【短編】現代(白澤×鬼灯)

□返り咲き
1ページ/2ページ
















水を打ったように静まり返る私室。

「・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

『花は散るから美しい・・・そうは思わない?』

貴方の言葉と、

『・・・花が永遠に散ることの無い世界があったら・・・その方が良いと思いませんか?』

私の言葉、

この二つの言葉が脳裏から離れない。

私の大事な花・・・ええ、貴方のことです。

美しい貴方は・・・あの花飾りのように散ってしまった。

・・・やはり、貴方の言葉は間違いです。

散ってしまった貴方は、ただただ儚くて悲しいだけ。

こうなってしまったのは、私の所為なのに・・・、

彼は、神の力を失くしてしまった。

白澤は、これを『罰』だといって受け入れてしまった。

彼は永遠に美しく咲き続け、この世を照らすことが命だというのに・・・

「・・・・・・。」

私の隣で力無く座る白澤の手を取る。

「!」

「あぁ・・・驚かせてしまいましたね。」

驚いた様子の白澤に胸が締め上げられる。

安心させるように、その掌をさすってやる。

神の力と同時に視覚と聴覚も奪われてしまったのだ。

視覚を司る二つの瞳はおろか、七つの神瞳も闇に閉ざされてしまっている。

光も音も無い世界に放り込まれてしまったのだ。

「・・・白澤さん、もう少しですからね。明日、大王の所へ行きましょう。」

私には、ある考えがあった。

明日は、それを大王に打ち明けに行くのだ。

「どんな手を使ってでも・・・貴方を助けてみせます。」

胸の奥でつかえているものを吐き出すように溜め息をつく。

「・・・・・・今度は、私の番です。」

























翌日、

まだ朝日が薄い時間帯に部屋を出た。

白澤の手を引いて、大王が居る裁判の間を目指す。

「・・・大王、起きていらっしゃいますか?」

「・・・お入り。」

返事が聞こえたのと同時に、大きな扉を開け放つ。

彼は山のように積み上がっている書簡に目を通しているところだった。

「おはよう、鬼灯君。白澤君もね。」

「・・・・・・。」

「おはようございます。・・・すみません、白澤さんはまだ・・・。」

「・・・どうやら、時間が解決してくれる問題ではないようだね。」

「ええ。大王・・・、それで・・・」

「ああ、随分古い書まで読んでみたんだけど、手掛かりになるような事は載ってなかったよ。呪いの類でもないみたいだし・・・皆目、検討がつかない。」

「そう・・・ですか。実は、一つ考えがあるのですが聞いて頂けますか?」

「考え?」

「ええ・・・、この命を・・・私の活力である鬼の火を捧げます。」

「な、何だって・・・?」

大王の表情が歪んだ。

自分でも何を言っているのかは分かっている。

「天帝も手を下せない・・・ならば、私がやるまでです。いいえ、私でないといけないのです・・・
この人は幼い私を助けてくれた・・・だから、今度は・・・」

「本気で言ってるの?そんなことしたら、君が・・・」

「大王。私は、地獄の全ての王に認められた唯一の鬼神です。
一端の神の部類に入るのです。もう、彼を救うにはこの方法しかありません・・・」

ここまで堂々と振舞えるようになったのは、全て彼が側に居たからこそ。

貴方の為なら、何だってやります。

「いい加減にしなさい!君が・・・君が消えたらどうするつもりなの?!白澤君が助かっても、君が消えたら意味ないじゃないか!!」

広い部屋に大王の怒声が木霊する。

「・・・信じてください。貴方に仕え続けた私を・・・この通りです・・・。」

「・・・ッ!」

大王の表情がこれ以上ない程に苦痛で歪んでいく。

すみません・・・こんな弟子で。

でも、誰よりも大切な人をこのままにしておけない。

鬼火が燃え尽きて消えるのが怖いとか・・・

そんなことは思わない。

私の手で、闇に突き堕とした最愛の人を救い出したい。

誰でもない、この手で。

皮肉な話だと言われても構わない。

高貴な神を穢した代償を求めるならば・・・この命を持って、その代償を払おう。

私はそれだけのことをしたのだ。

「私は・・・このことをお伝えしに来ただけです。・・・それでは。」

憔悴しきった様子の大王をそのままに、白澤と共に裁判の間を後にした。

これでいいのだ。

あとは・・・・・・、

実行は今夜だ。

もうすぐ、もうすぐ・・・

早くその瞳で私を見て欲しい。

その唇で私の名を呼んで欲しい。

「白澤さん、貴方は必ず返り咲けます・・・私が、私が必ずそうしてみせます。

唯々、一心に白澤の回復を誓いながら夜が訪れるのを待った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ