【短編】現代(白澤×鬼灯)
□添い寝
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今日は久しぶりのお休み〜!
最近は風邪が流行っているようで、僕の店は毎日大盛況だった。
かれこれ、10日連続で店を開けて今日やっと休めるのだ。
かと言ってだらける訳に行かず、風邪薬を黙々と調合する。
流行り病は決して良いものじゃないけど、こういう時期は薬局側からしたら好都合だ。
「白澤様〜」
からからと倉庫の扉が開けられる。。
「あ、桃タロー君おはよ〜。ごめんね、休みなのに早起きさせて。」
桃タロー君も10日働き詰めで碌に休めていない。
本当はゆっくり休ませてあげたいけど、配達が溜まってしまっている。
僕は明日分の薬のストックを作らなきゃいけないし、彼にお願いするしかないのだ。
「気にしないでください。白澤様こそ、少し休んだらどうです?昨日の夜から薬作ってばっかりじゃないですか。寝ていないんでしょう?」
徹夜で薬を作り続けている僕を気遣ってくれる桃タロー君。
「うーん、でも今作っとかなきゃ明日の分が間に合いそうにないから、もう少しやらせて。」
「はぁ、終わったらちゃんと寝て下さいよ。白澤様に倒れられたら話にならないんですから。」
「ありがとう、桃タロー君。それじゃあ、これだけお願いできるかな?」
昨日の夜作った薬を桃タロー君に手渡す。
「かなり感染力が強い風邪だから、貰って来ないように気を付けてね。」
「分かりました。では、行ってきますね。」
僕の言葉に頷いた桃タロー君は、薬箱を背負って出掛けて行った。
静かになった店内。
さて、もう一頑張りするか。
・・・それにしても、眠いなぁ〜
意気込むと同時に、目を擦る。
徹夜なんて殆どしないからな〜
いかんいかん。
ここで怠けたら明日店が開けられなくなる。
これが済んだらちょっと寝よう。
材料を刻んでは鍋に放り込んで煮詰める。
この繰り返しだ。
しかし、睡魔と闘いながらの作業は、いくら単純なものでも少々きつい。
煮詰まる鍋を見つめていると、店の扉が開く音がした。
「お邪魔します。」
「あれ、いらっしゃい。どうしたの、薬の注文あったっけ?」
内心、ちょっと焦る。
なんせ先週は風邪薬を作るだけで手一杯で、納期付きの薬の調合は一切していない。
近い納期のものは無かったはずだが・・・
見落としか・・・?
一人でぐるぐると考えていると、右耳のピアスを引っ張られる。
「いてっ」
「何一人でぶつぶつ言ってるんですか。薬の注文は無いですよ。」
「へ?」
ぽかんとする僕を余所にカウンターの椅子に座って側に居たうさぎを膝に乗せる鬼灯。
「貴方の店がてんてこ舞いだって聞きましてね、様子を見に来たんですよ。」
「え、それって・・・」
ぷい、とそっぽを向いてしまう鬼灯に口元が緩んでいく。
その耳はほんのり朱が差していた。
「僕のこと心配して来てくれたの?」
鍋の火を止めて、目線を合わせない鬼灯の元へ行く。
「・・・いけないですか?」
「まさか。嬉しいよ、ありがとう。」
ちゅっと赤く染まる耳先にキスをする。
ぴくりと震える耳が可愛らしい。
「っ・・・からかうのなら帰りますよ。」
「からかってないよ。優しい恋人にキスのご褒美♪」
言いながら額に生える角にもキスを落とす。