泥棒夢

□逆じゃねぇか
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今日、外は土砂降りの雨。
普段は世界中を飛び回っている大泥棒たちも、天気にだけは逆らえないようだ。ルパンはデートに、五エ門は修行に行ってしまった。
たった1人残った次元も、ソファに座って愛銃のメンテナンスをしていて会話は無い。あまりに退屈で、駄目元で彼に話しかけてみた。
「ねぇ次元〜、遊ぼう?」
「後で、な。」
即答すぎて面食らう。
「なっ……どうせ暇なんでしょ、良いじゃん!」
「暇とは失礼なヤツだ。コイツをメンテナンス出来るのは俺しかいねぇんだよ。」
そしてまた何かの布で銃を拭き始めた。
「もう良い!」
「ああ、そうしてくれ。」
一旦は引き下がったように見える雫だが、彼女はそこまで素直な性格でない。
そう、雫は知っているのだ。次元を絶対イエスと言わせる術を。
「ねぇ……。」
瞳を潤ませて上目遣いに。
「…あ?」
次元の態度が少し変化した。
「次元は私と銃、どっちが大切なの?」
よくドラマで見る、何て事のない言葉。如何に相手の気を引けるかがカギになる。ありったけの哀しみをこめて。
「そんなの雫に決まってるじゃねぇか。」
まるで呼吸でもするかのように、さらりと言ってのける次元。一瞬自分の方が怯んでしまった。
「じ、じゃあ銃よりも私に構ってよ!私だって次元に…愛されたいもん。」
最後の方は本気だった。本当に恥ずかしくて、自然と声が小さくなる。
そんな私を次元は驚いた様に見つめていたけれど、帽子のせいでその真意は読み取れなかった。
暫く彼と目を合わせていたが、結局折れたのは次元のほうだった。
「…ったく、しょうがねぇ。来な。」
彼はため息混じりにそう言って、軽く腕を広げた。

私は彼の胸に、これでもかという程思い切り飛び込んだ。そしてバランスを崩しかけた次元をそのまま押し倒して、強制的に口を塞いだ。
「普通は逆だろうが…。」

彼の声が、耳に響いた。
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