泥棒夢
□お互い様
1ページ/2ページ
ネオンの灯りが眩しい煌びやかな街の郊外に、そのバーはあった。
外の艶やかな雰囲気に疲れてしまった者の目を癒す、落ち着きのある内装。
店には1組の男女が、奥のテーブルを陣取っていた。
女の方は背中まであるこげ茶の髪に、黒のタイトなスカートスーツを合わせている。
一方男の方はというと…
この店の雰囲気に合わない、というか現代のファッションたるものにそぐわない、いかにも江戸の侍といった風貌をしていた。
「ねぇ…五エ門は何頼む?」
女が先に口を開いた。
「せ…拙者日本酒に致す」
男の方は五エ門というらしい。
この雰囲気に不慣れなのか、どこかオドオドしている。
「んー、たまには違うお酒も飲んでみたらどう?お酒には強いんでしょう?私はバレンシアにしようかしら」
「それはそうだが、拙者日本酒n…。」
「マスター、バレンシアとバーボンのストレートを1つずつお願い」
「なっ…!」
「かしこまりました」
そう言い残してカウンターに引っ込んだマスターを横目に、女は完膚なきまでに見事で爽やかな笑顔を五エ門に向けた。
「本当に雫殿は…」
「あら、殿は付けない約束よ?」
女の名は雫というらしい。