泥棒夢

□不意打ち
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穏やかな昼下がり。

今日は特にする事もなく、みんなでアジトのリビングに集まって、各々の作業をしていた。

ルパンはクロスワード。

次元はマグナムのメンテナンス。

五エ門は瞑想中。

不二子は彼女の宝石コレクションを満足そうに眺めている。

雫はというと……
読み飽きた本のページを指先で弄んでいた。

あまりに退屈すぎて、欠伸さえも止まってしまった。

こんなに気持ちの良い日なら、このまま寝てしまっても良いものだが、それも何だか勿体無いような気がするのだ。

ふと、雫の口角が持ち上がった。

(やっぱりこんな日には五エ門をいじるに限る!)

どういう過程を経てそのような考えに至ったのかは不明だが、思い立ったが吉日。

雫は五エ門に歩み寄った。

「五エ門〜、ヒマだから遊ぼうよ〜!」

まずは取り敢えず『声かけ作戦』

反応は……無い。

雫は少しムッとしたが、こんな事は想定内。

すぐ様次の作戦へ移った。

「ねぇ、ねぇってばあ〜。」

声色を甘めに調整して、後ろから抱きついた。

この時点でルパン、不二子は苦笑い。

次元に至っては

「気色悪ぃ。」

失礼な!!

次元には気色悪くても、五エ門にはちゃんと効くのは実証済み。

「次元、失礼ではないか。仮にも拙者雫と恋仲ゆえ。」

片目を開けた五エ門が口を開いた。

か、仮にもって…。

それに、今さらりと恥ずかしい事を……。

でもまぁ反応してくれたし、合格だよね?

「ねぇ、それより遊ぼ…。」

言い終わる前に、彼はまた瞑想に入ってしまった。

背後で次元の抑えた笑い声が聞こえる。

ほんっとイヤミな人!

ここまでしても遊べないのなら……。

ええい、もう最終手段だ!!

雫は深呼吸をすると、一気に五エ門に飛びかかった。

こちょこちょこちょこちょ…!

奥義『こしょばし』どうだ!

……無反応。

それもそのはず。

日頃から鍛錬している彼に、こしょばし如きで叶うわけがないのだ。

ついにルパンと不二子も笑い出した。

カチンときた雫は、もうヤケクソで五エ門を身体の隅々までくすぐりまくった。

「うおー!」

奇声を発しながら、もう無茶苦茶だった。

『え…きゃあっ…!」

刹那、洋服の袖を引っ張られて、雫は体勢を崩してしまった。

数秒後、目の前には見慣れた着物のどアップ。

背中から伝わってくる回された腕の感覚。

自分が五エ門に抱きしめられていることに気づいたのは、その時だった。

突如として身体の底から熱が昇ってくる。

速くなる鼓動。

周囲の視線。

その全てを敏感に感じ取ってしまう。

普段の素っ気ない五エ門にすっかり慣れてしまっていた雫は、それこそ放心状態になった。

「不意打ちだ。」
彼はそう言って高らかに笑った。
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