【短編】現代(白澤×鬼灯)

□失くして、手に入れて。
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「・・・・・・。」

目を覚ますと、自分は寝台の上に居た。

あれ・・・?

自分の部屋ではない、鬼灯の部屋だ。

身体を起こした瞬間、先までの記憶が戻ってくる。

頭が酷く痛む。

鬼灯は・・・?

部屋を見渡すと、書類に目を通す鬼灯を見つけた。

「ほ、ずき・・・」

僕の視線と声に気付いた鬼灯は、こちらを向いて微笑んだ。

それはそれは、可愛らしいものだった。

嗚呼、まだ鬼灯は戻って来ていないんだ・・・

穏やかな笑みを浮かべながら近付いてくる鬼灯に肩を落とす。

「ごめんね、僕・・・」

「漸くお目覚めですか?てっきり死んだかと思いましたよ。」

柔らかな表情には似つかわしくない冷たい声。

「え?」

「なんです、耳も遠くなりましたか?」

目の前に居た鬼灯は、僕のよく知った鬼灯だった。

会いたくて堪らなかった本物の鬼灯。

「お前・・・戻って・・・?」

「ええ、どこかの誰かさんが豚と罵って欲しいと言っていましたのでね。仕方なく戻ってきまし・・・っ?!」

寝台から飛び降りて、鬼灯の身体を抱き締める。

「良かった・・・!本当に・・・ごめん、ごめんね・・・・・・」

「・・・全く、まるで幼子のようですね。泣くことないでしょう?」

やや乱暴に着物の袖で涙を拭かれた。

「お前の気持ち何も知らないで・・・僕・・・」

「ええ、随分と踏みにじってくれたようで。」

言葉は些か冷たかったが、僕を見る瞳と手は温かかった。

「あの、僕・・・」

「おや、あの大告白をもう一度していただけるのですか?」

え・・・?

じゃあ、まさか・・・

「・・・聞こえてたの?その・・・」

罰の悪い僕に肩を竦める鬼灯。

「もちろん、だいぶ奥に閉じ込もった筈でしたのに・・・流石は神様、と言う所でしょうか・・・?」

そう言う鬼灯の頬は、微かに朱が差していた。

「・・・あんなんじゃ、足りない。直接お前に言わないと意味無いんだ・・・好きだよ・・・ずっと、ずっと前から好きだったんだ。」

黒い瞳を真っ直ぐに見据えて、自分の想いをぶつける。

「・・・白澤さん、貴方の私に対する態度と言葉・・・身が斬られる様に痛かった。いくら、偽りのものでも・・・辛かった。」

「・・・・・・本当にごめん。」

「でも、そんな貴方から目を離せなかった・・・本当は、隠さずに全部伝えたかった。・・・だけど、無理でした。」

俯く鬼灯の頬に手を掛けて、視線を絡める。

「ごめんね。全部、僕が間違ってたんだ。・・・もう隠さないで。・・・大事にするよ、ずっとずっと・・・」

「・・・!」

驚きに見開かれていた目は、次第に細まっていく。

「そうですね・・・・・・好きですよ、白澤さん。貴方も私と同じ気持ちだったなんて・・・嬉しいです。」

小さな照れ笑いを浮かべる鬼灯。

そんな鬼灯の頬に小さな音を立てて口付けた。

永遠に愛するという誓いを込めて。















抱き続ける僕への想いを隠す為に、己を闇に堕とした鬼灯。

そんな鬼灯を呼び戻したのは、全ての元凶である僕。

嗚呼、なんて皮肉な話だろうか。

でも、それでいいんだ。

憎たらしくて可愛い鬼が目の前に居る。

「白澤さん?」

傷付けた分、甘やかして優しくして・・・

それから・・・・・・

「愛してるよ、鬼灯。」

めいっぱい愛してあげよう。

もう、この子が泣くことのないように。















一応完結です。
始めから終りまで情けない白澤さんでした。
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