私の欠片

□始まりの章
1ページ/1ページ

私は孤独だった。
ずっと他人に仮面を被って生活してきた。
誰にだって本当の自分を隠していることがあるだろう。
それが過去の私だ。
私がSMと出会わなければ今の自分は居ない。
淫らなもう一人の自分。
本当の自分。
汚らわしく、世の中では異端者。
そんな人間。
そんな人間の一部をお見せしよう。

ーーーーーーーーーーーー

私とSMとの出会いは中学生のときだった。
その時、何をやっても上手くいかず、まわりのクラスメイトからはかっこうのイジメの餌食だった。
正直、まわりの人間なんてどうでもよかった。
いちいち気にしてたらきりがなかった。
そんなことよりも、一人で居るほうが気楽だった。
そんな私の唯一の息抜きは本だった。
私は本が好きだった。
本は裏切らない。
自分の世界を広げてくれる唯一の息抜きだった。

ーーーーーーーーーーー

今まで読んでいた本が読み終わったので、新しい本を買いに書店に立ち寄った。
そこで出会った。
私の運命のターニングポイントであると自分では思う。
当時は、官能小説なんて世の中のおじ様たちの読み物とバカにする節があった。
しかし、この本だけはなぜか私を惹きつけて離さなかった。
表紙からはそんな内容であるとはわからない。
不思議な本。
あらすじを読み、少しだけ中身を覗いた。

ーーーーーー
SMこそが真の愛
SMで愛を確かめ合うことこそ究極の愛の形
こうすることでしか愛を示すこと、確かめることができない
不器用な大人たち

そこに書かれていたのは生々しいけれど美しい
歪な「愛」の形だった

何かに導かれるようにレジに向かった
本と出会ってから僅か数分だった。
――――――――――――――
家に帰り、購入した本を開く
主人公の動向、相手の女性の反応
全てが脳内で映像化される。
醜いけれども美しい
大人の恋愛
私の身体を何かが這うような
むずむずするような
自分は何かを望んでいる
この行為をしてみたいと望んでいる・・・?
そうなのか?自分はこんな恥ずかしいことを?
本を読みながら赤面した

この本を読み始めて数十分後
読み終えてしまった
感動した
こんな愛が存在するのか?
だとしたら出会ってみたい
美しかった
羨ましかった
感想を挙げるとキリがない
それくらい当時の自分にはインパクトの大きいものになった。

いつかこんな出会いが…
と胸に密かな希望を抱いた
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ