【短編】現代(白澤×鬼灯)

□檻外の愛情
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身体を引き上げられるような、そんな感じがした。


「ッ!」


「わ、びっくりした!」


側で聞き慣れた声がした。


隣を見やれば、心配そうな表情を浮かべた白澤の姿があった。


「ぁ、れ・・・?」


「お前、すごい魘されてたぞ。・・・大丈夫か?」


「・・・はくたく、さん・・・?」


微かにぼやける視線の先で、自分の手が白澤の中指と人差し指を掴んでいるのが見えた。


「・・・・・・。」


「おい・・・鬼灯?」


・・・どうやら、長い長い夢を見ていたようだ。


・・・・・・昔の悪夢を、


「あ・・・、すみません。」


そして、未だに自分が白澤の指を掴んでいることに気付く。


「・・・ううん、いいんだよ。」


慌てて離そうとした手を制され、優しく握り込まれる。


・・・あの時と全く同じ暖かさが伝わってくる。


「・・・白澤さ、」


「・・・・・・まだ、怖い?」


「・・・!」


何もかもを見透かした瞳と視線が交わる。


「・・・覗きとは、感心できませんね。」


どうやら、この人は私が先ほどまで見ていたあの悪夢を全て見ていたらしい。


「ごめん・・・、でも・・・」


繋いだ手を引かれ、そのまま白澤の胸の中に抱き込まれる。


「・・・・・・。」


昔からよく知る薬の香りが鼻を擽る。


抗うことはせず、頭を預けて彼の胸にの真ん中に耳を押し当てる。


一定の間隔で心臓の拍を刻んでいる。


今まで知ることのなかった人の温もりと、鼓動。


「・・・お前は、あの狭い檻から抜け出せたじゃないか・・・僕が・・・あの時、見つけてあげたでしょう・・・?」


「ええ、分かってます。・・・あの時、私を見つけてくれたのは貴方です。そして、今側に居てくれているのも・・・貴方・・・。」


言っている内に声が震え、冷たい雫が頬を濡らす。


泣きたくなどないのに、涙が止まってくれない。
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