【短編】現代(白澤×鬼灯)

□やっぱり嫌い
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父と母を亡くしてから千年の月日が流れた。

『私の代わりに、二人の墓をお願いできますか?』

『もちろん、任せてよ。』

あの日、神獣白澤に桃源郷に残した墓を頼んでから直ぐに、閻魔大王の下で働くことになった。

獄卒から官吏を経て、現在は補佐官の職に就いている。

その多忙さは異常で、2徹・3徹は当たり前。

閻魔大王が抱える雑務はもちろん、毎月の経理や人事を総括するのも補佐官の務め。

毎日が目まぐるしく、自由な時間がなかなか得られない。

おまけに、

「鬼灯様、桃源郷から白澤様がおいでです。」

「・・・分かりました。」

そう、白澤とはあの日出会った神のことだ。

彼はあの後暫くしてに宮殿を去り、桃源郷で薬局を開いている。

地獄には薬師が居ないため、彼の薬局から薬を卸しているのだ。

まさか、彼がこんなに大事な取引先になろうとは思ってもいなかった。

だが、私と彼には大きな溝があった。

それは・・・・・・

「ほらよ、言われた通り3日以内だ。文句ないだろ?」

乱雑に投げよこされた薬袋。

「やれば出来るじゃないですか。」

「その薬さ、本来は1週間掛けて作るもんなんだよ。お前のせいで3日間缶詰だ。」

大げさに溜め息を吐いて見せる白澤。

「普段仕事しない貴方には良い薬になったでしょう?」

「・・・ったく、お前のそう言う所が気に食わないんだよ。もういい、帰る。」

そう言って、踵を返して去って行った。

「・・・・・・。」

昔の彼からは想像もつかない言葉遣い。

彼は、白澤は・・・

私のことを綺麗さっぱり忘れていた。

彼と取引を始めたと言ったが、それは本当に最近のこと。

別れてからかれこれ四千年以上も経っていた。

白澤が地獄に来ることも無ければ、私が桃源郷に行くことも無かった。

両親の墓が気になっていたが、白澤のことをずっと信じていたから敢えて行かなかった。

これだけ間が空いてしまえば仕方が無いことだと思っていた。

でも、再会した彼を見て驚いた。

『ちぇっ、男かよ。』

『初めに言っとくけど、男は居るとしか認識してないから。仕事以外は関わらないでくれる?』

この有様だ。

私の知っている彼はもう居なかった。

あの賢く、優しい彼は一体どこへ行ってしまったのだろうか?

「・・・馬鹿馬鹿しい。」

もう四千年以上も前のことだ。

過去に囚われるなど、私らしくない。

あの男はあくまで取引相手に過ぎない。

この分では、墓のことなどとうの昔に忘れているだろう。

きっと荒れ放題に違いない。

仕事に区切りがついたら様子を見に行こう。

・・・・・・。

・・・・・・あれこれ考えるのはもう止めよう。

小さくなっていく彼の後姿をちらりと見てから、執務室へ戻った。






























「鬼灯様、昨日ご指摘頂いた箇所なのですが、これでよろしいでしょうか?」

「ええ、大丈夫です。このままお預かりしますね。ご苦労様です。」

「鬼灯様、EU地獄から官吏の方がお見えです。」

「分かりました、手が空いたら行きますので応接室で待ってもらってください。」

次から次へと仕事がやってくる。

おちおち休みも取れない。

私にはこれくらい目まぐるしい方が丁度良い。

そう・・・あの男のことを考える暇さえ無いくらいに。

「・・・ずき・・・」

「おい、鬼灯!」

「!!」

突然の声に驚く。

声の主は昔からよく知る二人のもの。

「烏頭さん、蓬さん。どうされました?」

「どうされました?じゃねぇよ。大王からお前を何とかしろって言われて来たんだ。」

「大王に?」

「うん、最近碌に寝ていないんだって?そんなんじゃ流石の鬼灯でも体壊すよ?」

「・・・すみません。」

「今日さ、衆合地獄の飲み屋取ってあるから行こうぜ。な!」

私の肩を力強くばしばし叩く烏頭さん。

それを見て心配そうに笑う蓬さん。

「ありがとうございます。定時に上がれるように調整しますね。」

「おう、遅れたら承知しねぇからな!」

私のことを本当に心配してくれる幼馴染と上司に緊張で張っていた肩が少し楽になったような気がした。

「さてさて、頑張って片付けなければ。」

手帳を開いてこの後の予定を再確認するのだった。


























あれから、面談は予定通りに終わり、溜まっていた仕事も大王が珍しく消化してくれたらしく、定時近くにはもう殆どやることは無くなっていた。

「鬼灯君、お疲れ様。上がって大丈夫だからね。」

「ありがとうございます。私が面談中に仕事を片付けてくださったようで・・・」

「いやいや、君ばかりに苦労は掛けられないからね。この後烏頭君達と飲むんだろう?あんまりハメを外さないようにね。」

「ええ、承知しています。ではお先に失礼いたします。」

「うん、また明日ね〜」

手を振る大王に会釈し、閻魔殿を出ると黒く重たい雲が目に入る。

「帰りあたりに一雨きそうですね・・・」

地獄は毎日曇りがちだが、更に淀んだ雲が空を覆っていた。

「・・・・・・。」

傘を持っていこうか悩んだが、そんなに遅くなる気もなかったのでそのまま衆合地獄へと向かった。
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