眩しくて仕方が無いから

□愛し君へ
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「ああ、やっぱり降ってきた、」
足を止め外を見やると曇り空から水滴が落ち始める。

こうなることはわかっていたのだ、だから今日はやめたらって言ったのに。
少しばかり抜けている女中仲間を思い浮かべ溜息を吐く。

おっと、なあんて惚けている場合では無かった、洗濯物を避難させねば。
わたしは誰も見ていない事をいい事に裸足で外へと駆け出した。

「まったくもう、だから言ったのに。」
当然ながらこの世界では天気予報など存在し無い、故にその日の天気を自分達で見極めなければなら無いのだ。

亜奈娘とやらはいるのに、奥州街道の交通情報しか教えてくれないなんて、なんて世界だ。



ああ、さっきから世界、世界と言っているのにはきちんとしたわけがある。


わたしはこの世界の人間ではない。
所謂異世界トリップという奴だ、

気が付いたら無一文である村の入り口に倒れていたそうで、身寄りのないわたしを哀れんだある老夫婦が家に置いてくれたのだ。

それがこの世界でのわたしの家族。まあ、この世にはもういないのだけれど。

ちなみに大事に育ててくれた義父は、なんと元伊達家の家臣だったそうで、働き口を探していたわたしを女中に召し抱えてくれるよう取り計らってくれた。

…正直好々爺を絵に描いたような穏やかな義父が、群雄割拠の戦国時代を生き抜いてきた歴戦の覇者だったとは思えず、当時は吃驚したのを覚えている。

「あーあ、洗濯のし直しか…」

まあ、そんな訳でわたしは今第二の人生を歩んでいる訳です。
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