【短編】現代(白澤×鬼灯)

□成長した鬼
1ページ/3ページ

薬納庫に薬を納めて家へ帰ろうとしていた所、偶然麒麟に会った。

「あれ、天帝から呼び出し受けてたの?」

普段あまり宮殿に姿を見せない麒麟に少しだけ驚く。

「ああ、急ぎの案件があったのでな。お前はもう帰りか?」

「うん、薬を納めに来ただけだよ。」

「ならば、少し話さぬか?お前が気に掛けておる鬼のことが気になるのだ。」

僕が気にかけている鬼・・・

それは鬼灯のことだ。

あの子が地獄に戻ってから、もうすぐ1000年になる。

「あの子のことは、特に何も聞いてないよ。ただ、地獄がだいぶ機能してきたから多少の変化はあるんじゃないかな?」

鬼灯が地獄に戻ってから、文を書いては地獄へ送っていた。

最初の頃は返事がすぐ来たのだが、日に日に頻度が少なくなり、最近では返事が来なくなった。

「そなたから会いに行かないのか?」

「うん、あの子の邪魔はしたくない。それに、心配しなくても近いうちに会えるよ。」

分かるんだ。

もうすぐ、お前に会える。

見違えるほど成長して大きくなったお前に。

だから何も心配していないよ。

「そうか、お前が塞ぎ込んでいるのではないかと心配したが、無駄だったようだな。」

麒麟は安堵の表情を浮かべていた。

相当心配させてしまったようだ。

「ごめんね、心配掛けちゃって。」

「気にするな。儂より鳳凰の方が心配しておったぞ。会ったときに礼を言っておけ。」

「うん、ありがとう。」

「ではな、先に失礼するぞ。引き留めて悪かったな。」

「うん、またね。」

踵を返して去っていく麒麟を見送る。

僕も家に帰って、次に納める分の薬を作ろう。

それから間も無くして、天帝からの呼び出しを受けるのだった。





















「白澤よ、今日呼び出したのは言うまでもない。分かるな?」

「はい。」

天帝が僕を呼ぶ理由。

それは一つしかない。

「つい先刻、閻魔から地獄の近状報告を受けた。それによると・・・・・・」

「・・・・・・」

先が気になる。

「めでたく272全ての部署が機能したそうだ。条例の改訂と共に、他国の王とも提携を結んだそうだ。」

つまりは、もう天国の援助が無くても心配はいらず完全に独立出来たということだ。

「そうですか・・・それは安心しました。」

「ああ、私も肩の荷が下りた気分だ。それから・・・」

天帝が言葉を続ける。

「今から1000年前にそなたが連れてきた幼子だが、閻魔大王直属の補佐官になったと聞いた。」

天帝の言葉に目を見開く。

「そなたはあの子を官吏にするために育てていたと申したな?それが補佐官になるとは・・・大した出世だな。」

声を立てて笑う天帝。

僕の方は、驚きのあまり声が出ない。

「どうした、嬉しくないのか?」

そう言う天帝の表情はとても楽しげだ。

「いいえ、突然のことで・・・」

最近、文を出しても返って来ない理由が分かった。

閻魔大王直属の補佐官にもなると、こなさなければならない業務は山ほどある。

地獄中の官吏の頂点に立つのだから、全ての行動に責任が着いて回るようになる。

文など書いている時間は無いのだろう。

「ああ、それと・・・閻魔からそなたに伝言があるぞ。」

「何でしょうか?」

「閻魔がそなたに礼を申したいそうだ。鬼灯にもぜひ会わせたいと申しておったぞ?」

「それは、誠ですか・・・?」

開いた口が塞がらないというのは、こういうことのようだ。

信じられない・・・

こんなにも早く鬼灯と再会できるなんて。

「この知らせは嬉しいだろう?」

「ええ・・・とても・・・!」

「では、明日にでも地獄に赴くがいい。久しく会う鬼灯とゆるりとして来い。」

天帝は嬉しそうな声音で言う。

「ありがとうございます。早速支度をして、明日の朝に地獄へ向かいます。」

「ああ、気を付けて行ってまいれ。」

笑顔で送り出してくれた天帝に深く頭を下げ、その日は宮殿を後にした。

そして翌日、朝早くから地獄へ向かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ