空にかがやく星

□プロローグ
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プロローグ


たくさんの書物が並ぶ一室に、一人の男が佇んでいる。
窓は一つしかなく、日光は入ってきているものの、全体的に部屋は薄暗かった。
その男は、目を一瞬だけ細めると、手にしていた本を開き、ぶつぶつと読み始めた。


「……世界、テルカ・リュミレース。
大地と海が何処まで続くのか、知る人はいない。
なぜなら……世界にうごめく魔物たちに比べ、人はあまりにも弱い。
我々の住む街を守る結界。我々は己を守るためにその中で生きながらえている。

それを成す、核となる魔導器。
世界に満ちた根源たる、エアルを使い、魔導器は、火、水、光、繁栄に必要な、
ありとあらゆるものを、今日まで我々に与え続けてきた。

やがて、いつの日か、
結界の向こうに、凶暴な魔物が生息することも我々は忘れてしまうのだろう。

繁栄と成長を続ける世界……。
すべての人々のための平和、魔導器の恩恵により更なる発展を遂げていくだろう。


平和の礎である帝都ザーフィアスより願う『世界が穏やかであるように』―――。」


男がそこで読み終えると、ひらりと何かの紙が下に落ちる。
どうやら挟まれていたらしいそれは、小さく折りたたまれていた。
折りたたまれていた紙を広げ、中の内容に目をやり黙読するが、読んでいくにつれて、徐々に男の口角は上がっていく。

男はそのメモも読み終わると、それを懐に押し込み、足早にマントを翻し部屋から去っていった。
 

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