揮して欲しい。

いや、ふたりのいちゃいちゃをエサにすれば、メテオラ両攻撃で敵を一掃も辞さないかも知れない。

例え修と遊真も巻き添えにしたとしても、辺り一面焦土と化せば千佳ひとりでも玉狛第二は無敵になれる。

事によってはノーマルトリガーで天羽の黒トリガーとも対等に渡り合えるのではないだろうか。

まあ3人がB級に上がってからの話だが。





「はあ…何処から千佳が見てるか、何処からレプリカが撮影してるか分からないんじゃ、迂闊に手も繋げないじゃないか」

「え?(どきどきどきどきどきどきどきどき)
あ、あのさ、それ寧ろ見せた方がいいんじゃないか?
何にもありませんでしたじゃ、却ってペナルティ課されるっぽい」

「あ…そうか(どきどきどきどきどきどきどきどき)
じ、自分で言っておいてなんだけど、なんか恥ずかしいな、これ」





…小5か。

これが成人男子ふたりの恋か。

女子相手にはふたりとも経験済みの癖に、一体どれだけウブなら気が済むのか。





「ああ…修くんと遊真くんが手を…
尊い…もういつ死んでもいい…+」

「ああ…三雲さんと空閑さんを見つめる天取さんのアルカイックスマイル…
尊い…もういつ死んでもいい…+」

「こいつら似た者同士だよな…」

「あのふたりだけじゃなく、他のみんなは酒盛り始めちゃってるし。
おまえら観光しろよって感じだよね」





観光編と銘打って観光しない…

ああ、そうか。

肝硬変の誤字だったか。

ふたりの世界に浸る修と遊真を肴に、この日も玉狛の面々は酒に溺れ続けたのであったーーー
《了》





小5レベルの恋って事はあと2年ぐらい経たないとキスもしないって事ですかね…それはけしからん。
2020/07/20 椰子間らくだ


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