【短編】現代(白澤×鬼灯)

□IF
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最近、夢を見る。

幼い頃の夢を・・・

もう、何千年も前のことなのに・・・

同じ場面を繰り返し見る。

重い頭を抱える日々が続いており、そろそろ限界だ。

ほら、今日だって・・・










ひと時の『安らぎ』を求めて、歩く。

手を伸ばして、触れようとする。

この、地獄の様に辛い日々から解放された暁に待っている『自由』に。

指先に触れる『自由』は酷く温かい。

そして・・・

温かい空間の中で、身体を丸めて眠りに就く。

きもちいい・・・ずっと、こうしていたい。

だけど・・・

そこで、目が覚める。

心地いい夢の中から、苦しい現実に引き戻される。

いつもそう。

歩いて、触って、眠って、目覚めて。

「丁!いつまで寝ているつもりだ!!」

ああ、普通の子どもならこんなに怒鳴られることは無いのだろう。

親に優しく起こされて、夜まで笑い声を上げて遊ぶ。

それが、彼らにとっての『ありふれた日々』。

明日も明後日も、その『ありふれた日々』が約束されている。

でも、わたしは・・・?

そんなありふれた明日は来ない。

一生。

わたしは、この地獄のような所から解放されることは無いだろう。

朝から晩まで休みなく働く毎日。

怪我をしたり体調を崩したりしても、皆知らん顔。

その挙句・・・

「丁、明日の夜に行われる雨乞いの儀式の生贄になれ。」

わたしに拒否権など無い。

ただ、頷くだけ。

誰も居ない所で一人で泣いた。

わたしは、死ぬんだ。

どうでもいい人間だから、召使いだから。

「・・・・・・。」

この身が終わると気付いた時から・・・

わたしの中で、何かが叫び始めた。

そう、それは・・・

わたしの命。










そして、雨乞いの日。

夕餉の後からの記憶が無い。

手と足が動かない、頭がぐらぐらする。

重い体を無理やり起こすと、目の前には供え物と神酒。

自分が儀式に使われる櫓の上に居ることに気付く。

ああ、そうだ。

わたしの命は今日で終わる。

真っ暗な森の中で、死の恐怖に打ち震える。

「・・・・・・。」

もしも、この両足が自由なら・・・

この狭く苦しい所から踏み出したい。

もしも、この両腕が自由なら・・・

誰かに触れてみたい。

でも、誰に・・・?

両親?友人?

わたしにそんなものは、居ない。

だったら・・・

「かみさま・・・」

もしも、神というものが居るのならば・・・

こんな無力なわたしを助けてください。

神に縋るくらい、わたしにだって赦されるだろう。

蹲るわたしの前に誰かが立っている。

顔の輪郭がぼやけて、表情が見えない。

でも、

額の辺りにある大きな一つ目はしっかりと見える。

その目がわたしを見据えている。

嗚呼、貴方が・・・・・・

白く、美しい腕がわたしへと伸ばされる。

「!!」

必死にその腕に縋り付く。

お願い、助けて・・・!

僅かな期待に鼓動が揺れる。

もう少しで触れられる、そう思った刹那・・・

「ぁ・・・ッ?!」

わたしの手は虚しく空を切り、目の前のその人
は消えてしまった。

重い何かがわたしに伸し掛かる。

朦朧とする意識。

もう、何が何だか分からない。

これが、死・・・?

嫌だ、死にたくない。

どうして、死ななきゃいけないの?

どうして、私なの?

どうして・・・・・・?

苦しい、苦しいよ・・・

こんな理不尽に与えられる死など、受け容れられる訳無い。

このまま辛い日々が続こうとも構わない。

毎日、働き詰めでいい。

毎日、殴られたっていい。

それでも生きたい。

安らかに眠れなくてもいい・・・

わたしの意に反して、どんどん重くなる頭と身体。

もう、何も聞こえない。

最期に見たのは、ゆらゆら揺れる炎。

紅くて、綺麗だった。











次に目覚めた時には、見知った景色は無かった。

暖かな風が吹いている地に、わたしは居た。

傍らの湖が、私の顔を水面に映し出す。

「あ、」

額には小さい角があり、耳は先が尖っていた。

これは・・・

どうやら、私は鬼へと生まれ変わったようだ。

最期に見たあの炎・・・

あれは鬼火だったのか。

この身が終わると気付いたあの日・・・

こうして鬼として生れ落ちることを知っていたのかもしれない。

生きたいと願いながらも、心のどこかで避けられない死を受け入れていたのかもしれない。

もう、今となっては分からないが・・・

ここまできて、夢は泡沫となって消えていくのだ。
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