私に恋を教えて

□女子ならばやってみるのが粋なこと
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朝ももうすぐ終る昼に近づいてきた時間。
夜が本業のはずのスナックお登勢には、慌ただしく飯をかきこむ音が響いていた。





女子ならばやってみるのが粋なこと





「神楽様。女子会をご存知ですか」

今までものすごい勢いだった箸の動きが、無機質なからくりの声によりピタリと止んだ。
そうして顔の前の空になったどんぶりをカウンターに置くと、神楽は不思議そうに首をかしげた。

「知ってるヨ。でも、それがどうしたネ」

日頃そんなイマドキ女子の様なことをやりたがらないからくり_たまを不思議に思う。自分も何度か女子会をしたことがあるが、普通に会話をするようなもの。これといってたまが気になるような事を話すような会ではない。
少し考えた後。腹が満たされた訳ではないが神楽は箸をどんぶりの上に揃えた。


「女子会と言うものは女性の皆様が恋愛について語る会だと記録してあります。私には恋愛に関するデータが少なすぎるので皆様のお話を聞かせていただきたいのです」


あまり感情を感じない淡々とした声がまた少し不思議に感じた。
恋愛データか…
ドロドロ愛憎劇の昼ドラの再放送や、マミーからの教えで恋愛もののことは熟知している。しかし、いざ自分自身の色恋があったかと言えばない。
そう、いわゆる耳年増である。
恋愛マスター等と豪語したことはあったが、実質初心者なのに変わりはないのだ。


「フン、ダッタラワタシニ訊ケバイイジャナイ!恋愛経験豊富ナコノ、キャサリン様ガタックサン語ッテヤルヨ」

「なにいってるアルか。お前は女子じゃないネ。ただのババアネ」

「そうですね。それにキャサリン様のお話は全て詐欺に近いと思われます」

「ナンダトコノヤロー!?」


いつの間にかカウンターの奥から顔を出したキャサリンが神楽の横を陣取り、頬杖をついていた。
いやなものが目に入ったような顔をして神楽はカウンターから離れる。

お前が出てくると、読者は文が読みにくいネ!自重しやがれ老いぼれ化け猫が!

心の中で毒付いたあげく、ギャンギャン叫ぶキャサリンを無視し神楽はたまの方へ歩みより微笑んだ。


「たま、今日の夜は開けておくヨロシ」


そして2、3秒間があいてたまは頷いた。
きっと、私の言いたいことは察してくれたはずネ
たまの反応を確認し、まだ何かを訴え続けるキャサリンをスルーした神楽はスナックお登勢を後にした。
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